26歳が現法トップ。自動車ローンを組めない人の生活を変える

2018/12/26
Mobility×IoT×FinTechで、社会課題を解決し、「真面目に働く人が正しく評価される仕組み」を創造しているGlobal Mobility Service(以下:GMS)。

これまでローンを利用したくても審査に通過できなかった世界の20億人に、ローンの活用機会を生み出すことで雇用の機会を創出するFinTechサービスを国内外で展開している。

東京モーターショー2017でNewsPicksが企画したピッチコンテストで見事優勝を勝ち取った社長の中島徳至氏に、どんな課題に立ち向かっているのかを聞いた。
世界では20億人が自動車ローンの審査に落ちる
中島 東南アジアなどの新興国というと、ボロボロの車が排気ガスと騒音をまき散らしながら走る光景をイメージする人は少なくないと思います。その原因の一つに、多くの人が新しい車を買いたくても買えない実態があるのをご存じでしょうか。
 新興国の人たちが十分な稼ぎを得ようと思ったら、車を用いて働く必要があります。しかしローンを利用できず車を買えないから、仕方なくボロボロの車を車両のオーナーから借りる。それすら手にできないと、日銭で生活せざるを得ない。
 事実、東南アジアや南半球を中心に、約20億人もの人が自動車ローンの審査を利用できず、この悪循環から脱却できずにいるのです。
 先進国が環境に優しい車を作っても、それを必要とする新興国の人は買えない。私はフィリピンで電気自動車ベンチャーを経営していたとき、いくら注文が殺到しても、ほとんどの人がローンの審査に通過しない現状を目の当たりにしました。
 貧困や環境、騒音問題などを地球規模で解決するのに必要なのは、車と金融をつなぐサービスプラットフォームだと確信し、2013年にMobility×IoT×FinTechで世界20億人の課題を解決すべく、GMSを創業しました。
世にないモデルを形にするために身銭を切った
 20億人に1台100万円の車を販売するとしたら、この領域は2000兆円の未開拓マーケットがあります。このマーケットは放置されていたのではなく、過去にもさまざまな企業が挑戦してきましたが、貸し倒れが多発して撤退せざるを得ませんでした。
 そこで、貸し倒れが発生しないよう、ローンの支払いが滞ると車が動かせなくなる車載IoTデバイスを開発。入金次第自動決済が完了し、車両の即時起動を可能にしました。
 さらに、デバイスから収集される走行距離などの車両情報を価値化するプラットフォームと、データを第三者が利活用するオープンな環境作りにも取り掛かりました。
 当然、これまで手をつけられなかったマーケットで、世の中にないビジネスモデルですから、投資家や金融機関からの理解はなかなか得られません。そのため、自らのリスクで数百台の車を購入し、デバイスを実装して実績を示したのです。
 創業から5年、事業・技術開発と実績づくりに奔走した結果、金融機関との提携が相次いで進み、これまでローンの審査に通過できなかった人も車を持てるようになる環境を整備することができました。
デフォルト率は、驚異の1%未満を実現
 金融機関と提携が進んだのは、デフォルト率の圧倒的な低さにあります。フィリピンなどの国では、ローン審査に通過した人でもデフォルト率が20%に達していたのですが、GMSのサービスを活用すると、1%未満に抑えることができるのです。
 その理由は、支払いが滞ることを前提で設計したから。東南アジアの多くは、電気やガス、水道などのインフラは前払いで、支払わないと使えないのが当たり前の社会です。
 だから、車も支払いが滞ったら起動制御を行い、入金すると3秒で動かせるように技術開発を行いました。ドライバーは生活を豊かにしようと働いているので、車が動かなくなると急いで支払います。
 でも、また翌月支払いをしなければ、動かなくなる。すると仕事に行けないから慌てて支払いに行く。この仕組みが、驚異的に低いデフォルト率を生みました。
現在約70人が働くフィリピン現地法人
真面目に働く人が正しく評価される仕組みを作る
 2018年10月の時点でサービスを展開している国は、フィリピン、カンボジア、インドネシア、日本の4カ国。
 それらの国では車を購入したい人で長蛇の列ができており、これまでにGMSの仕組みで提供した車両の総走行距離は3000万キロを超えました。地球にして約800周分です。
 購入したドライバーのほとんどは真面目に働き、現在でも1%未満のデフォルト率は維持し続けています。それが、ドライバーと家族の生活はもちろん、彼らを取り巻く地域や企業、ひいては国全体が潤うことにつながっています。 
 その実感を得られるのは、ローンを延滞なく終了した人を「GMSメンバー」と認定するパーティーのとき。
パーティーでの様子。ドライバーの家族を含め、数百人が集まる。
ドライバーが決意表明をする姿に、家族が泣いて喜んでいるのを見ると、必ず彼らの生活は豊かになると、強く実感できるのです。
 ただ、私たちは車を買える仕組みだけを作りたいわけではありません。実現したいのは、真面目に働く人が正しく評価される仕組みを作ること。だから、私たちは生活の質を豊かにする場の提供を通じた、社会創造に取り組んでいます。
