さらば終身雇用、「就活新時代」を勝ち抜く3つのポイント

2018/10/22

2020年卒の就活も前倒しが加速

就活ルールを廃止する──。
経団連は2021年卒の就活から、面接の解禁時期などを定めた就活ルールの策定をやめると発表した。
2018年9月19日の「UBカンファレンス」に登壇した経団連の中西宏明会長。「社会基盤が根本的に変わる中、それを真正面から捉えて、新しい価値観を作る時代です。そんな中、採用をみんなで一斉にやっていくのは、おかしいと発言したのです」と語った。
(写真:遠藤素子)
もっとも、就活ルールの廃止は2021年卒からが対象で、2020年卒は2019年3月にエントリー受け付けが開始、6月から選考開始というルールは変わらない。
だが就活生が注目すべきは、2020年卒の就職活動も「就活ルール廃止」の影響を受ける可能性が高いということだ。
その影響の1つは、2020年卒の採用選考のルールを守らない企業が続出するかもしれないこと。
新卒採用の動向に詳しいリンクアンドモチベーション EM-EASTカンパニー長の高嶋大生氏は、「どうせなくなるルールだと、表向きはルールを守っているふりをしていた企業が、堂々と内々定の前倒しをすることが想定できる」と語る。
だからこそ、2020年卒の就活は先手必勝と言える。もっとも、NPユーザーの就活生は、この点では心配ないと言えそうだ。
詳しくは第1話で述べるが、この10月にNewsPicksのユーザーである就活生に緊急アンケートを行ったところ、63.8%がすでに就職活動を開始していることが分かった。
一般的な学生は、10月の時点では就活生の3割程度しか就活を開始していないから(内閣府「学生の就職・採用活動開始時期等 に関する調査」より)、NPユーザー就活生が早めに就活を始めていることは、大きな優位性と言える。

日本型雇用の終わりの始まり

2020年卒の就活生が意識すべき2つ目のポイントは、経団連の「就活ルール廃止宣言」により、定年まで雇用を保証する「終身雇用」や、 勤続年数に伴い役職や賃金を決める「年功序列」など日本固有の雇用慣行を、根本から見直す動きが日増しに高まっていることだ。
これまでの日本企業は、「メンバーシップ型」と言われ、新卒一括採用により、担当させる仕事を予め決めずに人を採用し、会社の都合で仕事を割り当てていく雇用システムを採用してきた。
しかし、企業間のグローバル競争が進む一方で、少子化による内需の減少が懸念される中、企業は今、国籍や性別を超えた多様な人材をいかに雇用できるかが問われ始めている。
そこへいくと、職種や勤務地、勤務時間を自由に選べない「メンバーシップ型」では、優秀な人材が採用しにくい。
よって、仕事に対して、人を割り当てる欧米流の「ジョブ型」という雇用スタイルを取り入れる会社が増えている。
実際、意外に知られていないことだが、日本でもすでに働く人の中で「新卒採用の生え抜き組」ばかりがメインストリームとは言えなくなっている。
厚生労働省の統計によると、今、新規に職を得ている入職者のうち、44%が転職者だ。
中途採用とは、一般的に何らかの職能を持ち、その職能を生かした部署に配属されることが最初から決定している「ジョブ型」の雇用スタイルだ。
ということは、日本の雇用状況はすでに、「ジョブ型」に移行しつつあるということだ。新卒採用でも、職種別採用やコース別採用が増えているのは、その証左と言えるだろう。

人生100年時代の就活術

また、企業の平均寿命は23.5年(東京商工リサーチ)と言われる中、人の平均寿命は延び「いま20歳の人は100歳以上まで生きる確率が半分以上ある」(リンダ・グラットン著『ライフ・シフト』より抜粋)時代だ。
政府は今、定年後の継続雇用を65歳からさらに延ばす議論を進めているが、仮にそれが70歳、75歳となったとしても、現実的に新卒で入った会社に50年い続けるというシナリオは書きにくい。
加えて、テクノロジーの進展により、多くの企業は、何で利益を出すのかという、「稼ぐ力(ビジネスモデル)」の変更を余儀なくされている。
例えば、メガバンクは今、ITと金融が融合する「フィンテック」時代に突入。
これを受け、みずほ銀行では「みずほらしくない人に会いたい。」というキャッチフレーズで採用活動を展開、前例踏襲型の銀行員はいらない、というメッセージを打ち出した。
三井住友銀行も、採用HPのトップ画面で「かつては銀行と呼ばれていた、そんな未来がもうそこまでやってきているのかもしれません」と宣言、「新しいかたち」を作る人材を求めることを示唆している。
三井住友銀行採用HPトップ画面より
こうした動きを、就活生はどう読み取るべきか?
リクルートキャリアの就職みらい研究所所長の増本全氏は、「これまでの日本の会社は、会社に忠誠を誓い、会社に自身のキャリアを委ねる人間が評価されたのに対し、現在は会社の言いなりになるのではなく、自ら学び、自分を成長させる人材を求めています」と語る。

