生産性向上ツールの普及を支える、RPA女子とは

2018/12/7
企業の生産性向上や働き方改革の武器として、ホワイトカラー業務の自動化を推進する「RPA(Robotic Process Automation)」の普及が進んでいる。RPA開発に必要なのは、事業に合わせた業務フローの構築とロボット開発を同時に進めるスキル。

これらを兼ね備えた人材を輩出し、企業へのRPA導入をサポートしようと立ち上がったのが、「人とテクノロジーを教育でつなぐこと」をミッションに掲げるMAIAの「RPA女子プロジェクト」だ。

なぜ、RPA “女子”なのか。RPA開発は女性に向いた新しい仕事だと語るMAIA代表の月田有香氏に話を聞いた。後半では、実際にRPA女子として活動する4名の座談会をお届けする。
RPAとは?
RPAとは、ソフトウェアロボットによって、入力、登録、検索、抽出、集計、加工、データチェックなどの事務作業や書類業務などを自動化する仕組み。これによって、業務の効率化、迅速化、コスト削減につながるため、労働人口減少に悩む多くの企業から注目されている。
 RPAとは、ソフトウェアロボットによって、入力、登録、検索、抽出、集計、加工、データチェックなどの事務作業や書類業務などを自動化する仕組み。これによって、業務の効率化、迅速化、コスト削減につながるため、労働人口減少に悩む多くの企業から注目されている。
RPA開発プロセスは、子育てと似ている
月田 なぜ、女性に向けたRPAの教育プログラムを始めようと考えたのか。それは、RPA開発に求められる力が、女性が本来持つ能力と非常にマッチしていると感じたからです。
 私は、コンサルティング会社勤務を経て、ミュージカル女優として活動していた時期がありました。そこで目の当たりにしたのは、才能あふれる役者の多くが能力を発揮できないでいる現実。
 そこで、コミュニケーションの基本となる表現能力に優れた彼ら彼女らの力を、もっと社会に還元しようと、最初の事業を立ち上げました。
 その思いは、優秀なのに育児や介護があってフルタイムで働くのが難しい女性や、駐在妻として離職せざるを得なかった人、復職後に本来の能力を発揮できないポジションを強いられているような女性たちの姿にも重なり、MAIAの創業へとつながったのです。
 私がRPAに目をつけたのは、RPAは事務作業が多いバックオフィス系の現場で力を発揮するから。実際、これらの現場には女性が多く活躍しており、深く業務を理解しているため、どの業務を効率化できるのかなどのアイデアが豊富に出てくるんですね。
 しかも、ロボット開発の肝は、細かな業務内容をロボットに“教えて育てる”こと。そのプロセスが子育てに似ているんです。
 「こういう指示をしたから、この作業ができるようになった」「指示を間違えたからエラーが出てしまった」など、教えたことを忠実に守りながら育つロボットの成長を楽しめるのも、女性ならではだと思っています。
ロボット開発の先を行く、ビジネスプロデューサーを創出
 2018年5月に始動した「RPA女子プロジェクト」は、未経験でも一からRPAを理解できる、オリジナルのオンライン教育プログラムを受けてもらうところから始まります。
 教育を終えた1期生、2期生約110名のうち、約50%が最終認定試験を合格して卒業し、現在、さまざまな企業でRPA開発人材として活躍しています。
 具体的には、クライアントの現場に短期間の常駐、あるいはリモートワークで、効率化できる業務フローを見つけて提案し、ロボットを開発。同時に、クライアント社内でのRPA人材育成を任されることも多く、RPA開発講師として呼ばれることも多々あります。
 実際に、RPA女子を活用された会社では、彼女らが開発している様子を見ながら学習し、3~4カ月で、自社でロボットを作れる人材の育成に成功されました。
 今後は、クライアントの業務ヒアリングからロボットを開発するだけでなく、業務効率化をトータルでデザインしていく「ビジネスプロデューサー」としての活躍も期待できます。
 RPAを活用したコンサルタントとしてキャリアを積めば、市場価値は高まるでしょう。
 さらに、AIとRPAを連携させていくことで、最新テクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション領域で活躍する人材としてステップアップすることも可能。
 それらの人材輩出が、RPA女子プロジェクトが目指す最終的なゴールです。
自由な働き方で、社会的に意義ある仕事を
 RPA開発は月30時間など短期間の開発プロジェクトなので、活用する企業側にとっては、数カ月の常駐型開発と比べると大幅にコストを下げられるメリットがあります。一方で、働く側にとっても大きなメリットがある。
 自宅にいながら自分の生活に合わせて業務時間を設計できるので、例えば、子どもが学校に行っている間や、家事の合間にロボット開発をするなど、自由な働き方が実現できます。
 RPA女子が活躍することで広く啓蒙したいのは、社会の固定観念にとらわれなければ、もっと多くの女性が自分のライフスタイルに合った働き方で、ちゃんと稼げること。