 すでに、ローン利用者から得た情報を利活用し、第三者との融合によるサービス創造も進めており、たとえばデータを利用した学資ローンは来春から開始します。
 車のローンをきっかけに新たに築く信用情報は、これまで車を手にすることができなかったドライバーたちの活躍の場を広げ、世界を変えると信じています。
実力があれば責任者として即海外へ。社会課題を解決
社会課題を解決するGMSでは、若手社員が現地法人の責任者に就くなど、早いタイミングで大きな裁量権を与えられている。それは、社員の多くが国際協力活動や留学などで新興国の現実に課題を感じ、志を持って入社するため、熱が冷めないうちに力を発揮してもらうためだ。そこで、フィリピン現地法人のCOOを務める中嶋一将氏と、入社半年で次の海外拠点責任者に抜擢(ばってき)された小沼良太氏、共に26歳の2人に話を聞いた。
──それぞれに、任されている仕事について教えてください。
中嶋 僕は入社後2週間でフィリピンに行き、現在はフィリピン現地法人でCOOを務めています。自動車メーカーや通信キャリア、電力会社、金融など各業界を代表する企業との交渉や政府とのやり取り、現地採用した約70人の社員のマネジメントなど、やることは多いですね。
 オフィスには、泣きながら「車が欲しい」と相談に来る方も多く、買えなくて困っている方が本当にたくさんいることを実感しています。
 それだけ切実だから、購入して仕事に就けると「携帯電話を買えました」「洗濯機を買えました」と、わざわざ写真を見せに来てくださるんです。そういう瞬間に立ち会える仕事はなかなかないと思いますし、微力ながら貢献できているのかなと思えますね。
フィリピンでの活動の様子
小沼 僕は入社1カ月も経たないうちから、政府のプロジェクトでフィリピンに行く機会をもらったり、提携先の銀行と国内向けオートローンの提供を開始したりしました。国内の金融機関との提携が進んだのは、これが始まりです。
 その後、シリーズCの調達で、名だたる上場企業のトップとの打ち合わせにも参加。これらを入社半年の間に次々と任されたんです。
 現在は、次の海外法人の立ち上げ責任者に抜擢され、その準備を進めているところです。GMSは、若手でも能力と志があれば本当に責任ある仕事ができる会社だと実感しています。
大手思考が一変、ベンチャーに入社
──そもそも入社のきっかけは何だったのでしょうか?
中嶋 学生時代は大手志向で、実は大手商社から内定をもらっていました。大学4年の最後に、たまたまインターンシップに参加して出会ったのが弊社代表の中島です。
 当時はGMSの創業前で、フィリピンで展開していた電気自動車ベンチャーでしたが、そこで見たのが車を買いたくても買えない人があまりに多い現実。
 この現状を変えるために、中島がGMSを創業すると聞いたとき、ぜひ創業メンバーとして入社させてほしいと直談判したのです。GMSに出会っていなければ、内定をもらっていた大手商社にそのまま入社していたと思います。
小沼 僕は2018年1月に入社するまで、各国に現地法人がある大手建機メーカーで働いていました。学生時代に1年ほどフィリピンに滞在したとき貧困層に対して何か貢献したいと思い、現地法人を持つメーカーなら何かできるかもしれないと考えたのです。
 入社後は希望通り海外営業部に配属されたものの、3年経ってもルーチンワークが多く、自分が成し遂げたい、関わりたいと願う仕事をできずに、悶々とした日々を送っていました。
 そんなとき、偶然テレビでフィリピン特集が放映されていて、そこでGMSの存在を知りました。事業内容は、まさに学生時代に感じた課題を解決できるもの。しかも、僕と同じ26歳の中嶋がフィリピンで現地法人責任者をしていると聞き、ここなら成長できると思いました。
 大手からベンチャーへの転職だったので、友人からは「なんで?」と驚かれ、親からの反対はあったのですが、今はこの決断が間違いなかったと思っています。
実力があれば入社後すぐ海外で社会貢献できる
──現在お二人は裁量ある大きな仕事を任されています。今の26歳の姿を、学生時代はイメージできましたか?
小沼 学生時代はもちろん、去年の自分からも想像できない26歳を過ごしています。まさか、入社後半年で海外拠点の立ち上げ責任者に抜擢されるとは。
 きっと、僕のように海外で課題を感じた人はたくさんいると思います。その課題解決に向けて、GMSなら能力と志があればすぐに責任者として取り組めることを伝えたいですね。
中嶋 学生の頃は、まさか自分が26歳でフィリピンの現地法人責任者をやっているなんて想像もしていませんでした。今後も何があるかわからないし、社会にどれだけ価値を提供できるかも未知数。それだけ、GMSでの日々はワクワクしています。
 だから、同世代の人に伝えたいのは、今ならいくら失敗しても間に合うから、挑戦してほしいということ。その意味では、GMSは挑戦者に本当に優しい会社です。ぜひ、20代の限られた時間を、意義あることに全力で使ってほしいです。
(取材・文:田村朋美、写真:北山宏一、イラスト:國弘朋佳)