【小笹芳央】創業以来の危機を乗り越えた「サバイバルプラン」
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永らく好景気が続いていますが、そろそろ不況が来る可能性もあります。
リーマンショックをリンクアンドモチベーション社長室マネジャーとして経営者の間近で経験したことは、私のその後の仕事観に大きな影響を及ぼしています。
それまで「成長期」という会社経営のA面しか見たことのなかった私にとって、「再生期」というある意味、会社経営のB面を見た時期でした。
経営者である小笹がリクルートでバブル崩壊を経験していたこともあり、多くの競合企業がいなくなっていく中でリンクアンドモチベーションは何とか生き延びることができました。
ただ、今思い出せば、こうしておけば良かったという後悔も沢山あります。
その後悔をこの10年間、1日たりとも忘れたことはないつもりです。
不況が来る前からの財務的対応(キャッシュの確保)、営業的対応(顧客ポートフォリオの戦略的構築)、商品的対応(契約期間の長期化)、組織的対応(報酬の変動費化)などの事前対応が重要だと思っています。
しかし、それ以上に重要なのが、会社と社員の間に真の意味でのエンゲージメントを作っておくことです。
会社の成長に甘えて、「事業が成長しているから」「仕事の機会があるから」「沢山の報酬がもらえるから」みたいな理由だけで社員が働いていたら、不況時は優秀な人材からいなくなります。
会社が生き残ったとしても、会社の未来を担う人材がいなくなれば立ち直るのは非常に遅くなります。
一方で、リーマンショック時は中途半端なプレイヤーは全て消えましたし、M &Aもしやすくなるなど、マーケットを獲るチャンスでもあります。
経営力の本質的な差が表出するのが不況だと思います。このサバイバルプランの真っ只中に在職していました。リーマンショックによる不況とその後の変化は、私の社会人生活の原体験の一つです。あの時の悲しさや悔しさは二度と忘れることはないです。
会社や個人の努力ではどうにもならないことが起きうることは頭ではわかっていましたが、10-20年スパンの経験があって初めて実感を伴って理解できるものです。若いスタートアップもそういった大きな社会変動を超えていけるかが試されていると思います。リーマンショック時の業績後退は、その後の約10年間で行ってきた
①事業セグメントの多角化
②収益モデルの変更
に繋がっていきます。
①は、景気感応度の低いスクールビジネスや公教育ビジネスの獲得。
②は、モチベーションクラウドのようなサブスクリプションモデルのプロダクトの展開。
当時のサバイバルプランは、経営者として非常に苦しい選択だったことと思います。その反省と、同じ状況を回避したいという執念が、このおよそ10年の歩みに繋がっているのかもしれません。