【インタビュー】村上春樹、文章を語る
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村上春樹の小説を読んだ時、いつも奇妙な読後感におそわれます。つい先ほどまで読んでいたのにストーリーがあまりよく思い出せないのです。これ何かに似ているなと思ったら夢から覚めた時の感覚でした。
夢の機能はまだよく分からないことが多いですが、記憶の定着のほかに一説には心の痛みを修復する作用があるとされています。
とかく村上春樹の小説は現実逃避的と揶揄されますが、情報量が膨大化し睡眠不足が叫ばれる現代、都市の寓話を元になされるある種のセラピーとして世界中で売れるのだとしたら合点がいきます。
今回のインタビューでは「夢」についての向き合い方について御本人も極めて自覚的なんだなと知れて良かったです。村上春樹の著作は、9年後の、時代の雰囲気をつくります。
●『羊をめぐる冒険』 1982年 現実から距離をおく立場(デタッチメント)
●『ノルウェイの森』 1987年 社会的・道徳的規範から自由になり、男女観、家庭観が変容
●『ねじまき鳥クロニクル』 1995年 歴史的現実に小説をとおして関わる(コミットメント) ライブドアショックをはじめとした体制変革の動き、東日本大震災をきっかけとした日本再生へのコミットメント
●『海辺のカフカ』 2002年 未来的現実に小説をとおして関わる
●『1Q84』 2009―2010年 ひとつの現実から、多次元的現実観へのシフト。
村上氏のいう危険な場所とは、人類の深層意識の、深い部分であり、それを優れた小説家は書き換える力をもっています。こうした確信犯的革命を、静かに行っているのが、村上春樹だと思っています。"ノルウェイの森"が僕に小説の楽しさを教えてくれました。
何かを失うことの恐怖もセットでしたが、それはずっと心に刻まれています。
■ノルウェイの森 から 引用
・「私のことを覚えていてほしいの。私が存在し、こうしてあなたのとなりにいたことをずっと覚えていてくれる?」
・どのような真理をもってしても愛するものを亡くした哀しみを癒すことはできないのだ。どのような真理も、どのような誠実さも、どのような強さも、どのような優しさも、その哀しみを癒すことはできないのだ。我々はその哀しみを哀しみ抜いて、そこから何かを学びとることしかできないし、そしてその学びとった何かも、次にやってくる予期せぬ哀しみに対しては何の役にも立たないのだ。