落ちこぼれが挑む日本ブランドの服づくり

2018/11/14
NewsPicksは、J-WAVE「STEP ONE」(毎週月~木 9:00~13:00)と連携した企画「AMERICAN EXPRESS PICK ONE」(毎週月~木 11:10~11:20)をスタートしました。 今週は「ベンチャー起業家WEEK」として、起業家が選ぶ経営者が読むべきニュースをお届けします。
14日は、Factelier CEO & Founderの山田 敏夫(やまだ・としお)さんが出演。
落ちこぼれが挑む、『服』革命」(HuffPost Japan)を切り口に、ご自身の挑戦とアパレル業界の現状についてお話いただきました。

満点超えの商品づくり

サッシャ 今回は、11月8日に発売されたご自身の著書『ものがたりのあるものづくり』について書かれた記事を取り上げています。
この本は、どんな内容になっているのでしょう?
山田 自伝的な内容の本なのですが、成功体験を書いた本ではありません。この本には、今まさに私がチャレンジしている話を書きました。
私たちは「日本製の服を作って売る」ということに挑戦しています。洋服の価値軸というと、これまで「ファッション性」や「経済性」といったものが重視されてきましたが、私はそこに「作り手の思い」という新しい価値軸を生み出したいと考えています。
私自身は、小学生のころ入塾を断られるほど頭が悪かったり、陸上部の競技会では2周も差をつけられるくらい運動神経がダメだったりと、「落ちこぼれ」だったんですよね。なので、「私のような人でも、夢を追いかけていけば行きたい道を歩めるんだ」ということがみんなに伝わればいいな、と思い『ものがたりのあるものづくり』を執筆しました。
サッシャ お仕事がお忙しい中、なぜご自身の体験を本にしようと思われたんですか?
山田 日経BPの編集者の方に上記の話をした際に、「そのエピソードは世間に勇気を与えられる」と言われまして。その言葉をきっかけに執筆を決意しました。
また、「服飾の世界から日本の職人が減っている」ということを世の中に知らせたい、という思いもありました。国内で流通している衣料品の中で、日本製の服はたった2.4%しかないんですよ。残りの97.6%は、中国やベトナムやミャンマーなどからの輸入品です。
サッシャ そういう現状の中で、山田さんはどのような「ものづくりに対するこだわり」を持っているのでしょうか?
山田 私は、「ものづくりにおいて一番重要なことは『考えること』だ」と思っているんですよね。中国やベトナムやミャンマーで服が大量に作られている理由は「コストが安いから」です。日本の何十分の一といった安い人件費で服を作ることができます。
そんな中で私たちがやるべきことは、「どれだけ考えて価値を生み出すか」ということだと思うんです。
これはフランス留学中に知ったことなのですが、フランスで最も平均所得が高い地域はパリではなくシャンパーニュ地方なんです。この地域には、シャンパンを製造するメゾンがたくさんあり、作ったシャンパンは大半がフランス国内で消費されているので、所得の安定性も高いんですね。
日本の場合は、地方に行けば行くほどものが安く買えるというイメージが強くありますよね。でも、私は日本もシャンパーニュ地方のシャンパンのように、「値段は高いが、しっかりとした価値がある」というものづくりをしていくべきだと思うんです。
現在、私たちは北海道から沖縄まで55個の工場と提携しているのですが、「値段が上がってもいいから、どれだけ高い価値を作れるかを考えてほしい」というコミュニケーションをとっています。
サッシャ 確かに、今の市場って「いかに安くものを売るか」という流れにありますよね。
ものを安く提供することで買ってもらうわけではなく、「高いお金を出してでも買いたいものを提供する」という方向にどうやって変えていくか。そう考えていかないかぎり、日本経済は元気になっていかないんじゃないか、ということですかね。
山田 技術が発展したために、ファストの商品でも90点、もしかしたら100点の品質の商品が作れるようになりました。だからこそ、私たちは、1000点の品質を持つ商品を作っていく必要があるのではと思っています。

永久交換保証ソックス

山田 ファクトリエでは、今年の4月に白いコットンパンツを発売しました。白いパンツって醤油やミートソースをこぼしたりして汚しがちですよね。汚れが目立つから雨の日には履かなかったりすると思います。
そこで、醤油もワインもミートソースも、雨の日の泥汚れすらも全部はじくことができる、白いコットンパンツを作ったんです。岡山にある、昔ながらの技術を使って加工したことで実現したパンツでして、世界でもまれな技術として特許申請をしました。
サッシャ 技術の進歩とインターネットの登場によって、そこそこ良いものはどこでも製造可能になってきたからこそ、ということですね。
山田 日本でしかできない価値のあるものを作るということが大切じゃないかと思うんです。
日本のものづくりの持ち味としてもう一つ、「長く使えるものを作る」という点があったと思うのですが、私たちは穴が空いたら交換しますという、永久交換保証ソックスを売ったりもしています。耐久性に自信があるので、交換保証ができるんです。
寺岡 では、一度買えばずっと使えるわけですか?
山田 穴が空いたら交換しますので、一生使えるかもしれませんね。
サッシャ すぐに注文します(笑)。
山田 商品の摩耗検査は通常、「1000回やれば大丈夫」と言われています。私たちはその摩耗検査を30000回繰り返して、それでもやぶれないということを実証しました。なので、このソックスを5本持っておけば月曜日から金曜日まで、仕事用のソックスはもう一生買わなくていい、ということになるかもしれません。
このソックスの値段は1900円と、靴下としては少し高価な商品だと思います。しかし、長く使えるといったような高い価値を作っていくことで、1900円のソックスでも多くの方に買っていただけるわけです。
サッシャ 元来、日本のものづくりはそうでしたよね。日本車も壊れにくいのが売りだったり。
山田 着物もそうでしたよね。
サッシャ 私たちがものを買うときに、単に値段だけでなく、どういう観点で選ぶかという点が問われているのかもしれないですね。
寺岡 「いつか起業してみたい」と夢みている若者にメッセージをいただけますか?
山田 私は本当に落ちこぼれだったので、実は起業したくて起業したわけではないんですよね。「日本から世界ブランドを作る」ということを夢みたのですが、もしもそういう目標を掲げている会社があったら、私はそこに入っていたと思います。
なので、まずは熱中できることを見つけることが重要だと伝えたいですね。起業は、入社や転職と同じ手段のひとつだと思うんです。なにか熱中できることが見つかったら、そこで勇気を持って一歩を踏み出してほしいです。
サッシャ 人それぞれ得意不得意や役割もありますからね。みんなが起業したら従業員がいなくなっちゃいますし、自分に合う道を選ぶというのは大事だと思います。なぜ、自分自身がその行動を選んでいるのか、その理由を考えるということでしょうか。
山田 おっしゃるとおりです。そこが一番、熱量として重要だと思います。

今回のニュースをはじめとした山田さんのコメントは、ぜひ以下からチェックしてみてください。
11月15日は、akippa 代表の金谷 元気さんが出演予定です。こちらもお楽しみください。

【番組概要】
放送局: J-WAVE 81.3FM
番組タイトル: AMERICAN EXPRESS  PICK ONE
ナビゲーター: サッシャ、寺岡歩美(sugar me)
放送日時: 毎週月~木曜日11:00~11:20(ワイドプログラム『STEP ONE』内)
提供:アメリカン・エキスプレス
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