【コメント急募】スポーツ界の「パワハラ問題」をみんなでアップデート!

2018/12/19
日本大学アメフト部の危険タックル事件や、レスリングや体操選手のパワハラ告発など、スポーツ界の不祥事がメディアを席巻した2018年。
なぜこれらのニュースに、こんなにも注目が集まったのでしょうか?
「指導者への権力の集中」「いきすぎた成果主義」「NOと言えない上下関係」……。ニュースから浮かび上がる組織的な課題の多くが、スポーツ界に限ったものではなく、私たちにとってひとごととは思えなかったからではないでしょうか。
問題の背景や解決策を探るべく、NewsPicksはNHK『クローズアップ現代+』と緊急コラボを企画。プロピッカー4人による座談会を開催し、「#スポーツ界の闇を話そう」と題してフリートークをしていただきました。
座談会の模様をまとめたショート動画は、『クローズアップ現代+』特設サイトでも公開中です。
また、スポーツ界のみならず、職場や学校など身近なパワハラ問題について、ピッカーの皆さんの体験談や、ご意見を募集します。本記事のコメント欄に書き込んでいただくか、番組のご意見募集フォームからお寄せください。
投稿されたコメントのなかで、特に示唆深い体験談やご意見については、番組特設サイトでも紹介する予定です。
写真右から:プロピッカー・大室 正志さん(産業医)、正能 茉優さん(ハピキラFACTORY代表)、麻野 耕司さん(リンクアンドモチベーション取締役)、菅野 朋子さん(弁護士)、モデレーター・金泉 俊輔(NewsPicks編集長)
#スポーツ界の闇を話そう
──スポーツ界の不祥事が話題になった要因を、どう捉えていますか?
菅野 パワハラに関しては、昔に比べて皆の意識が高まっています。そんななかでスポーツ界の出来事は「いまだにそんな時代錯誤なことをやっているのか」と感じた人も多かったのかもしれません。
麻野 アメフト部も体操選手も、厳しすぎる上下関係が注目されました。ただ、上下関係は昔からあったもので、それが問題視される風潮に変わったともいえるのではないかと思います。
大室 私は産業医として、さまざまな会社で社員の悩みを聞く機会があり、若い世代ほど「理不尽」に悩んでいる。つまり、耐性がなくなっているように感じています。
そのなかで、比較的に耐性があるのが、いわゆる体育会系の人々なんですね。
耐性を発揮しすぎると、「後ろからタックルしろ」と言われたときに踏みとどまらずに従ってしまい、今回のような問題に至ったのではないかと。
とはいえ、体育会系というものがこれまで保持していた、功罪の「功」の部分もあるはずです。そこを含めて見ていきたいです。
体育会システムの功罪
麻野 組織づくりや人事のコンサルティングをするなかで、成功する組織の形が変わってきたと感じます。
組織には、大きく分けて2つのタイプがあります。
ひとつが「ヒエラルキー型」で、上層部が戦略を考え、下を動かしていく組織。もうひとつが「フラット型」と呼ばれるもので、上も下も一緒に考えて自走します。
前者のタイプの組織は、ルールが変わりにくい業界で成功しやすいんですね。実績を残した人が昇進し、自らの経験に基づいて下の人たちに指示を出す。
スポーツに目を向けると、サッカーも野球もそこまで頻繁にルールは変わりません。となると、選手や監督として経験を重ねてきた人が指示を出すほうが、うまくいきやすいし、上下関係もはっきりしやすい。
ところが、今の時代はビジネスの環境変化がすごく激しくて、毎日のようにゲームチェンジが起きます。過去の経験が通用しにくい業界では、「フラット型」組織が成功しやすくなるんですね。
麻野 また、組織の構造変化だけではなく、企業と個人の関係が変わってきていることも、我々のものの見方に影響を与えているかもしれません。
昔は終身雇用・年功序列のなかで、個人は企業に忠誠を誓い、企業は金銭や地位の報酬を与えていました。ところが今は、個人が企業に求めるものが変化し、金銭や地位だけではなく、やりがいや成長といった、感覚的な報酬も求めるようになってきた。
それに伴い「いい上司」像も変わってきました。
忠誠を尽くした人を引っ張り上げてくれるのが「いい上司」だったのが、成長する機会をくれたり、やりがいを感じさせてくれたりするのが「いい上司」に変わってきた。
スポーツ界の不祥事に関するニュースを見ると、指導者たちは皆「俺の言うことを聞けば試合に出してやる」という趣旨のことを言ったといわれています。その感覚が、時代に合わなくなってきているのかもしれません。
正能 ヒエラルキー型の組織のいいところが、今ひとつわかりません。
麻野 たとえば「みんなで話し合って決める」だと、コミュニケーションをたくさん取らないといけませんよね。でも、ヒエラルキー型の組織では、トップダウンで済む。そうすることで、意思決定や伝達がより早くできるようになります。
現場に裁量を持たせて、営業パーソンが顧客に合わせて提案する業界もあれば、行動量が大事で、それをガチガチにヒエラルキーで管理するほうが結果につながる業界もある。いずれもメリットとデメリットがありますよね。
──ちなみに、体育会系の学生を積極的に採用している業界はありますか?
