【西野亮廣】言葉は新たな経済圏をつくれるか?

2018/12/13

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いま、貨幣という“価値を計るものさし”が進化することで、これまで経済競争に組み込まれていなかった新しい価値の可視化が行われようとしている。
それは思いやりや感謝、共感、あるいは“愛”のようなあたたかな感情──ひとことで言えば、“体温”だ。
世界中の体温をいかに上げ、そこに経済圏を生み出すか。そんな、新しい競争が、いま始まろうとしている。
「文字が通貨になってくれたら……」。そんな突拍子もない考えを現実にしたのが『レターポット』だ。
 そのコミュニティでは、感謝の言葉があふれ、誰がどのくらい信用されているかが可視化される。
 そんな『レターポット』を通じて西野亮廣が目指すのは、まっとうに正直に生きている人が逆転できる世界だ。
 お金をお金たらしめている条件とは何か? 突き当たった答えは「保存ができる・交換ができる・尺度になりうる」。この3つの条件さえ揃っていれば、なんでも通貨になるのではないか?
「そう考えたときに、文字が浮かんだんですよ。でも、現実には文字は通貨になっていない。実は、お金をお金にしている条件にはもうひとつあって、それが『流通量』」
 曰く、発行しすぎると、お金はお金としての価値を失くしてしまう。いわゆるハイパーインフレだ。それと同じことが文字にも起こっていると西野は言う。
「じゃあ、流通量をコントロールしてしまえば、言葉もお金みたいな価値を持つなと思って、『レターポット』を作ったんすよ」
『レターポット』とは、1文字5円で文字を買い、気持ちを伝えたい相手に、その文字を使って手紙を書いて贈るサービスだ。例えば、手元に20文字を持っていたら、誰に手紙を送るか? 真剣に考えるだろう。送られたほうは、相手が20文字しか持っていないのに、自分のために文字を割いてくれたことがわかるから、この上なく嬉しい。そこで文字に価値が生まれる。まるでお金のように─。
 2017年12月にリリースして以来、西野のところにも8,000人を超えるユーザーから“手紙”が送られてきているが、誹謗中傷は1件もない。そう、『レターポット』の世界では「ありがとう」という感謝の言葉であふれている。
「余命わずかの人が話す言葉は美しいし、無駄がない。それは最後の日を覚悟していて、自分に残された文字数を把握しているから。『レターポット』も全く一緒で、あと10文字しか残っていないときに、誹謗中傷に使うか、お世話になった人に『ありがとう』と使うか。みんな後者を選ぶ。優先順位が『感謝』の方が上なんですよ」
 文字に価値をつけたことで、その人がどれだけ感謝されているかが可視化される。すると、それを見た人はその人を信用し、そこに集まるようになる。そしてお金も。つまり、『レターポット』の文字は、無限に押せる「いいね」ではなく、有料の「いいね」。その人が「信用できる」ことを意味する。既存の貨幣に頼らない信用経済の仕組みを実装した社会実験といえるだろう。
 実は、西野が『レターポット』を作ったもうひとつの狙いは、まさにそこにある。正直に生きている人たちの持っている「信用ポイント」を可視化させること。いいことをしたらポイントがちゃんと入って、それがきちんとわかる装置。いわば「信用スカウター」だ。現在、西野はFacebook上での会員1万人を超えるオンラインサロンを運営しているが、そこに加入するメンバーの働く店が一目でわかる地図と『レターポット』を絡めようとしている。信用スカウターの実用化であり、今年12月にはリリースされる予定だ。
「正直に生きている人が報われる世界を僕は作りたい」。こう話す西野の根底にあるのは、「逆転は起こせる、世界は変えられる」という熱い想いだ。自らも「地球で一番おもしろくなる」を目標に掲げ、オンラインとオフライン両方のプロジェクト、また自身の手がける書籍や絵本作品を連動させながら仕掛け続けている。
「みんな作品の中では『逆転は起こせる』と言っているけど、実際にはしていない。それを本当にしつつ、作品の中でも言ったほうが、作家としてすごく説得力がある」
レターポッド
スタート年月日:2017/12
ユーザー数:約59,000人(2018年11月上旬時点)
のべ流通レター数:約1,140万レター(2018年11月上旬時点)

1文字5円で文字を購入し、手紙を書いて贈るサービス。誰かにプレゼントするとき、モノがいらない人もいる。とはいえ、お金では味気ない。そもそもプレゼントの本質は、その人のためにモノを選んだり、買いに行ったりなどの費やした時間。そこには体温が宿る。どうすればお金に時間と体温を乗せられるか?行き着いたのが「文字」。文字に価値を持たせることで、文字を仮想通貨として扱っている。もらったレターで他の誰かに新しい文字を贈ることができるが、換金できず、4ヶ月を過ぎると失効してしまう。現時点では、利用にはFacebookかTwitterアカウントが必要。
(執筆:室作幸江 撮影:是枝右恭 編集:東京ピストル 誌面デザイン:LABORATORIES)
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