銀行口座利用者12億人より多い
ここ数年、利便性を重視する消費者の増加に伴い、モバイル決済とモバイル取引の普及がますます進んでいる。
全世界で見ると、決済機能を備えた銀行口座の利用者は約12億人だが、携帯電話のユニーク契約者数はおよそ50億人にのぼる。つまり、銀行口座の利用者よりも、携帯電話の利用者のほうが多いのだ。
そうしたことから、顧客基盤を拡大したい金融機関は、モバイルの導入に向かっている。さらに、数々のモバイルアプリケーションが毎日のように新しく登場している。
モバイル決済の増加の一例は、ロンドンでも目にすることができる。ロンドンではすでに、モバイル決済アプリの使用が、オンラインショッピングやレストラン、食品配達、ライドシェアリングといった分野にまで拡大しているのだ。
さらにここ数年で、公共交通機関の領域でもモバイル決済が使われるようになりつつある。最近では、ロンドンで公共交通機関を使って通勤する場合、携帯電話で料金を支払うことができる。こうした仕組みは、ニューヨークの地下鉄でも今後導入される予定だという。
モバイル決済は、今後も成長を続ける見込みだ。一部の国がモバイル決済分野で遅れをとりつつあるなか、中国は全速力で前進し、モバイル決済の導入を進めている。
中国の事例は、モバイル決済を最大限に活用するにはどうすればいいかを示している。そこから得られる教訓は、ほかの国々やサイバー通貨を扱う世界中の金融機関にとって貴重なものだ。
中国、モバイル決済で世界をリード
中国を拠点とする市場調査会社アナリシス・インターナショナルによれば、2017年第3四半期の中国におけるモバイル取引の総額は29兆4900億元(約478兆1100億円)にのぼるという。
2018年1月に公開されたレポートによれば、前年同期比でおよそ3.3倍増加したことになる。2017年1月から9月までのモバイル取引の総額は71兆元(約1150兆9800億円)だった。
中国のモバイル決済業界でトップを競っているのが、アリババ・グループ・ホールディング(阿里巴巴集団)とテンセント・ホールディングス(騰訊)だ。
2社は2017年第3四半期のモバイル決済市場を支配し、市場シェアは両社合わせて93%にのぼった。アリババの「アリペイ(支付宝)」が54%、テンセントの「ウィーチャットペイ(微信支付)」が39%だ。
市場調査コンサルティング会社のアイリサーチによれば、2017年は中国でモバイル決済が広まった最初の年というわけではない。中国のモバイル決済額は2016年にすでに9兆ドル(約1012兆7700億円)に達し、2017年にも増加の一途をたどるとアイリサーチは予測していた。
先頭を走っているのは、アリペイだ。アイリサーチによれば、5億2000万人にのぼるアリペイ利用者が実行した取引の82%で、モバイル端末が用いられていたという。ウィーチャットペイでも、サービスとリンクした決済口座は2億を超える。
こうした新たなモバイル決済アプリに押され、現金取引は衰退しつつある。アイリサーチによれば、現金取引は過去2年で10%減少し、2017年にはさらに減少したという。
暗号通貨の台頭も普及を後押し
モバイル決済はユーザーにとって非常に便利なだけでなく、キャッシュレス決済の処理に必要な場も提供している。
暗号通貨などの仮想通貨の人気は引き続き高まっており、そうした資金を両替する手段が必要になるはずだ。こうした通貨は従来の金融機関の外に存在しており、信用を得るためには、暗号通貨の利用者が資金を簡単に移動できる方法を提供する必要があるのだ。
暗号通貨の利用者にとっては、より多くの企業がモバイル決済を導入し、商品やサービスの支払いに仮想通貨を使えるようになる必要がある。
この分野で活躍しているのが、ブロックチェーンを用いたモバイル決済を提供するテルコイン(Telcoin)だ。同社は通信会社と提携し、銀行口座へのアクセスを持たない携帯電話ユーザーに対して、安全で便利な決済オプションを提供しようと試みている。
テルコインの共同創業者でもあるクロード・エギエンタ最高経営責任者(CEO)は、こうした提携により「数十億の人々に対して金融サービスを提供」できるようになると述べている。
こうした背景やその他の展開を考えれば、モバイル決済の広範な導入に目を向ける国が中国にとどまらないことは明らかだ。
「ビジネス・インサイダー」の調査サービス部門「BIインテリジェンス」の分析によれば、米国における店舗内モバイル決済は、年平均成長率40%で着実に成長することが見込まれる。2021年には1280億ドル(約14兆4000億円)に達すると、BIインテリジェンスは予想している。
インフラ不足のアフリカの可能性
欧州でも、モバイル決済の利用は拡大している。「アンドロイドペイ」と「アップルペイ」は、米国よりも欧州で広く使われている。
欧州におけるこうしたアプリの人気を証明するように、2017年にはスウェーデンのモバイル決済会社アイゼトル(iZettle)が1億5000万ドル(約169億円)の資金を調達している。
だが、モバイル決済アプリが導入されているのは、アジア、欧州、北米の各大陸だけにとどまらない。アフリカもその流れに加わっている。
発展途上国の多いアフリカはモバイル決済が隆盛を極められる場所ではないと考える人もいるかもしれないが、インフラが不足しているアフリカは、モバイルバンキングにきわめて適している。
決済・商業分析会社の「PYMNTS.com」によれば、アフリカ大陸のモバイル決済ユーザーは世界で2番目に多いという。
モバイル決済が、未来の商取引に欠かせない要素になることは明らかだ。そして米国でも、競争を勝ち抜くために、より多くの企業がモバイル決済を導入する必要に迫られるだろう。
暗号通貨や今後予定されているICO(イニシャル・コイン・オファリング)への投資を決断する人が増えている現状も、こうした動きを加速するはずだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Bill Carmody/Founder and CEO, Trepoint、翻訳:梅田智世/ガリレオ、写真:DjelicS/iStock)
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