「ちゃんと書ける」読者を育てる方法

2018/12/5
「落合陽一」を見いだすまで
──前回は「自分にとって刺激的な人たちと会っているうちに、人脈もどんどん変わっていった」というお話でした。例えば、NewsPicksでも人気の高い落合陽一さんが世に出られたのは宇野さんの影響が大きいと思いますが、落合さんとの出会いはどのようなものだったのでしょうか?
宇野 彼とは、ある勉強会で知り合ったんですが、なんというか、もう漫画の中から出てきたような感じでしたよ。今の落合陽一って、かなり社会化された落合陽一なんですよ。
出会った当時の印象は、いまどきヨウジヤマモトを着ているし、首からカメラをぶら下げていて、やたら生意気で、上から目線で、いろんなことに波風立てる男がいる。
でも、言ってることはいちいち本質的。こいつ、いい意味ですごいヤバいやつなんじゃないかと思って、勉強会が終わったときに僕から近づいていって、名刺交換したのがきっかけです。
僕はやはり文化批評の人間なので、最初はメディアアーティストとしての落合陽一に注目したんです。だから、最初の本である『魔法の世紀』は、『デジタルネイチャー』とは違って、結構アートな話になっているんですけど。
一方で、彼の考えていることは、僕の批評家としての問題意識と非常に重なるところがあって。彼の言論は、100年先へのパラダイムシフトを明示できる、それくらいの射程を持ったものなんじゃないかと思ったんですね。
宇野常寛/評論家。1978年生。批評誌〈PLANETS〉編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、『母性のディストピア』(集英社)、『若い読者のためのサブカルチャー論講義録』(朝日新聞出版)、石破茂氏との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)など。京都精華大学ポピュラーカルチャー学部非常勤講師、立教大学社会学部兼任講師も務める
──慧眼でしたね。
今でこそ、アラサー世代を代表する理系の知識人という扱いかもしれないけど、当時の落合陽一は、暦本研(東京大学学際情報学府 暦本研究室)の名物変人みたいな扱いだったと思うんですよ。