億万長者が続出。あなたが知らない「YouTuber」の全て

2018/10/15
YouTuberが「ペヤング」を救う
それはまさに、奇跡的な復活劇だった。
遡ること4年。カップ麺のペヤングを販売しているまるか食品は、窮地に立たされていた。
2014年12月、ペヤング内に虫が混入されていたことが発覚。ショッキングな画像はSNS上で急速にシェアされ、まるか食品は数十万個ものペヤングの廃棄と、出荷停止を余儀なくされた。
(写真:泉秀一)
食品企業にとって、看板商品への異物混入は、経営に致命的なダメージを与える一大事だ。一度、商品のイメージが悪化してしまえば、それを取り戻すのには膨大な時間とコストがかかってしまう。
業界内の誰もが、まるか食品は、長らく売り上げ減少が続く「冬の時代」に苦しむと考えていた。
しかし、こうした予想とは正反対に、2015年6月の販売再開以降、ペヤングは順調に売り上げを回復。2018年3月期の売上高は、出荷停止前の10%増にのぼり、まるで事件があったことが嘘かのような実績を残している。
なぜペヤングは復活できたのか。
もちろん、まるか食品が、工場スタッフの再教育や新たな設備の導入など、経営努力を重ねたのは言うまでもない。ただし、復活の最大の原動力となったのは、まるか食品の社長でも、親しい取引先でもなかった。
YouTuber。
グーグル傘下の動画プラットフォーム「YouTube」に動画を投稿して生計を立てる、クリエイターたちだ。
きっかけは、販売開始直後から、ペヤング好きのトップYouTuberたちが早食いや大食い動画を自主的にアップし始めたことだった。
こうした大食い動画が、YouTubeの主な視聴層である中高生の間で話題に。スーパーマーケットの店頭では、事件の影響を感じさせないほど、ペヤングが順調に売れて無くなっていったという。
死んだはずのペヤングを、YouTuberが蘇らせた──。
今、YouTuberの影響力は、それほどまでに高まっている。
(写真: NurPhoto/GettyImages)
もう「YouTuber」を無視できない
2005年、YouTubeは米国の西海岸で誕生した。
今や世界91カ国、19億人が使う動画プラットフォームは、3人のPayPal初期メンバーによって設立された。
まだ動画の共有方法が、Eメールへの添付程度しかない時代。誰でも手軽に動画を投稿、閲覧できるYouTubeは、瞬く間に世界で利用者を増やしていった。
ただ、サービス開始当初はまだ一般ユーザーがハンディカムで撮影した映像が投稿される「趣味」の場として認識されていた。
転機は2007年。YouTubeが、視聴回数の多い動画をアップするユーザーに広告費を支払う「パートナープログラム」を開始したことに始まる。
お金が稼げる仕組みが構築されたことで、動画投稿は趣味から「ビジネス」になった。そして、それを生業とするYouTuberが誕生したのだ。
バラエティ、料理、美容…。
YouTuberは、自分で撮影・編集したコンテンツを毎日のようにアップ。熱烈なファンたちによって動画の視聴回数は数百万回にのぼるものもあり、莫大な広告収入を獲得している。
そしてトップ層の年収は、今や芸能人に勝るとも劣らない。
トップYouTuberの年収は実に18億円。10億円超えのプレイヤーも続出し、日本の上位層も5億円は軽く超えると言われる。
トップYouTuberのDanTDM氏は、年間18億円稼ぐと言われる(写真:David M. Benett/Getty Images)
中には1度の動画投稿で1500万を稼ぎ出す者もいると言うから、驚きだ。
そして、お金が集まるところには、必ずビジネスの機会も眠っている。
強力なインフルエンサーたちの力にあやかろうと、うまくYouTuberを活用する企業も目立ち始めている。
冒頭で紹介したまるか食品は、「激辛ペヤング」や「超大盛りペヤング」など、YouTube上で話題になりそうな商品を開発。
ロッテやタカラトミーといった、若年層を顧客にもつ企業も、続々とYouTuberとのコラボを始めている。
「YouTuberを使った広告は細かいターゲティングが可能で、費用対効果が高い。そのため、食品やゲームなどターゲットが若い企業の広告費は、テレビからYouTubeにどんどん流れていっています」(CAヤングラボ 須田瞬海CEO)
もうYouTuberは、若者だけが熱狂する、「ただのお調子者」たちではない。ビジネスパーソンは決して無視できない、デジタル時代の必須知識なのだ。
トップYouTuberの「裏側」
NewsPicksは、そんな知られざるYouTuberの生態を物語にしてつづってゆく。
第1話では、約3万人と言われるYouTuberの中から、絶対に押さえておきたいトップ10組を紹介する。
老若男女が楽しめるオールラウンダーや女子中高生のアイドルなど、多彩な顔ぶれが揃っており、読むだけで若者の最新トレンドに詳しくなれるはずだ。
YouTubeの基礎情報や億万長者を生み出すビジネスモデルと合わせて、読み進めていってほしい。
【完全解説】これが最強の「インフルエンサー」10組だ
第2話では、キングコングの梶原雄太氏に登場してもらう。
お笑い芸人として、お茶の間を賑わしてきた梶原氏は10月1日、YouTuberへの転身を発表。2019年末までに目標を達成できなかった場合、「芸人引退」を約束し、本気でYouTuber活動に注力すると宣言した。
なぜ梶原氏はYouTubeに人生をかけるのか。芸能界からYouTubeはどう見えているのか。テレビの世界で生きてきたからこそ語れる本音を、お届けする。
【キンコン梶原】僕がYouTuberに「芸人引退」をかける理由
第3話は、動画を見るだけでは知ることのできない、人気YouTuberの裏側を紹介したい。その語り部は、タブーなしの破天荒YouTuber、ジョーブログだ。
ジョーブログは、2017年にAbemaTVが企画した「亀田興毅に勝ったら1000万円」に参戦し、亀田本人とガチンコで打ち合ったことでも知られる。
YouTuberは、普段どんな生活を送り、どれだけの年収を稼いでいるのか。気になる実態を、包み隠さず全て語ってくれた。
【独占】破天荒YouTuber「年収・生活・ヤラセ」を全て語る
特集の後半では、「YouTubeの次」を狙って登場してきた新しい動画メディアについても取り上げていく。
今、中高生の間で爆発的に流行っているのが、中国発のショート動画アプリ「TikTok」だ。
なぜTikTokが流行るのか。どうすればバズらせることができるのか。YouTuberとしても活躍し、 TikTokでは国内2位のフォロワー数を誇る現役女子高生のねおちゃんに、若者のリアルを聞いた。
【新潮流】トップ女子高生が語る「TikTok」が流行る3つの理由
今あなたは、「YouTuberは自分には関係ない」と思っているかもしれない。
しかし、この特集を読み終わった時、おそらくYouTuberがぐっと身近な存在になっているはずだ。そして、その知識はきっとあなたのビジネスにも役立つだろう。
(執筆:泉秀一、デザイン:星野美緒)