[横浜市 7日 ロイター] - 日産自動車<7201.T>は7日、出荷前に機能の安全性などを確認する完成検査において新たな不正が見つかったと発表した。後輪・駐車の各ブレーキ、ハンドル、スピードメーターなど6つの検査項目で、定められた手順と異なる方法で測定していた。不具合は確認されていないが、正しい検査が行われていなかったため、対象となる計約15万台をリコール(回収・無償修理)する。

リコール対象は2017年11月7日から今年10月25日に追浜工場(神奈川県横須賀市)と「オートワークス京都」(京都府宇治市)の工場で製造された、電気自動車「リーフ」や小型車「ノート」など11車種で、13日に国土交通省へリコールを届け出る予定。リコール費用は算定できておらず、業績への影響は現時点で不明という。

日産では昨年9月以降、完成検査で無資格者による検査や燃費・排ガス検査でのデータ書き換えなどの不正が相次いで発覚。このため、自主的な点検を進めており、新たな不適切行為はその中で見つかった。検査不正の発覚は4回目を数え、一連の不正問題でのリコール台数は今回分を合わせると計約130万台となる見通し。

国内で生産事業を担当する本田聖二氏、品質管理担当の平田禎治氏の常務執行役員2人が同日夕に本社で会見し、陳謝した。本田氏は、現場の従業員に「不適切な行為という認識がなかった」などと説明した。

今後の全工場共通の再発防止策として、作業手順を定めた「標準作業書」に禁止事項を明記し、教育を徹底。検査員が相談できる作業監視員を検査ラインに新たに配置するほか、作業手順の順守を確認するためのカメラも検査ラインに新たに設置するなどし、「チェック機能を強化する」と述べた。自主的な点検活動をこれからも進め、「今後も不適切な事案があれば、速やかに公表・対処していく」とした。

<約40年前の検査設備を使用>

今回、新たな不正が発覚した追浜工場は、日産がグローバルに展開する生産拠点の手本となる「マザー工場」(本田氏)。にもかかわらず、約40年前の検査設備を使い続けていた。もっとも、同設備は外部の専門会社による公正な点検を受け、「適正な検査設備を利用し続けていた」と平田氏は釈明した。

ただ、本田氏は、古い設備ゆえに検査員にとって使い勝手が悪かったとも指摘。「もう少し早く設備投資をすれば良かった」と振り返り、優先すべきコンプライアンス(法令順守)とコストの課題を「同列に見ていたのかもしれないと反省する」と述べた。

本田氏は、前会長であるカルロス・ゴーン容疑者の経営手法による現場への競争力ある価格やコストへの要求圧力が「やはり一部で強まってきた傾向はあろうかと思う」との見解を示しつつ、ゴーン容疑者の経営手法と今回の不正問題が直接的に「結びついているかどうかは検証できていない」とも語った。

ゴーン容疑者は11月19日、東京地検特捜部によって金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで逮捕された。同社は今年9月、社外の弁護士らで不正の全容を解明し、再発防止策を盛り込んだ最終報告書をまとめて公表。その報告書によると、一連の検査不正は2000年代にはすでに始まっており、ゴーン容疑者が経営トップを務めていた時代と重なっている。

(白木真紀)