チーム力を上げる「ハイブリッドコミュニケーション」とは

2018/11/27
場所や時間を選ばない働き方が浸透している。移動時間の削減やワーク・ライフ・バランスの追求、生産性向上などのメリットがある一方で、リアルなコミュニケーションの不足によるメンバーの連携、チーム力の弱体化が不安視されている。

オンラインとオフラインが入り乱れる今、最適なコミュニケーションとは何か。現在、数々の企業に、新規事業開発のための戦略立案やチームビルドを支援する及川卓也氏に理想的な新規事業の始め方から、効果的なコミュニケーション、そしてツールの使いこなし方について聞いた。
ビジョン、ミッションへの腹落ち感
──及川さんは、グーグルやマイクロソフトに在籍した時は、数々の新規プロジェクトを手がけ、独立後はさまざまな企業の新規事業開発や組織づくりを支援しています。ゼロからチームを立ち上げるポイントは、何でしょうか。
及川 当たり前のことなんですけど、多くの場合できていないのが、チーム全員が同じ目標に向かえるよう、ビジョンとミッションを共有し納得すること。
シリコンバレーの優秀な企業やチームは、ビジョンに対して正しいか考えてから動きます。たとえ、上層部や上司が出してきたビジョンでも、うのみにしません。自分なりに考えて、わからなければとことん議論する。そして、腹落ちさせてからスタートします。
マネジャーの仕事は、そのための環境作りです。新しいプロジェクトを手がけるときは、リーダーだけで考えた内容を、メンバーに落とし込むのではなく、メンバー全員が必ず腹落ちしてからスタートしなければなりません。
新規プロジェクトの枠組みが決まったら、すぐに具体的なアクションを取りたくなります。また、多種多様なメンバーがいると意見を言う人もいれば、「はい、わかりました」と表面上はわかったように言うものの、理解していなかったり、不満を抱えていたりする人もいる。
みんなが腹落ちしているか、理解をしているかを把握するのは大変で手間がかかるから、やりたがらない。ただ、長期的にみれば、拙速に始めずにしっかりとミッションとビジョンの共有と納得に時間をかけたほうがコミット力は上がり、成功の確率は上がります。
モチベーション曲線と「自分トリセツ」のススメ
──異なる素地の集団に、統一した価値観を作り出し、一つの方向性に導くのは難しいものです……。
チーム内のコミュニケーション力を高めることに尽きます。そのためには、まずは相手を知ること、自分を知ってもらうことの努力を怠ってはいけません。
方法はたくさんあると思いますが、私が用いることが多いのが、「モチベーション曲線」と「トリセツづくり」ですね。
モチベーション曲線は、自分の人生を振り返って特筆すべき出来事を列挙し、その時に落ち込んでいた時期なのか気持ちが高ぶっていた時期なのかを年表式グラフに表すもの。その人がどんな経験をしてきたのか、どんなことで気持ちは変動するのかを、比較的少ない時間で把握できます。
トリセツづくりは、文字通り、自分の取扱説明書をつくってメンバーとシェアするんです。
感情をあまり顔に出さない人がいたとしますよね。あまりその人を知らない人にとっては「いつも怒ってるように思えて話しかけにくい……」と感じる。ただ、その人にとっては照れ屋で口ベタなだけで当然怒っているわけではない。その個性が、初めからわかっていれば、変な取り越し苦労なく、スムーズな会話が生まれますよね。
また、自分はすぐにメールを返信するタイプの人で、メールの返信が遅い人がいたとする。
その場合、読んでくれたのか、気に障る内容だったか、心配になりますよね。でも、その受信者はある時間に一気にメールを読んで返信するタイプだった。そんなことも事前にわかっていれば、無駄に気をもむ必要もなくなります。
「話せば、なんだ、そういうことだったんだね」ってこと結構ありますよね。そうしたことを、チームを組織する直後に示しておくんです。そうすることで、その後のコミュニケーションは想像以上にスムーズになりますよ。
私はいま、複数企業の新規事業開発やエンジニアチーム立ち上げなどを外部パートナーとして指揮していますが、こうした手法を取り入れることが多いです。
コミュニケーションには「フロー」と「ストック」がある
──働き方の多様化に合わせてコミュニケーションも多様化しています。テクノロジーなき時代は会うだけだったものが、電話、メール、チャット、オンライン会議などさまざま。こうした手段の選び方は、チーム内のコミュニケーション力に影響がありそうです。
詰まるところ、コミュニケーションはFace to Face、直接会って話すのが一番でしょう。
ただ、コミュニケーションにおけるテクノロジーはかなり進化していると思っています。アイデアを持ち寄ってブレストするような「五感で共感する場面」は、オフラインのほうがまだ適していると思いますが、逆を言えば、それ以外はオンラインでも十分に賄えるレベルだと思っています。
確かに複数のコミュニケーションツールが今はありますよね。電話を除けば、昔はメールだけだったように思いますが、チャット、データ保存・共有、1on1のビデオコミュニケーションツール、複数人でのオンライン会議システムなど、本当に便利になりました。
ご指摘の通り、離れた場所で仕事して共同作業するような場面は増えてきましたから、こうしたコミュニケーションツール選びは重要な要素です。
1つのポイントとして、コミュニケーションを「フロー」と「ストック」に分けてツールを選んでみるのがいいかなと思っています。
フローとは、文字通り、流れていくコミュニケーションで、以前はメール、今はチャットツールが得意な分野でビジネスチャットが急成長している領域ですね。一方で、ストックとはプロジェクトやタスクごとにまとめて残しておきたいコミュニケーション。
チャットツールを使ってコミュニケーションをとっている中で、何かしらの資料やリンク情報をもらった後、その情報を保存していなくて、やりとりをさかのぼった経験は誰でもあると思います。すごく面倒ですよね。
今のコミュニケーションツールは、フローが得意なのか、ストックが得意なのかで大別できると思うんですね。そして、この2つを兼ね備えているツールはありそうで意外にない。
だから、コミュニケーションの内容によってツールを使い分けることは重要です。
1つの場所に集まっていないことで、メンバー間の連携が希薄になる可能性は高まると思います。だからといって、じゃあどんな時でも会社に出社しようとか、今の多様な働き方に逆行するような動きは当然ありえません。
チームビルディングにおけるコミュニケーションの重要度を意識し、オフラインとオンラインでどのようなコミュニケーションをとるべきか、そしてオンラインでは、フローとストックを見定めて最適なツールを選ぶことが大事になってきていると思います。
チームにおける独自のコミュニケーション論を持つ及川卓也氏に、シスコシステムズが提供する「Cisco Webex Teams」に触れてみてもらった。このツールの魅力はフローとストックを両方カバーしていること。及川氏はどう感じたのか。
「スペース」単位でのコラボレーション
社内・社外を問わず招待されたユーザーが出入りできる部屋
会議の際に使われるウェブ会議のWebex Meetingsに対して、Webex Teamsは、「会議前」「会議中」「会議後」の一連の流れを、そのチーム間で共有できる。「空間(スペース)」をシェアするイメージだ。
複数企業のスペースを利用する場合でも、1つのアカウントで済むアーキテクチャになっていて、社外のユーザーが含まれる場合にはインフォメーションが表示されるため、うっかり社外秘情報を話してしまうことも防止できる。
社内メンバーのみの表示画面
社外メンバーがいる場合、画面右下に外部参加者が確認できる
ビデオ会議の場合、最大75人が同時に利用可能。途中で少人数に分かれて、個別のテーマについて話を始めることも簡単だ。
シスコシステムズのマーケティングマネージャー、粕谷一範氏の説明を受ける及川氏。1つのアカウントで複数のスペースを支える機能に及川氏の関心は高かった。顧問先企業を複数抱える及川氏ならではの着目点
一斉に参加依頼をコールして、そのとき参加できる人だけで話し始めることができる。
電車の中で話せない人はテキストで参加する、デジタルのホワイトボードを使って図示するなど、コミュニケーションの方法をフレキシブルに組み合わせることもできる。テキストでの会話の途中から電話や会話を始めるのも簡単で、1カ所のスペースで管理できるのでタイムラインも追いやすい。
PCやモバイルからの利用だけでなく、会議室に設置するようなビデオ会議の専用機器からシームレスに参加することも可能。
パフォーマンス重視のシンプル構成と拡張性
特定ツールにロックインせず必要に応じて幅広くつながれる
シンプルな機能を提供して、フィードバックを受けながら求められる機能を追加していく設計思想。それによって、軽快な動作を担保する。
一方で、関係者やプロジェクトの特性によって使いたいツールは変わってくるので、その時々に組み合わせて使えるような豊富なビデオ会議端末をそろえている他、自社製品だけではなく、他社ツールとの連携も行えるように設計されている。