大室 売るものが明確に決まっていて、売った人が評価される会社、つまり、ルールが明快で点をとった人が表彰される会社は、体育会系の人が活躍していると思います。
麻野 求人広告業は現場の主体性が大事で、顧客に合わせて企画を立てることが求められます。でも、人材派遣業は「人手が足りないな」と思った時にタイミングよく提案してくれることが求められるビジネス。そういうところでは、ガチガチのヒエラルキーでやった会社が勝ちやすいのではないでしょうか。
菅野 「パワハラ防止の講義をしてください」と依頼が来るのは、運送業と建築業が多いです。そういうところは女性も少ないです。
大室 女性の社会進出が進み、組織のなかでの女性率が高まると、今まで男性の間では密室で許されていた行為がアウトになる場合が多いですね。
SNSが若手の意識を変えた
正能 SNSをやっていると「いいね」を押すか、「無視するか」の二択ですよね。いずれもゼロ以上の体験だから、「よくないね」とネガティブな反応は可視化されにくい。こうしたSNSの特徴が、私や下の世代を打たれ弱くしているのかもしれません。
麻野 今の若い世代は、SNSに投稿した数秒以内に「いいね」が返ってくるのが当たり前だと思っている。でも、仕事を一生懸命にやっても、「いいね」はすぐに返ってきません。
むしろSNSのように、社内で「いいね」を送り合うようなシステムを導入する企業も増えています。
大室 ミスをしないのが当たり前で、何も起きなくても褒められもしない職場もありますね。こういう仕事はやって当たり前、そして失敗すると怒られたりする。それを嫌がる人が、確かに増えてきている印象です。
正能 褒めるまでは至らなくとも、「ちゃんとみてもらっている」という感覚が大事になってきているんじゃないかな。リアクションがなくとも「この人は見てくれているんだ」と実感できるだけで違う気がします。
麻野 問題が根深いのは、いきすぎた上下関係やパワハラをやっている本人が、その自覚がないところなんです。
アメフトにしろ体操にしろ、糾弾された人の最初のリアクションは「えっ!?」という驚きでしたよね。
マネジメントに課題も
──今回問題が起きたスポーツの世界では、若い世代が所属組織に求めるものと、組織が選手に求めるものにギャップがありそうです。
菅野 スポーツをする選手と、所属する組織の間でギャップがある場合、大事なのは「所属の流動性」です。
企業では、「上司に逆らえば、仕事を失ってしまう」という意識が働くとき、パワハラが横行します。
おそらく今は過渡期で、企業側も「こんな目に遭わせたら、人材確保ができなくなる」となって、いい関係が築きやすくなるのではないでしょうか。
正能 私は今、大企業に勤務しながら、自分の会社の経営者と大学の教員としての3つの顔を持ってやっています。最初の2つは年下の側として、大学では年上として自分よりも若い世代と関わることが多いんですね。
「理不尽さ」って、すり合わせの問題だと思うんです。「この組織は、私に合う・合わない」といった判断を、ちゃんと学生側ができるようにしてあげることが大事だなと。
私自身は、一緒にお仕事をしている人のSNSの投稿に「超いいね」を押すようにしています。職場でも「結婚記念日だったんですね」と話しかけてみたり。そうやって上の世代にも、発信への反応がある楽しさを実感してもらえたら、私にも返してもらえるのかなと(笑)。
麻野 私が運営するサイト「Vorkers」は、企業の風土や働きやすさなどが、従業員によって投稿されるという口コミサイトです。ごまかしが利きにくいのが特徴なんですね。
ヒエラルキー型にしろ、フラット型にしろ、どんな組織かがきちんと外からも見えれば、新卒者や転職者にとって良い判断材料になります。
それと、指導者が組織についてもっと学ぶ機会があるといいですね。
大室 スポーツは、最終的には「勝った・負けた」に集約されるもの。フラットなやり方でも結果が出るとわかれば、おのずと指導者の意識も変わっていくのではないでしょうか。
気づきとまとめ
──最後に、このディスカッションの感想や気づきを、一言書いてください。
菅野 必要なのはやはり「流動性」の緩和ですね。ひとつの組織に縛られて、関係が密になりすぎることの弊害を感じます。
ビジネスにおいてここの改革には、労働法の改正を含めて議論する必要があるのではないでしょうか。
麻野 「入ってくる前にどんなチームかを伝えよう!」と書きました。
例えば、上下関係の厳しい部活だったら、入部前に「これくらい厳しいよ」と説明があれば、そのカルチャーにフィットしない人が間違って入ってしまうのを防げます。これは、スポーツとビジネスいずれの世界でもできることだと思います。
──いいことしか言わないのは「ワクワク詐欺」になってしまいますね。たしかに可視化は必要そうです。
正能 私は「LINEで既読を付けるかのように、自然に承認しあえるようになればいい」と思いました。
“承認する”とか“褒める”などの積極的な働きかけは、誰でもすぐ取り入れられるものではないかもしれません。それに比べると “見たよ”という、受け身なかたちでも、相手の存在を認めていることを何らかの方法で伝え合えれば、組織がうまく回っていきそうです。
大室 体育会系といわれる組織は、「俺の背中を見て育て!」というような美学を隠れみのにして、説明責任を放棄してきたところがあります。
しかしながらゲームのルールが急速に変わるような時代においては、上司も全能な存在ではいられません。
上司だって一人の人間である。不完全さや弱さを、ときには部下に共有できるぐらいの関係性が、これからの時代に求められていくのではないでしょうか。
NHK『クローズアップ現代+』特設サイトでは、この座談会のショート動画をはじめ、「スポーツ界の閉鎖性」について理解が深まるコンテンツがご覧いただけます。
(構成:NewsPicksコミュニティチーム、グラフィックレコーダー:上園 海、デザイン:櫻田 潤)