【求人掲載】すべてのマーケターに、データを読み解くための武器を

2018/11/16
消費者の行動がオンラインとオフラインを行き来する現在。様々な企業が、顧客との新たな関係を求めてビジネスのチャネルを変化させている。
顧客とのタッチポイントが増え、新たに可視化されるデータによって、マーケティングの可能性は広がっていく。その時代に膨大なデータを活用し、新しい事業を創出し続けるためには何が求められるのか。これからの事業とマーケティングのあり方について、最前線で取り組む2人に聞いた。
消費行動に、リアルとデジタルの境はない
── お二人はどういったミッションのもと、事業に取り組んでいらっしゃるのですか。
大宮 Speeeでは「解き尽くす。未来を引きよせる。」というミッションを掲げ、私たちの強みであるデータ解析やテクノロジーによって、クライアントの課題解決やデジタルマーケティング領域での新規事業開発を行っています。
昨今、消費行動の変化に伴い、マーケティング活動は高度化し、複雑化しています。複数のプラットフォーマーが台頭していますが、一つのプラットフォームやサービスだけでは、マーケティングにおける課題を解決することが難しくなっているのが実情です。
このような変化によって、消費者とプラットフォームの中間を取り持つHUB機能の重要性が増しています。Speeeとしては、そのHUB機能を開発していくことで課題解決につなげていきたいと考えています。
2012年Speeeに入社。デジタルコンサルティング事業本部で大手クライアントの開拓プロジェクト責任者を経て、2013年10月より事業責任者としてアドテク事業の立ち上げから事業グロースまでを担当。2015年にネイティブアドプラットフォーム事業を創出し、2018年10月よりデータ領域の新規事業であるPAAM事業(Predictive Analytics and Marketing 事業)の責任者を務める。BtoBの新規事業領域の立ち上げを歴任し、Speeeの事業拡大に貢献。
奥谷 私は良品計画というオフラインに強い小売企業に長く勤めた経験から、今までオンラインでビジネスを手がけてきた会社が、これからいかにオフラインで顧客とつながっていくのかに興味を持ちました。
AmazonがEcho(スマートスピーカー)やGo(食料品実店舗)を作ったのはまさにそういうことで、オンラインと接続したリアルなタッチポイントが、私たちの周りを埋めつくしていくだろうと考えたからです。
そういったなか、野菜のオンライン販売に取り組んできたオイシックス(現・オイシックス・ラ・大地)で、データをもとにした顧客理解や、オフラインでの接点作りに取り組んでみたいと思い、転職しました。
入社して3年になりますが、少しずつ勝ちパターンも見えてきて、形になりつつあるように思います。
── Amazonのように、オンとオフで複数のチャネルを持とうとする企業が増えているのはなぜですか?
奥谷 消費者の行動を考えるうえで、もはやオンラインとオフラインを切り分けることがナンセンスだからです。
消費者は、「野菜を買う」という行為においてさえ、リアルなスーパーだけでなく、ネットスーパーやオイシックスのような定期宅配サービスを使い分けています。
1997年良品計画入社。World MUJI企画、企画デザイン室、衣料雑貨カテゴリーマネージャーを経て、2010年にWEB事業部長に就任。「MUJI passport」のプロデュースで2014年日本アドバタイザーズ協会Web広告研究会のWeb人大賞を受賞。2015年にChief Omni-Channel Officerとしてオイシックス株式会社に入社。2016年10月より現職。著書に『世界最先端のマーケティング』(岩井琢磨との共著)。
それに、購買だけでなく、その動機となる情報との接点もオンとオフが重なり合い、経路が複雑になっています。
だから企業側は、消費者の行動を把握するためにも、オンラインとオフラインのそれぞれに接点を作ろうとしています。
オフライン企業はECをやったり、アプリを提供したりして徐々にオフラインの購買データを取れるようになってきました。オンライン企業はもともとデータの重要性を当たり前のように知っていたけれど、今はオフラインのタッチポイントが重要だと気づき、その構築を模索しているんです。
これが、今マーケティングの世界で注目されている「チャネルシフト」です。
出典:『世界最先端のマーケティング』(奥谷孝司、岩井琢磨/日経BP社)
大宮 そのようなチャネルシフトが起こっている今だからこそ、デジタルデータの分析を強みとするSpeeeにできることが増えています。
