前代未聞の大移動。中米からアメリカをめざす7000人超の集団移民

2018/10/27

自然発生した「移民キャラバン」

夜が明けて間もなく、中央広場に現れた町長が状況を確認した。
その前日、メキシコ南部の町ウイストラに数千人の移民がなだれ込んだ。大半は徒歩でやって来た。家族連れの姿もある。町の地味な商業地区は、広大な臨時キャンプ場になった。
人々は広場を埋め尽くした。野営音楽堂も歩道も、商店の前にも、ダンボールや毛布、ピクニックシート、手持ちの服が敷き詰められた。
「まさに聖書のような光景だ」と、フリオ・ラウル・ガルシア・マルケス(43)は言う。彼はグアテマラから妻と1歳の息子、いとこを連れて来た。前の晩は広場に敷いたダンボールの上で眠った。
メキシコ南部の町ウイストラにたどり着いた「移民キャラバン」(Luis Antonio Rojas/The New York Times)
メキシコ革命の英雄、ベヌスティアーノ・カランサの胸像にジーンズが2本、干してある。周辺のゴミ箱はゴミの山に埋もれている。
しかし、町長のホセ・ルイス・ラパラ・カルデロンは陽気だ。
「ここにいる人々は、自分たちの国の貧困から逃げてきた。彼らは働き手だ。爆弾を抱えているわけじゃない。生活を向上させたいと思っている」
「できるかぎり彼らを歓迎して、気持ちよくこの町を通過してもらいたい」
(Luis Antonio Rojas/The New York Times)

7000人超の大移動

移民の大集団──キャラバン──が10月13日に中米のホンジュラスを出発し、北上を始めてからこの日で12日目。その人数は増え続け、グアテマラを通ってメキシコに入り、雪崩のようにアメリカ国境に迫りつつある。