【黒川清】“日本型タテ社会”がイノベーションを阻害している

2018/12/30
なぜ日本にはグーグルやフェイスブックが誕生しなかったのか。なぜ日本にはLVMHを超えるブランドがないのか。なぜ日本では中高年男性に元気がないのか。
それは「出る杭」思考がないからだ。それでは、グローバル化がリアルになる時代を生き抜くことはできないー
そのように語るのは、米国で医学部教授として活躍し、内閣特別顧問を務めたのち、東京電力福島第一原発事故の国会事故調で委員長を務めた政策研究大学院大学の名誉教授である黒川清氏だ。
黒川氏に、日本のイノベーション欠乏の理由や、平成という時代、若者に期待していることについて縦横無尽に語ってもらった。(全二回)
黒川清/政策研究大学院大学・東京大学名誉教授
医学博士。69~84年在米、UCLA医学部内科教授、東大医学部教授、東海大医学部長他を経て現職。国際科学者連合体の役員等を務め、日本学術会議会長、内閣府総合科学技術会議議員、内閣特別顧問、国会の福島原発事故調査委員会委員長(2011年12月‐12年7月)、GHIT Fund代表理事などを歴任、世界トップクラスのシンクタンク、日本医療政策機構の代表理事を務める。

イノベーション欠乏の理由

──日本にイノベーションが欠乏している理由を聞かせてください。黒川先生の中で、日本のパワーを阻害していると感じる部分はどこでしょうか。
「イノベーション」という言葉は、よく聞きますが、時々ずれた議論になっているように感じます。技術的な定義になっていることが多いからです。
私は「あなたの言っているイノベーションの定義は何ですか?」と聞くことがあります。
私の定義は、グローバリゼーションという今までにない世界の中にある社会的課題に対しての「新しい社会的価値の創造」です。