会社と結婚するな、職能と結婚せよ

では、2020年卒の就活生は、どのような就活戦略を立てるべきか?
それは、先が読めない時代だからこそ、現在の会社のステイタスを重視するのではなく、来たるべき「人材流動化時代」を意識して、自分の市場価値が高まる仕事や会社を選ぶべき、ということではないか。それが3つ目の「就活新時代」を勝ち抜くポイントだ。
本特集では、その具体的な戦略を練る上で役に立つ、現在の日本をリードする論客陣による、就活アドバイスやキャリア戦略の立て方、はたまた、今後伸びる業界や会社について、リポートしてゆく。
特集1回目は、「2020年卒、就活白書」を完全図解でお届けする。
NewsPicks編集部では、NPユーザーの就活生(2020年卒大学3年生、大学院1年生)を対象に、2018年10月、緊急インターネット調査を敢行。そのアンケート結果を掲載するとともに、就職事情に詳しい専門家から得た、すぐに役立つ就活アドバイスを掲載する。
これを見れば、見えない自分のライバルが、どこまで就活を進めているかがわかるはずだ。
特集2回目は、P&Gの世界本社のブランドマネジャー出身でUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)の業績をV字回復させたことで有名な伝説のマーケター、森岡毅氏が登場。これからの時代のキャリア作りの秘訣について、じっくりと語ってもらった。
森岡氏は、これからは「会社と結婚するのではなく、職能と結婚せよ」と言う。また、就活で「大吉を引こうと思うな」と語る。これらの発言が意味するところとは? 先行き不透明な時代を生き抜く金言が散りばめられたインタビューだ。
特集3回目と4回目は、ベストセラー『転職の思考法』の著者である北野唯我氏と、同じくベストセラー『テクノロジーはすべてを塗り替える産業地図』の著者である泉田良輔氏の対談を掲載する。
テーマはずばり、「市場価値を高める会社の選び方」だ。そもそも個人の市場価値とは何で決定するのか? そして、それを高めるための産業と仕事を選ぶ極意とは?について2人の議論が白熱する。4回目は、昨年の「人気企業ランキング」のベスト20企業の将来性について、また、これから有望な産業とそうではない産業について、本音をズバリ、語ってもらった。
特集5回目は、元リクルートのフェローで教育改革実践家の藤原和博氏に聞いた、「人生100年時代の就活術」を図解で掲載する。
藤原氏によると昭和と平成を生きる世代は、人生においてキャリアの頂上を1つ作り、後は下るだけという「富士山型一山主義」で生きられた。だが、人生100年時代を生きる今の就活世代は、人生においてキャリアの山をいくつも作らなくてはいけない「八ヶ岳連峰主義」で行く必要があると言う。
では、そんな時代を生き抜く上で、必要なキャリア戦略とは何か?
特集6回目と7回目、8回目は、NewsPicksの就活特集で毎年人気が高い、各界で活躍する人が考えた「今、22歳だったら行きたい会社」を3回連続で掲載する。
ライザップの瀬戸健社長、ミレニアル世代に人気の動画サービス「ONE MEDIA」社長の明石ガクト氏、そしてボストン・コンサルティング・グループから財務省に転じた官僚の片岡修平氏、さらに、「報道ステーション」を卒業し、Abemaprimeのキャスターに挑戦中の、テレビ朝日小川彩佳アナウンサーという多彩な顔ぶれが選ぶファーストキャリアとは?
特集の最後9回目には、コンサルティング会社経営共創基盤の代表でパナソニックや東京電力の社外取締役も務める冨山和彦氏が登場。「さよなら、日本型サラリーマン」というテーマの講演録を掲載する。
特集全体を通じて、先行き不安な未来をサバイブするためのファーストキャリアの創り方のヒントが満載だ。
(執筆:佐藤留美、デザイン:九喜洋介、バナービジュアル:片山亜弥)