実際に、クライアントのマーケティングにおける戦略側と実行側の間にHUB機能として介在し、データやテクノロジーの活用を支援するプロジェクトが始まっています。
我々は、今起こっているマーケティングの潮流に最初からかかわってきたわけではありませんし、総合代理店になりたいわけでもありません。ただ、現在のデジタルマーケティングのなかで生じている構造的な問題を、事業開発を通して解決したいんです。
現在は様々なマーケティング理論をキャッチアップし、クライアント支援を行いながら起こっている問題の解像度を高め、どういうプロダクトを開発していくべきかを考えています。
重層化するカスタマージャーニー
── マーケティング領域でのSpeeeのやり方とは、どんなことでしょう。
大宮 大事にしているのは、できるだけフラットな視点で、客観的にデータを扱うこと。そのうえで、先端的な理論やテクノロジーがあるから使いましょうと提案するのではなく、自分たちなら消費者としてどう行動するかを第一に考えています。
たとえば企業のマーケティングでは顧客の行動を時系列で表す「カスタマージャーニー」がよく使われますが、企業の思いが前面に出すぎて、ブランドやサービスに都合よくデータが解釈されていることも多々ありますよね。「そのジャーニー、現実には存在しませんよね?」というような……。
奥谷 よくあります(笑)。消費者の意思決定は「AIDMA(Attention, Interest, Desire, Memory, Actionで消費行動のプロセスを説明した仮説)」や「AISAS(Attention, Interest, Search, Action, Share)」で説明されがちですが、現実のお客様の意思決定はもっと感覚的で捉えにくいものです。
私はそれを「重層化するカスタマージャーニー」と呼んでいるのですが、意思決定や行動を一つのレイヤーだけで説明することに無理が出てきているのだと思います。
── 「重層化」とは?
奥谷 たとえばミュージカルのチケットが2枚、オンラインで購入されたとします。この場合、購入データからは「大人2名が来場する」という情報しかわかりません。
でも、もしかすると彼らは4人家族で、子ども2人をベビーシッターに預けて、久々に夫婦水入らずでミュージカルを観に行くことにしたのかもしれない。
その際、チケットを購入するまでには、「子どもを誰に預けようか」「近くに車を停められるのか」「夕食をどこで食べるか」「お金を下ろすためにどのATMに立ち寄るか」……。こういった様々な意思決定や判断が同時進行で動いているはずなんです。
大宮 Speeeでも、まさにその重層化した部分を可視化することに取り組んでいます。
一つの企業のデータだけでは読み解けないことも、複数企業のデータを結合して分析することで、見えてくる場合があります。そうすると、あるサービスやプロダクトを購入してくれそうな人のペルソナを特定できるだけでなく、その人がアクションを起こすまでの心理変容を把握できるようになる。
たとえば、ある旅行会社のお手伝いをした時に、サイトで熱心にイタリア旅行を検索していた人が、その1週間後に韓国旅行を購入したというケースがありました。この検討と購入の間に何があったのかを読み解くことが、現状ではかなり難しいんです。
イタリアに求めていた何かが韓国でも満たされたのかもしれないし、単に予算が足りなかったのかもしれない。旅行先を考えている間に、韓国の魅力的な情報に触れたのかもしれません。
もっと様々なデータをクロスさせて心理的な変化の要因を特定できれば、このお客様が求めているベネフィットに合致した旅行を、こちらから提案できるようになります。
奥谷 そう、カスタマージャーニーが重層化することによって、様々なタッチポイントから行動データを取らないとわからないことが増えているんです。
そういったデータ分析を行うためにも、点在している行動データに横串を通すようなDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)があると便利でしょうね。
オイシックスでは、定期的に野菜を購入してくれるお客様がどんな方なのかは、データから見えてきています。同じように、どんな企業にも優良なデータがありますから、1次データをみんなで持ち寄って掛け合わせていくことができれば、よりお客様が欲しい情報を、欲しい時に提案できるようになると思います。
これからのマーケターの役割とは
── 実現すれば夢のあるマーケティングツールになりそうですが、複数の企業からデータを集めるのは簡単ではありません。
大宮 そうですね。どれだけ多くの企業から精度の高いデータを提供していただけるかがポイントになります。
