【家入×斎藤】「共感経済」はリアルか?

2018/12/13
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 いま、貨幣という“価値を計るものさし”が進化することで、これまで経済競争に組み込まれていなかった新しい価値の可視化が行われようとしている。
 それは思いやりや感謝、共感、あるいは“愛”のようなあたたかな感情──ひとことで言えば、“体温”だ。
 世界中の体温をいかに上げ、そこに経済圏を生み出すか。そんな、新しい競争が、いま始まろうとしている。
 今の時代で、経済に体温を探し求めると、どうしても1人の男性にたどり着く。
 家入一真。“共感”をエンジンに資金を集める、クラウドファンディング・サービス『CAMPFIRE』の創業者だ。 
 そして家入が、最近、力を入れていることの一つが地域である。今年、地域特化型クラウドファンディングサービス『FAAVO』を事業譲受。同サービスの創始者の齋藤隆太と共に、地域にカラフルな火を灯し続けているのだ。
 その2人に、あらためて聞いてみた。「共感経済って、リアルですか?」
共感経済
他者との共感や信頼関係をベースに営まれる経済のあり方のこと。そこでは個人間やコミュニティの関係性における、特有の「価値」が流通する。取り上げられる価値には、これまで資本として見なされなかった感情や評価といった心情的な要素が多く、インターネットやブロックチェーンなどのICT技術により実装される事例が多くなってきた。近い意味合いで、感謝を価値化する「感謝経済」の語もよく使われる。
家入さんは、早くから“新しい経済のカタチ”を模索してきたイメージがあります。
家入 確かに。『CAMPFIRE』を起ち上げる前からTwitterで銀行の口座番号をつぶやき「皆ここに振り込んでね」とお願いしたりしていましたね。実際、結構振り込まれて。
齋藤 それは新しいですね(笑)。
そうした自由な行動を駆り立てている根源は?
家入 ベースはやはり僕の原体験でしょうね。芸大を目指していたのですが、自営業をしていた父が自己破産。進学をあきらめざるを得ませんでした。

 しかし、あの当時、クラウドファンディングのような仕組みがあれば間違いなく活用し進学に役立てていたと思うんですよ。要はテクノロジー、とくにインターネットの力で、かつてなら個人の力では越えられなかったおカネや学びの環境といった問題が、解決できるようになっている。
よく「あらゆることを個人の手に取り戻す。民主化する」とおっしゃっていますね。
家入 ええ。それこそがインターネットの意義だと思うんです。だから僕は21歳で起業してレンタルサーバーやドメイン事業、ショップサービスなどの低価格なプラットフォームを創ってきた。サービスを起ち上げたい、お店を開きたい、という人に場を提供するためです。
 『CAMPFIRE』も同じ。「カフェをやりたい」とか「世界一周したい」とか、やりたいことがある人はクラウドファンディングで資金を募り、はじめられる。

 言い方を変えると、おカネや環境を“いいわけ”にはできない世界。それを創りたいのかもしれない。
一方、クラウドファンディングで支援する側はどういう動機づけが強いのでしょう。
齋藤 単なる金銭的リターンとは違う、共感がトリガーになっているということがまずあります。
家入 そうですね。ただ「共感」だけだと実は少し弱い。クラウドファンディングでうまく出資が集まるのって、共感させるのではなく「共犯」にさせているものなんです。

 一例をあげると「古民家を改装してカフェにしたい」というプロジェクト。すごく支援者が集まったのですが、その理由はリターンが「土壁を塗る権利をあげます」だったからなんです。
おカネを払って、作業ができる、と。
家入 価値の本質の一つに「希少性」があると思う。物質的な豊かさが揃った今の時代、むしろ「古民家の壁を塗り直す経験」といった体験のほうが希少性が高いわけです。
齋藤 モノ消費よりコト消費の時代といわれますが、これが理由の一端でしょうね。
家入 また自分で塗った壁があると「この壁、俺が塗ったんだ」と誰かを連れてきて、勝手に宣伝してくれる。「共感」を越えて「共犯」という仲間同士の関係になるからだと思う。
今年、斎藤さんが起ち上げた地域に特化したクラウドファンディング『FAAVO』との“共犯”関係を結ばれました。狙いは?
家入 『CAMPFIRE』でも日本全国のプロジェクトを扱っていたんですね。その時に感じたのが日本の地域って、まさに希少性の宝庫だということ。「ガイドブックには出ていないけれどこの丘の景色、めっちゃきれいでしょ」「眺めながらビール飲むと最高です」とか。

 それは東京の指示に従い「地方創生のイメージをコピペする」ようなやり方では潰される世界。翻ってクラウドファンディングは、そうした小さな希少性を拾い上げることが得意なわけですよ。
 ただ僕らはどちらかというと都心部に強く、地域は弱い。そこで地域に関しては僕らより先に実績を積み上げてきた『FAAVO』との協働。一緒に地方の宝物に火を灯したい、と考えたわけです。
斎藤 僕らにとっても『CAMPFIRE』の力がほしかった。確かに地域には小さな宝物がある一方で、人口減少社会はもう地域から始まっている。地域のアップデートにすぐにでも手を付けなければならないフェーズだったからです。

 だから僕らは都心部でスキルと“色”を身につけた人たちが、まあUターンやIターンというカタチで、それぞれの地域に戻る、という未来を思い描いてきた。
 その結果、地方がさらにカラフルに色づく。今は共感しておカネが動いているけれど、次は仕事や人も動く。そんな未来を描いています。
なるほど。ところで共感経済を手がけるからこそ、難しさや厳しさを感じることは?
家入 ありますね。共感経済や評価経済を突き詰めるとユートピアが生まれるか…というと違う気がする。
 中国のジーマ信用は嘘ついたり、立ちションすると信用スコアが下がりますよね。けれど、人間なんだからたまには立ちションしたいでしょ(笑)。「共感なんて知らん。俺はコレが創りたいんだ!」みたいなところからこそ、圧倒的にイノベーティブなものって生まれる気もしますしね。
 
 ただ日本の経済や社会が今後、縮小していくのはあきらか。課題先進国といわれるこの国で、評価経済にしろ共感経済にしろ、皆が何か新しいことに挑戦し、全く新しい「豊かさのカタチ」の模索はやっぱりしていきたいんですよ。
 それは僕らがやるべきことで、やらなきゃいけないこと。もっといえばできることだと思っている。そこは希望を持っているかな。
(構成・執筆:箱田高樹 撮影:是枝右恭 編集:東京ピストル 誌面デザイン:LABORATORIES)
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