まるでSF? 超高精度GPSが変える未来

2018/12/5
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「AMERICAN EXPRESS PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。 今週は「ベンチャー起業家WEEK」として、有識者が選ぶ経営者が読むべきニュースをお届けします。
5日は、カレンシーポート 創業者・CEOの杉井 靖典(すぎい・やすのり)さんが出演。
自動運転など支える、準天頂衛星『みちびき』のスゴイ測位精度」」(ニュースイッチ)を切り口に、準天頂衛星「みちびき」によって訪れる社会変化についてお話いただきました。
誤差は数mから数cmへ
サッシャ 今回の記事に登場した準天頂衛星「みちびき」。これは位置を測るための衛星なのですが、一体どういったところがすごいんですか?
杉井 「みちびき」はのすごさは、緯度・経度・高さを誤差数cm単位で測定できるというところにあります。また、時計も精巧なものを積んでいるため、10億分の1秒レベルで時間を計ることができます。
サッシャ 例えば、スマホの位置情報ってたまに数mずれたりしますよね。そのずれが数cmレベルになるということですか?
杉井 そうです。「みちびき」の位置・時間測定能力があると、約3cm四方の空間にIDをつけられるようになります。すると、物や場所ひとつひとつに所有権を付与することが可能になるんですよ。
例えば、いまサッシャさんが座っている椅子に「サッシャさんの椅子だ」という所有権を付与すれば、このまま誰かにレンタルすることができるようになります。
サッシャ そうすると、例えば、椅子じゃなくて車でも同じことができますよね。駐車場って今はロック板が上がって車を決まった箇所に固定したりしますけど、「A地点に1時間駐車したのを確認したので、料金として600円いただきます」みたいなこともできたりするんですか?
杉井 そういうこともできると思います。
また、位置情報をより正確に計測できるようになると、自動運転の安全性も高まりますよね。すると、建物の入り口で下りたら車が自動的に駐車スペースに入っていって、さらには支払いも自動で行われる、「自動バレーパーキング」サービスができます。これはすでに実現に向けた検討が始まっている話でもあるんですよ。
将来的にそういった精度の高い位置情報を使った商取引が行われるようになった場合に、取引の安全性と利便性を高める仕組みとしてブロックチェーンを生かすことができると思っています。
つまり、『みちびき』の精度を利用した空間へのID付けとブロックチェーン技術による安全な取引は、とても相性が良いというわけです。
サッシャ 他にも生活が変化する場面はありますか?
杉井 空間へのID付けは応用の幅が広いので、支払いだけじゃなくて、お給料に関連する部分、例えば「勤怠管理」が自動的にされるようになるかもしれません。
サッシャ 誰々がそこにいると測定ができるのなら、「本日あなたはオフィスに7時間59分いました」といったデータがとれますからね。
電子署名の重要性
サッシャ 測位技術とブロックチェーンを組み合わせることで、いろいろな可能性が広がるようですが、実現に向けての懸念はありますか?
杉井 測位精度が上がったとしても、現状では発信された信号に「電子署名がついていない」という点がネックになると考えています。
どんなに精度が良かろうと、その情報を誰が発信したものなのかを保証できないとなると、そのような情報をブロックチェーンと連携するのは難しいのです。だますことがとても容易になってしまいますからね。
例えば、もしもどこかで戦争が起きた場合。GPSは軍事衛星ですので、中間者に妨害されたり、信号を変えられたりして、測位情報が狂ってしまうかもしれません。湾岸戦争が起こったときだって、かなりGPSが狂いましたよね。
サッシャ すごくずれました。車に乗っていて、カーナビが10m以上もずれた記憶があります。
杉井 もし、そういったことが起こったら自動運転なんて……。
三原 危険ですよね。
杉井 だから、正しい発信元から送信された測位情報かどうかがちゃんと検知できないとまずいわけです。そのために電子署名をつけようという運動が起きています。
「みちびき」は民間利用の衛星であり、その精度の高さをもって産業利用へとつなげていくわけですから、電子署名を付与して正しい信号である保証をしないと、ブロックチェーンと組み合わせていける未来はないのではないかと思っています。
「みちびき」の可能性
サッシャ 「みちびき」の恩恵で社会に変化が訪れるのはいつごろになると思いますか?
杉井 先に述べたような変化が社会全体に訪れるのは、たぶん10〜20年先になると思うのですが、電子署名が入るという部分についてはもっと早くに実現するのではと感じています。
現在、「みちびき」は4機が上がっており、2024年までに7機を打ち上げる予定となっています。7機すべてが上がれば、常時、日本付近に最低でも3機以上の衛星がいるという状態になるので、いつも3点から距離を測ることができ、より正確なデータがとれるようになります。
そう考えると、次の次の衛星打ち上げくらいまでには電子署名の技術が導入されるかもしれません。また、地上にある管制システムを使って何かできないかということも検討されています。
サッシャ 管制システムを使って、衛星から送られてきたデータに署名をつけるとか?
杉井 そうですね。特定の衛星だけをずっと見張っている管制システムというものがあるので、それを使えば衛星からの場合と同じような効果を得ることができるかもしれません。
ただ、地上の場合は中継点で再送信を行う必要がありますので、やはり誰でも受け取ることができるという意味では衛星から、空から降ってきてほしいなとは思います。
サッシャ これからますます、いろんなビジネスチャンスが生まれそうな予感がしますね。
今回のニュースをはじめとした杉井さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
12月6日は、シニフィアン 共同代表の朝倉 祐介さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】
放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: AMERICAN EXPRESS  PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
提供:アメリカン・エキスプレス
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