シスコシステムズは、ネットワーク機器の会社で特に「ルータ」のイメージが強いですね。この分野の最大手ですから安定した製品を供給している信頼感を持っています。Webexも知っていましたが、けっこう以前からあるブランドですよね。安定感があり信頼もできますが、だからこそ、正直に言って、少し古臭いイメージも持っていたんです。
ただ、今回の説明を聞いて、かなり洗練されていてイメージが変わりました。こうしたツールはサクサク動くパフォーマンスが大事なのですが、かなり軽快なようですね。
ネットワークを知り尽くしているシスコゆえなのかな、と。チャット、ウェブ会議、情報共有、ストックとフローの両方も兼ね備えているサイバー上の仮想オフィスのような設計だと思っています。
フロー型コミュニケーションツールとして、ビジネスチャットツールが急成長していますが、ストック型コミュニケーション、またはこの2つを両立しているツールは、デファクトがまだない。Webexに期待しています。
「Cisco Webex」には、基本機能を搭載した無料版とフル機能を利用できる有料版があります。

シスコシステムズでは、Cisco Webexの機能をフルにお試し頂ける期間限定の無料トライアルの提供およびウェビナーを通じた体験会を定期開催しています。軽快な動作や多機能を容易に使いこなせる操作性を感じる機会ですので、ぜひチェックしてみてください。詳細はこちらです。
(取材・編集:木村剛士、構成:加藤学宏、撮影:長谷川博一、デザイン:星野美緒)