サードパーティーデータの活用という方法もありますが、今後はどれだけ高い精度のデータを使って分析できるか、また、それでも不足するデータをどう埋めるかが重要になると考えています。ここに、データの取得方法や接続方法といった大きな課題が残ります。
加えて、個人情報保護法やGDPR(EUの一般データ保護規則)もありますから、データを提供することに積極的な企業でさえ、どのように提供すれば問題が起こらないのかがわからず二の足を踏んでいるのが現状です。
奥谷 もちろん法的な問題もありますが、お客様にも依然として「提供した個人データを何に使われるかわからない」という不安があります。それを払拭するにはやはり、企業イメージやブランドの力が大きく影響してくると思います。
その企業ブランドが「私のためのブランドで、いつも私に合ったものだけを薦めてくれる」と感じるのか、「よくわからないけれど商品を買えと押し付けてくる」と感じるのかでは雲泥の差です。
これはAmazonのような巨大企業であれ、私どもオイシックスのような規模であれ、気をつけなければいけないことだと思います。
大宮 企業や消費者の不安を払拭するためにも、ある程度データを匿名化する必要があります。
我々が今取り組んでいる「Datachain」はそのための事業の一つで、ブロックチェーン技術によってデータに暗号化と匿名加工を施し、従来の方法では流通に至らなかった貴重なデータの有意義な利活用を促進しようとしています。
データを流通させるための課題が山積している現状では、事業会社や広告代理店はなかなかリスクを取ることができません。だからこそ、この領域の事業開発は、まさにSpeeeの役割だと考えています。
── そうやってデータのプラットフォームができれば、マーケティングの可能性も広がりそうです。その時、マーケターの役割はどう変わるでしょうか。
奥谷 私はこれからの小売業を変えるのは、マーケターやエンジニアも含めたテクノロジストだと思います。今でこそ、小売業の売上はリアル店舗の方が断然大きくて、オフライン9:オンライン1くらいかもしれない。だけど、持っているデータ量は逆ですよね。
オンラインの売り場では、ディープラーニングの調整をしたり、メルマガでセールやイベントを告知して、それでも読んでもらえなかったらLINEでプッシュしたりしているわけです。
では、オフラインはビジュアルマーチャンダイジングや陳列の工夫だけでいいかというと、そうではないでしょう。
私が前職でやったMUJI passportのように、アプリで店舗にチェックインしてもらったり、商品検索や配送機能を組み合わせたりと、デジタルを絡めたカスタマージャーニーを作っていく必要があります。
大宮 小売業だけでなく、メーカーなどの商品開発にも同じことが言えますよね。そこでマーケティングを行うには、エンジニアリングやデータアナリストのような視点が不可欠になります。
その状況を踏まえたうえで、Speeeではデータやテクノロジーを活用し、マーケターの意思決定を支援していきたいんです。
すべての企業が優秀なエンジニアを採用できるわけではないし、データ分析やデータ活用を外部コンサルタントに頼んでも、データ取得やデジタルトランスフォーメーションそのものが目的化してしまって、なんとなく効率化して、それなりにレポーティングして終わっているケースがかなりあります。
PAAM事業では、データをどのように収集・統合・蓄積・利活用していくかというテーマで、スポーツチームや大手メーカーを支援しており、構造的な問題を感じています。
マーケター本来の役割としては、データを集めることに時間を費やすのではなく、顧客と向き合って考えること、サービスや体験を向上させることに時間を使うべきです。でも、現状ではそれができていない。その課題を、我々の技術とプロダクトで解決できるのではないかと思います。
奥谷 確かに、次のアクションにつなげなければ、データに意味はありません。データ自体は過去の記録でしかなくて、そこにしっかりとした仮説を立てて命を吹き込むのは、昔も今も人の役割ですからね。
大宮 「解決法はデータに潜んでいて、データは解釈を加えなければ意味がない」という考え方がSpeeeにはあります。
旧来のマーケティングのフレームワークは、多くのマーケターが考え抜いて作り上げてきたものです。ただ、そのフレームワークに沿って仕事を進めるだけでは、チャネルシフトも含めた現在の大きな変化に対応できません。
新たに加わったテクノロジーやビッグデータを使えば、どんなビジネスやマーケティングが可能になるか。そんなふうに考えられる人たちと、これからの新しい事業を作っていきたいと思います。
(編集:宇野浩志、取材・執筆:大矢幸世、撮影:後藤渉、デザイン:星野美緒)