この連載について
プロピッカーなど各分野の有識者が日々ウオッチしている専門分野の「2019年」を大胆に予測。ビジネス、テクノロジー、政治経済、世界情勢、働き方など、各カテゴリーで2019年のトレンドになりそうなムーブメントや知っておきたいビジネスのヒントを指し示す。
この記事の著者 / 編集者
この連載の記事一覧

【軍地彩弓】2019年以降のファッション業界に起こる3つの革命
NewsPicks編集部 508Picks

【カン・ハンナ】「一人メディア」で世界的人気を得る韓国の若者
NewsPicks編集部 176Picks

【曽和利光】「採用のプロ」になる為の技能と知識
NewsPicks編集部 331Picks

テクノロジーが発展する未来。人間の欲求は変わるのか
NewsPicks編集部 292Picks

【高橋祥子】生命科学の研究成果は「2025大阪万博」に現れる
NewsPicks編集部 220Picks

【井上一鷹】有効なテレワークは「ちょっといい?」の解放から
NewsPicks編集部 298Picks

【讃井康智】EdTechがもたらす働き方改革
NewsPicks編集部 204Picks

【高口康太】「怠け者エコノミー」が牽引する中国のトレンド
NewsPicks編集部 128Picks

【山田悠史】ポスト平成に起こる医療界7つの変革
NewsPicks編集部 299Picks

【白石紘一】働き方改革の鍵を握る「イケてる人事」とは
NewsPicks編集部 243Picks
・再生医療等製品の動向
・iPS細胞を使った製品の状況
・がんに対する新たな免疫細胞治療法「CAR-T細胞療法」
特に、最後のCAR-T療法は山田さんにも触れていただきましたように、高額な製品が日本で承認されると、皆保険制度、高額療養費制度のために社会全体でそれを負担してあげる形になります。そのため、今後益々高額医療製品に対する議論が加熱することが予想されます。
同時に、皆保険制度があるなしに関わらず、世界的な問題です。治療効果のあったものだけに払い戻す成功報酬型(Pay for success)や、単純に生存期間の延長を論じるのではなく、生活の質(QOL)を表す効用値で重み付けしたもので費用対効果をきちんと評価しようという質調整生存年(QALY)の導入を進めようとする動きもあります。
昨年は個人的に2週間、これらの現場を学びに米国研究製薬工業協会(PhRMA)のプログラムでFDAやNIH、議会を訪問し情報交換をして参りましたが、やはり感じたのは、じゃあ日本もやろう!といって簡単に適応できるものではないということです。保険償還のシステムの違いや、何を基準に”成功” と定義するかの科学的線引の難しさ、QALY導入の実際のハードルの高さなどがあり、伝えきれないほどです。ただその取組やロジックはとても参考になるもので、学ぶことはたくさんあります。
私は政策や規制にも興味を持って活動していますが、一番自分ができることで重要だと思っているのは、安くて良い製品を作るための製品開発を実現するということです。
iPS細胞の他家移植や、遺伝子編集技術の向上はこれらを実現するポテンシャルが高いと信じていますし、これらを達成するには応用研究を目指す優秀な研究者が必要です。開発に関わる科学者も、良い基礎技術があれば後はそれで良いという時代ではありません。自分は基礎研究もやっていますが、そういう視点も必要ということで、熱く語ってしまいました。
しつこい修正に対応していただいたNewspicksのみなさまありがとうございました。記事自体は、再生医療の現在の雰囲気を掴む参考にしていただければ幸いです。
また、三嶋さんが指摘されるように、CAR-Tも含め、高額な先進医療を今後国民皆保険、高額療養費制度の日本でどのように経済的に賄っていくかは大変大きな問題です。幸か不幸かCAR-Tはまだ血液領域に限定されますが、人間のあくなき欲求で現在ある障壁をも乗り越え、多くのがんに用いられるようになる時が来るでしょう。そんな時代に、経済的な負担を考えながらどう賢くリソースを用いるのか。数千万円かかる治療の自己負担も十万円単位でよいのか。政府、医師、患者の立場それぞれから、医療経済に対する活発な議論、高いコスト意識が求められています。
もちろん、実用化を目指して研究しているものもあるのでアイデア自体は否定しませんが、それをちゃんとした体制の整っていないクリニックでやるのは問題です。
免疫療法については国立がん研究センターが詳しいです。
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/immunotherapy/immu01.html
どんな研究があるのかというところに興味がある方は『がん免疫療法の誕生 - 科学者25人の物語 - 』という本がおすすめです。
他の記事のところでも書きましたが、そんな三嶋さんや他の医療従事者、行政や企業その他の有志メンバーで、「がんになっても動揺しない社会」をつくるために、2月3日(日)に東京ミッドタウン日比谷6階のBaseQで「CancerX Summit 2019」を開催します。
新しくがんにかかる患者の方は約100万人と、生まれてくる赤ちゃんの数よりも多いんですよね。私の妻も10年前の24歳のときに乳がんになり、昨年、完治の目処である10年が経ちました。命の大切さを改めて感じます。
■ CancerX Summit 2019
https://cancerxsummit2019.peatix.com/view
毎年新たに100万人ががんになる時代。
生まれてくる子どもの数より多い。 多くのひとは、がんのことを何も知らずに、がんになる。 今こそ、がんを知り、立場を越えて
がんと言われても動揺しない社会へ。
CancerX: 1 X: かけあわせる
あらゆる立場を越えた人たちを掛け合わせ、
新しいがんとの付き合い方を提案します。
2 X: かえられる
がんのイメージを変え、 みんなでがんと
向き合える環境をつくります。
3 X: かこにする
がんで苦しむことを過去にして、 そして、
がんと言われても動揺しない社会を目指します。
1回5,000万円超とも言われる超高額医療。
命の値段として高いのか安いのか。
健康寿命1年の延伸で500万円以上かかるとコスパが悪いと言われるなかで、果たしてこれは高いのか。
高齢者でなければ寛解して健康に生きられるならコスパはいいのかもしれませんね。
「そしてオプジーボに続き新たな免疫療法として2019年に間違いなく注目されるのが「CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)」と呼ばれるがんの免疫細胞治療製品です。2017年にノバルティスの「キムリア」が世界初のCAR-T製品として米国FDAの承認を受け、2018年4月には日本において製造販売承認申請されました。2019年内に日本国内でも承認される見込みです。このCAR-T細胞は特定の白血病(血液のがん)患者の約8割に効果を発揮します。」