【安部敏樹】ニューエリートの「社会課題」との向き合い方

2019/1/9

ビジネスがソーシャルを取り込む

「社会的意義」か、「経済的利益」か。
両立はなかなか難しいのではないか……こう思う人は多い。
一方で、多くのビジネスプレーヤーが「社会的意義」の重要性を理解しつつ、「経済的利益」との両立の難しさを語る時代が、だんだんと変化の兆しを見せてきている。2019年はビジネスがソーシャルのセクターを取り込んで、上手にそれぞれの事業活動に利用していく1年になるのではないかと思っている。
私は普段、リディラバという会社で社会課題を調査し、そこに関わる人たちを増やすという仕事をしている。国内では250以上のテーマを扱い、企業の皆さんがなんとなく使う「社会課題」「社会問題」と呼ばれるものを丁寧に調査して、言語化し、体験コンテンツに変えるという組織だ。
もともとは学びを体験するためのツーリズムや研修を提供することが多かったが、昨年はリディラバジャーナルという調査報道のためのジャーナリズムメディアも立ち上げた。
多くの組織が特定の社会問題に特化し解決を目指すのに対して、“社会問題”というものを横串に扱う。そして、その背景に共通する構造や異なる特徴などを分析する少し変わった組織とも言える。なんにしても、私は社会問題には全般的に詳しいほうだろう。

「社会課題の解決」がバズワードに

社会問題全般に関わる仕事をかれこれ10年以上続けてきたが、ここ1、2年で企業の意識が大きく変わったのを感じている。
というのも、昔ならCSRの部署の人が控えめに、「社内の理解は得られていないんですが……」と相談に来たのだが、今や人事や経営企画、新規事業などの経済活動や事業活動の真ん中に近い人たちが社会問題に関心を向けるようになってきたのだ。
ちなみに企業の人事担当者に聞くと、2018年の採用活動においては「社会課題の解決」がバズワードだったそうだ。その社会課題が何を指していて、どれだけ深く理解されていたか、というのはいくぶん疑問に思うこともある。