【直撃】新産革機構CEOが語る、「高額報酬バトル」のすべて

2018/12/6
「継続中の協議を(産業革新投資)機構の代表取締役社長・田中正明氏が一方的に打ち切り、機構が調整未了の報酬水準を前提とした予算の変更認可を申請したことは誠に遺憾であります」
12月3日、経済産業省が前代未聞のリリースを公表した。
タイトルは、「株式会社産業革新投資機構から申請のあった『平成30事業年度産業革新投資機構予算変更の認可について(申請)』に関して認可しない決定をすることについて」。
ずいぶんと長いタイトルだが、これは経産省が所管する国内最大の官民ファンド、産業革新投資機構(JIC)が申請した高額の役員報酬案に対し、経産省が「認可しない」と発表したというものである。
事の発端は今年9月。ファンドたるもの民間水準の報酬を用意しなければ、優秀なファンドマネジャーの獲得はできないという議論に、経産省側も大筋合意。
経産省の方から、「役員クラスで年俸5500万円程度」という数字を一旦は提示した。
JICはそれに基づき、報酬案を最終決定して申請したところ、経産省が白紙撤回したというのだ。激怒した田中氏は、嶋田隆・事務次官らとの協議の席を途中で退席し、部屋を出ていったという。
「トップ同士の会議にふさわしくない言葉まで飛び出した」(経産省)として、田中氏の態度に経産省側も我慢ならず、異例のリリースを冒頭の内容で公表したというわけだ。
さらに事態は、世耕弘成・経産相の責任問題に発展。リリース公表翌日の12月4日、混乱の監督責任を取り、大臣給与1ヵ月を自主返納すると発表。嶋田次官も厳重注意処分とし、1ヵ月(30%)自主返納することになった。
怒りが収まらない経産省内では、JICにかかわる2019年度予算要求をすべて取り下げ、JICを「活動休止」とする案まで浮上する始末。
経産省と、所管する官民ファンドの対立という、前代未聞の“大ゲンカ”の真相を知るべく、NewsPicks編集部はJICの田中社長CEOを直撃。これまでの経緯について、田中氏の眺めた景色の「全真相」を語ってもらった。

「交渉は2時間。たっぷりやった」

──世耕経産相が会見を開き、給与1ヵ月を自主返納して責任を取ることになりました。
田中 世耕大臣のことは、昔からよく知っています。
次世代を担う彼の名声に傷をつけるような形になってしまい、なんだか申し訳ないと思っています。「大臣として責任をとる」とまでおっしゃっているから。
ただ、交渉途中で席を立ったことについては、「けしからん」といわれるなら、そうなのかもしれないけれど、議論は2時間たっぷりやったんですよ。
その上で、埒が明かないと思い、席を立ったんです。