【現地発】アリペイを発明した、時価総額16兆円企業の「正体」
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モバイルペイメント普及の鍵として偽札とかクレカとか色々言われますが、AlipayとWechat Payの普及戦略を見比べるのが非常に面白いです。
Alipayは非常に計画的で
・元々ECタオバオのエスクローサービスだったため、ユーザもいたし信頼もあった。
・Alipay上にお金を置くと高金利でお金が貯まる(ユエバオの仕組み)ようになり、みんなお金をAlipay上に置くようになる。
・その上でモバイルペイメント化するとき、都市集中型でバーコードリーダー配りまくった。(モデムを無料で配った孫さんの戦略に近い)
という流れが、普及プロセスの1つの鍵。あとはユーザがモバイルアプリダウンロードすればすぐ街中で使えるようになる。「どうやって利用障壁を下げるか」は非常に重要なポイント。
その他、Alipay自体のモデルについては以下に詳しいです。
https://newspicks.com/news/3304632/
対してWechat Pay普及のポイントは、なんとバイラル。元来コミュニケーションアプリなので、個人間送金においてより多く使われますが、大きく広まったきっかけの1つが、紅包(ホンバオ)という「お年玉機能」です。
中国は会社の忘年会で、紅い包みにお金を入れて、社員や部下に「今年もお疲れ」と言って配る文化があります。Wechat Payはこれをアプリ上でできるようにしてゲーム性を加えました。
例えば500元を5人にあげる、と設定してグループチャットに投げると、早い者勝ちで5名がお金をもらえて、しかも金額はくじ引き的にランダム配当されます。
忘年会で、会社のグループチャット内でこの紅包ゲームが始まると大盛り上がり。逆にWechat Payを持ってないと遊びに参加できない上にお金が手に入らず損をする。
これによって一気に利用者が増えたと言われています。
さらに面白いのはAnt financialの、おなじみ「芝麻信用(ジーマクレジット)」。Wechat Payの追撃で2017年にはペイメントのシェアでAliが負けるのでは、と言われていたところ、「Alipay経由で支払えば芝麻信用のスコアに影響する」ため、高額支払いは皆Alipay経由になりました。結果2017も、シェアの割合は変わらず。
事例研究の宝庫です。(コメント長っ)本家アリババを食うほど、強烈な注目を浴びているのが、金融関連会社であるアントフィナンシャルです。その時価総額は16兆円で、FTが「ゴールドマン・サックスよりもでかい巨人」として紹介した、世界最大のフィンテック企業です。
日本ではモバイル決済のアリペイの「現象」ばかり注目されますが、本質はデータによって新しい「信用のカタチ」を続々とサービスにしていることです。AIが全自動で融資するマイクロローンなどは、その典型例でしょう。
中国に行って、モバイル決済をすると、それがいかに自分の行動を「丸裸」にするかが骨身にしみてわかります。そうして集まった8億人以上の信頼データが、時価総額16兆円の源泉。
今後もウオッチしたい、非常に面白い企業です。記事では書いていませんが、個人の信頼スコア「胡麻信用」を開発したのもアントです。エスクローサービスとして始まったアリペイが、海外取引に使われ、公共料金の支払いに使われ、アプリ化され、QRコードでのスマホ決済サービスになり、そこからマイクロ融資やマイクロ投資や信用スコアなどをサービスに組み込んでスマホ上でのプラットフォームにまで発展していく。
そのサービスが、WeChatが生み出していったエコシステムと同様、革新的なものであるのは疑いようがなく、「中国はもはや欧米のコピーキャットではない」というイメージの大きなきっかけになっていったのがこのAlipayとWeChatかと思います。
アントフィナンシャルの行く末を考えるときに、サービスとしてももちろんその革新性は刮目すべきですが、経営としてもこの企業がどうなっていくかも興味深く、やはりebayとPayPalのことを想起してしまいます。
ebayがPayPalを買収したのが2002年。PayPalの成長は親であるebayをしのいで加速し、Braintreeやvenmoなども飲み込み、最終的にはPayPalは2015年にebayからスピンオフし、今ではebayの時価総額(約3.5兆円)を大きく上回って10兆円を超えるレベルに。
すでに時価総額16兆円にも至るというアリババにとってのアントフィナンシャルは、果たしてebayとPayPalとの関係のように、親をはるかに超えて成長するモンスター企業になっていくのか。その革新的なサービスと同様、要注視ですね。