 「RPA女子プロジェクト」を通じて優秀な女性たちが最新テクノロジーをキャッチアップし、高いスキルを武器にして、フルタイム以外でパフォーマンスを上げていく世の中を牽引したいと考えています。
──RPA女子プロジェクトに参加したきっかけと、実際のお仕事について教えてください。
前田 IT開発の会社で10年間働いたのち、夫の海外転勤を機に仕事から離れ、海外で子育てをしていました。帰国後は専業主婦をしていたのですが、あるとき幼稚園に通う娘に「将来の夢は、ママみたいにずっと家にいること」と言われてしまって(笑)。
 「社会と接点を持つためにも働こう」と考えましたが、ブランクが長く再就職先を見つけるのが難しかった。悩んでいた時にプロジェクトの存在を知り、すぐに参加しました。
 現在は、リモートで地方企業のRPA導入プロジェクトに参加し、先方の社員にRPAの開発ノウハウを伝授しています。
 RPAはコネクティングツールなので、その会社のシステムがどういうものかを学んだ上で、「この業務はロボットに任せた方がいいですよ」と提案しながら、開発のサポートをしています。
関本 私も結婚、出産を機に会社を辞めて専業主婦をしていましたが、離婚をきっかけに再就職先を探していました。
だけど、前田さんと同じように就職がなかなか難しくて。どうしようかと悩んでいたときに、このプロジェクトを知りました。前職でプログラミングの仕事を2年間経験していたことも、挑戦の後押しになりましたね。
 現在は個人事業主としてクラウド会計システムのロボット開発などに携わり、さまざまな企業のRPA導入をお手伝いしています。
真崎 私は現在、税理士法人で働いていますが、定年退職しても働き続けたいという思いがありました。
 経験を生かして会社の顧問になる道もありますが、定年後に生活スタイルが変化しても、時間や場所に縛られず働き続けるためにITスキルを身につけたいと考えていたんですね。
 そんなとき「IT未経験でもゼロから挑戦できる」「リモートワークでできる」プロジェクトを知って、参加することに。RPAという新しいスキルを身につけたら、年齢を重ねても市場価値は上がっていくのではないかと思いました。
 現在は自分の専門領域を生かし、会計税務分野を担当。本業以外の時間を使って、税理士法人のロボットを試作しているところです。
奥田 私は、システム会社のSEを経験するなどIT領域に長く携わってきたので、RPAには早くから注目していました。
 今勤めている会社でも導入しようと考え、開発のノウハウを学ぼうとリサーチしていたとき、オンライン講習を受けられるPRA女子プロジェクトを知りました。
 今は自分でロボットを開発するのではなく、RPA女子3期生約150名のサポート担当として、リモートで人材育成に取り組んでいます。
──RPA開発のどんな点にやりがい、面白さを感じますか?
関本 RPA開発の面白いところは、正解が1つではないこと。課題解決に行き着くプロセスは何通りもあるので、人によって設計の異なる個性的なロボットが生まれます。その自由度が好きですね。
前田 ロボット開発は、ゲームに似た感覚があって楽しいですよね。細かな指示を与えてロボットが動くようになる流れも、ゲームをクリアしていくかのよう。自分で調べながら「こう指示をしたらどうなるだろう」と変化を楽しめる。
 その意味では、子育てにも似ていますよね。「私がさっきあんな指示を出したからこうなったんだ」と、エラー部分をちゃんと知らせてくれるところは実際の子どもよりもだいぶ素直ですけど(笑)。
真崎 たしかに、素直な子どもを育てている感覚はありますね(笑)。ロボットが完成して無事に動いたのを確認するたびに、達成感があるから楽しいです。
奥田 3期生のサポートをしていても、「ちゃんと動いた!」などと歓喜しているメンバーと、一緒になって喜んでいますよ。
──RPA女子プロジェクトの意義をどう感じていますか?
奥田 私自身、夫の全国転勤についていき、地方でまったく働き口が見つからないという経験をたくさんしてきました。そういう“転勤妻”のキャリアを支援する活動も行ってきたので、月田社長の思いには共感しています。
このプロジェクトに参加したことで、人は何度でも学び直して新しいスキルを身につけ、社会で活躍できるという実感を得られました。この先どんな最新テクノロジーがやってきても、学んで身につけ、次のステップアップにつなげられると思っています。
前田 そうですね。新しい技術が出てきたら、また学んでキャッチアップすればいいというマインドに変わったのは、このプロジェクトに参加したからだと思います。
関本 それに、リモートワークで副業や子育てができれば、本業と両立し、自分の人生を楽しむ土台づくりができます。働き方、生き方が変わっていくと思いますね。
真崎 少なくとも今のバックオフィス系の作業は、RPAとAIによって大半が自動化できると感じているので、RPA人材の活用ニーズはまだまだ続くと思っています。眠っている女性の能力がフルタイム以外の働き方で生かせたら、労働力不足などの社会課題も解消していくのではないでしょうか。
(取材・編集:田村朋美 執筆:田中瑠子 撮影:岡村大輔 デザイン:國弘朋佳)