【貨幣の新歴史】第2回:ローマと現代、共通する貨幣戦略
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実はローマ帝国滅亡の原因の一つに貨幣政策の誤りが原因だったとする説があります。
ローマ帝国末期は、このピックにもあるように貨幣の改鋳が繰り返されました。
アウグストゥス帝時代のデナリスウス銀貨の純度は98%でしたが、軍人皇帝時代には含有量は5%を切り、帝国末期には銀貨どころか、銀メッキのヌムス銅貨が主流になるに至ります。
末期のローマ帝国では、ハード通貨の価値の低下がインフレを引き起こし、ハイパーインフレに近い状況が止まらなくなる一方、農業生産力の低下が原因で収入や金利が下がり続ける、つまり史上初のスタグフレーションが進行したのではないかと考えられています。
このスタグフレーションは当時のローマ市民を大変苦しめましたが、一方でコンスタンティヌス帝は新たな金貨としてソリドス金貨を発行しました。
ソリドス金貨は純度が95.8%と非常に高く、ハード通貨としは当時破格の信頼性がありましたが、発行数が少なく貴族や上流階級しか所有することはできませんでした。
つまりヌムス銅貨などしか持たず悪性インフレの影響受けまくりな一般市民と、インフレの影響を受けないソリドス金貨をもつ上流階級の格差が開き、この格差問題が帝国を滅ぼしたのだ、という話です。(これは現代でもありそうな話ですね)
真偽はともかくとして、ソリドス金貨はローマ帝国が滅んだ後も地中海世界の標準貨幣として長く流通し、西ローマ帝国滅亡の600年後の1092年まで発行が続けられました。
因みにドルを表すのに$マークを使うのは、ソリドスの頭文字が語源だとされています。Moneyの起源はローマの女神ユノ・モネタ(Juno Moneta)ということです。この女神は地震や侵略を預言し、警告した。その警告するはラテン語でmoneo。Moneyには警告するという意味も含まれているのですね。
物を動かし(交易)、人を動かす(報酬)にはMoneyが不可欠。時の権力者は常に女神Moneyの確保に頭を悩ませています。
しかし、女神は警告します。Moneyは武力や権力を行使するためのものではないと。安心・安全で豊かな社会づくりに使いなさいと。貨幣はテクノロジーの進化によってどんどんその本質にあった形へと変わっている。
本質とは何か。
それは、人間の心(と頭)が決める「価値」というとらえどころがなく流動的なものの「媒体」。
古くは媒体そのものの価値を量が擬似的に一定で緩やかにしか増えない貴金属をアンカーとしていたが、ローマ時代から国家の信用をアンカーとして試し始め、現代(と言っても歴史的にはつい最近)完全に移行した。
うまく行くかはまだ分からないが、ビットコインなどの仮想通貨はそのアンカーを今度は「技術スキームとコンピューティングパワーの多数決」に変えてうまく行くかを実験している。
非常に面白い時代に生まれたと思って、みんなで議論しつつ、見守りましょう。