山口県から始まった「良質なコンクリート構造物を造る」というムーブメント
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山口は日本酒とコンクリートの本場です。
歴史的にみると、笠井順八が民営初のセメント会社である「小野田セメント」を興した地でもあります。
記事タイトルにある「良質なコンクリート」が何かというのは、これはコンクリートによって求められる性能が異なりますし、技術者による判断も分かれるところでもあると思います。
ただ、そのわかりやすい指標のひとつが「ひび割れの少ないコンクリート」であることは確かです。
コンクリートはひび割れた後に内部の鉄筋がその補強効果を発揮する設計となっているため、基本的にはひび割れを許容しています。
しかしながら、地震や長年の交通荷重も受けていないのにひび割れが発生してしまったら、これは材料・設計・施工のどこかに問題があると考えられます。
ひび割れは水分・塩分の通り道となり、将来的には鉄筋腐食を引き起こす耐久性上の問題となります。
山口システムの骨子とは、記事中にも述べられているように「施工状況把握チェックシート」とそれらを蓄積したデータべースです。
何かの技術革新や新しい材料を使用したわけではなく、一見地味にも思われかねないこの統括的な取り組みによってコンクリートの品質向上を目指したものです。
これは、コンクリートは使用材料・環境・構造が無限に異なるため、劣化・不良の原因も多種多様であり、何かひとつの解決策でどうにかなるものではないことの裏返しでもあります。
山口システムは、平成29年度の土木学会 技術賞を受賞しています。
本来、橋やダムのような有形の土木構造物に与えられるべきこの賞が、こういった無形の取り組みに与えられるのは、異例と捉えていいと思います。
山口システムがなぜ土木学会賞を受賞できたかというと、個人的には「コンクリートのひび割れは、誰のせいなのか」という建設業界の問題に切り込んだからと考えています。
受注者に押し付けられがちなこの問題に対して、受注・発注の関係、あるいは産官学といった業種の垣根を越えて解決を目指したというプロセスがあってこその受賞だと感じています。
だからこそ、東日本大震災の復興道路建設にも同システムが役立てられています。
使用材料は地産地消を前提とするコンクリートですが、良質なコンクリートを作りたいという技術者の思想は世界共通です。
参考
https://newspicks.com/news/3100197チェックシート、東北でも使ってます。
段取りの段階で分かってる内容ではあるんですけど、現場でもう一度確認するだけでも気が引き締まります。
ひび割れの補修責任で発注者と施工者が対立していたのを大規模な試験施工の結果を見せることによって、発注者や施工者、材料の供給者の意識を変えて協働して良いコンクリート構造物を作って行くという流れを作ったのがすごいです。