経営分析のプロが、企業の「歴史」に着目する理由
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人の営みである歴史には興味が尽きないものですが、会社の営みもそれ以上に面白いものです。
古きを温めて新しきを知る、とか言いますが、経験上社会や地域の変化と、その中での経営者の経験は、会社のビジネスモデルの変遷との間に、高い確率で明確な因果関係があると感じています。
M&Aというのは基本未来を買うような行為ですが、その最善手を考えるうえで、過去の因果を知り、因果の紡ぐ未来への仮説を立てるというのは、とても有効なアプローチであったと思います。
私自身は現場の人間だったので、体系的な経営分析のプロには程遠いですが、長いM&Aプレイヤーの経験で学んだ、1つの物の見方をお伝えできたら、そしてそれをアカデミアの皆さんと楽しく話せたらとても嬉しく思います。私が座右の書としているひとつに「『見えない資産』経営」という本がありますが、そこで紹介されている財務諸表に表れない「見えない資産」である「組織資産」「人的資産」「顧客資産」が企業にとっては重要であるという考えに通じると感じました。
確かにBSに表れる「物的資産」やPL/BSに表れる「金融資産」が企業価値にとって重要であることは間違いありませんが、本当の企業の価値って何だろうと考えた時に、財務諸表では見えないビジョン・ミッションや経営者のリーダーシップなどの「組織資産」、社員やサポーター、取引先などの「人的資産」、その企業のサービスを愛し、応援してくれている「顧客資産」なくしては、本当の価値は見えてこないと思います。
会社価値を創造し、高めるために重要なのは「組織資産」を起点とする価値創造サイクルであり、「組織資産」や「人的資産」というエンジンをおろそかにしたまま、売り上げや案件獲得に焦っても、結局は会社価値にはつながらないし、それどころか会社としての目的も果たせなくなってしまいます。
(参考:当社創業からの振り返りと「『見えない資産』経営」)
https://note.mu/keiichi_ohara/n/n68d68f3d6f8c企業の状態を把握するとき、財務指標以上に「歴史」に着目することでより深く理解ができます。経営者がなぜ創業したのか、どのような判断をしてきたのか、何を大切にしているのかを知ることにより、企業の性格が理解できます。「数字」は嘘をつきませんので過去の結果を教えてくれますが、未来は見えてきません。「歴史」を知り企業の性格を把握することで、何を大切に、何を捨て、何に磨きをかけていくべきか未来が見えてくることが多いと思います。