楽天は「英語公用語化」でどう変わったのか
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かつて、同社のHR(グローバル人事部)で働いていました。外から見ているからか、NPでは好意的な意見が多いですね。メリットは書かれているので、デメリットを挙げておきます。
・人事考課の妥当性について
職位ごとにTOEICスコアの基準が定められており、満たさないと10%減給になる人事制度でした。業務に関係のない要因で減給することについて、労務問題にも発展しました。
昇格においても「英語はできるが仕事がいまいちな人>仕事はできるが英語がいまいちな人」という判断となり、社員のモチベーション低下の一因となりました。
・英語ハラスメント的な状況
会議は英語ですが、細かいところや不明点を質問しにくい状況で、ストレスフルなコミュニケーションロスが発生していました。「大事なところなので日本語で説明します」というフレーズは、笑い話ではありません。
・採用選考時/入社後のTOEICスコア要件について
高い専門性が求められる事業について人材が集まらず、さらにはM&Aした企業の人材が大量流出した事実があります。業務で英語を使わない、海外とかかわらない事業部メンバーのモチベーション維持は大いなる課題です。
・外国人に日本文化(?)を強制している点
採用選考時に三木谷さんの著書を自費購入し感想文提出、朝会では三木谷さんが登壇するまでは起立(本社だけでなく、同時中継の数十拠点でも直立不動で敬意を示す)、ウェルカムランチでは三木谷さんが箸をつけるまで食事を始めてはならない(冒頭話すので10分位待つ)…など。
不合理とも思える体育会系日本文化は、ダイバーシティの理念に反する部分があります。外国人社員からも多数指摘を受けましたが、回答に困りました。
なお同社のTOEIC平均スコアアップは、「英語が苦手な社員(主にTOEIC700以下)が退職→スコアが高い日本人or英語を母語とする外国人社員を採用」というサイクルで実現されています。英語化支援が奏功したかどうかは、より精緻なデータが必要です。
功罪ありますが、良くも悪くも「三木谷さんの楽天」だからこそやれているのだな…という感じです。記事にない部分で、多くの人々が不本意な経験をしている事実があることを、忘れないでいただきたいです。『英語化後に最も活躍するかと思われた英語圏の社員(文化的疎外者)は、英語が”水路”となって押し寄せてきた楽天の社内ルールや企業文化に疲弊した。』
というのは、おもしろい。以前は、日本語が分からないことが免罪符となって欧米的ふるまいが許されていた、ということですね。英語が話せない人だけケアすればいいということではない、という大事な学び。楽天の全社英語化は最初否定的どころか、揶揄する言説が多かったのを覚えています。でもその後外国人社員は20倍になり、事業の国際化も進み、しっかり結果を出し始めている。良い結果についても広く知られてほしいですね。
なお、英語化に関わったハーバードのニーリー教授によると英語化のポイントは4点とのこと。
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英語化の取り組みはかなり長くやってきたが、急速にやる、大胆にやる、トップダウンでやる、システム化する、という4点の重要性を強く認識した数年間だった。