欧米で190人が院内感染 オリンパス内視鏡使用後
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十二指腸内視鏡は、主にERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)と呼ばれる技術、肝臓や胆嚢と十二指腸(胃の1つ先)をつなぐ胆管や、膵臓と十二指腸をつなぐ膵管が、胆石や腫瘍によって通りが悪くなったところを評価、治療するために用いられます。腸の中はそもそも細菌が多くいる場所でそこに一般的な細菌を持ち込んでも感染というのはあまり問題になりませんが、この胆管に細菌を持ち込むと、たちまち重篤な細菌感染症となります。急性胆管炎と呼ばれる病態です。
今回取り上げられているオリンパスの内視鏡は、closed channel scopeと呼ばれ、本来空いている内視鏡の先端を閉じる構造とすることで、細菌を内視鏡内部に取り込みにくく、細菌感染の可能性を減らし、内視鏡の洗浄操作も楽になるのではないかというアイデアで開発されたもののようです。
しかし実際には、細菌が入るには十分なスペースがある一方で、説明書通りの洗浄操作を行っても細菌を完全には取り除けない構造になってしまっていた可能性があるということです。
日本では使用されていない型のようですが、米国ではすでに2012年からこの内視鏡とCRE(カルバペネム耐性腸球菌)のアウトブレイクとの関連性が報告されており、現在まで記事にあるように多数の訴訟につながっているようです。
ERCPによる感染症の合併の確率を0にすることは困難で、その旨はあらかじめ内視鏡の施行前に同意書という形で合意形成されているはずですが、今回は内視鏡のデバイス自体に落ち度がありそうということで、デバイスのリコール、訴訟につながっていると思います。
洗浄後の再使用を許されるデバイスは必ず感染のアウトブレイクのリスクが付きまといます。現場で使用される前に十分なデバイスの精査、洗浄操作の繰り返しの評価が求められます。このニュースをきっかけに、オリンパスに限らず、他の医療機器開発メーカーも含めて自社製品の再度の見直しが行われることを期待します。山田さんが書かれているとおりです。
医学の基礎知識を追加しておくと、、、
医療機器の滅菌には、洗浄と消毒が大切になります。いくら強力な消毒液や消毒ガスを用いても、きちんと洗えていないものは滅菌できません。
理論的には機器の表面に菌が付着しているだけなら、いきなり消毒でも大丈夫なのです(他の人に使ったのなら洗浄もしてくれよ、と思うかもしれませんが、そこが医療での清潔不潔と一般的な文化としての清潔感の違いです)が、体液とともに付着している場合はそれを十分に洗浄で落とさないと消毒も力を発揮しないということです。
今回の内視鏡は穴を閉じることで、通常ある管腔こうぞうをなくして洗浄・消毒しやすくなっているはずが、ある意味で中途半端な穴の閉鎖と構造のためにむしろ洗浄しにくくなって滅菌できなくなってしまっていた、ということなのでしょう。
この辺りは注意喚起がなされないと正直見た目にはわからないことが多いと思いますので、臨床使用して不具合が見つかるのは仕方ない気もしますが、何より隠蔽していたのであれば大きな問題を感じます。