【堀江×田端】ライブドア事件から12年。今だから語れる「あの頃」の二人
サントリー | NewsPicks Brand Design
2018/10/9
2006年のライブドア事件から12年。当時はライブドアの社長だった堀江貴文氏と、ライブドアニュースの責任者を務めていた田端信太郎氏。あの時、二人はお互いのことをどう見ていたのか。お互いに「大人」になった今だからこそ言えることとは――。「大人ダカラ」を片手に、今、語り合う。
トクホの「大人ダカラ」で乾杯
堀江・田端 乾杯―。
田端 あ、思ったよりさっぱりしてますね。甘すぎない。
堀江 普段、トクホって飲む?
田端 僕は「特茶」飲んでます。体脂肪のことは気になるので。あ、これぜんぜんサントリーさんへの忖度じゃないですよ。
堀江さんは?
堀江 俺は、正直あんまり意識しないけど、これは普通にうまいからいいよね。
田端氏の採用面接
――「大人ダカラ」の発売に合わせて、今日は、大人になった今だからお話しできることを語っていただきます。
田端さんがライブドアに入社されたのは2005年4月ですが、お二人が初めて顔を合わせた際のことは覚えてらっしゃいます?
田端 はい。リクルート時代、一緒に「R25」の仕事をしていた先輩が、僕より半年ぐらい前にライブドアに入社されてるんですよ。で、その先輩に「今度、堀江さんが採用面接するから、おまえちょっと来い」と。
当時、すでに堀江さんは有名人。僕もミーハーだからあまり深く考えずに行ったんですけど、堀江さんの面接って10分ぐらいで終わりましたよね?
堀江 うん、たぶん。
田端 だから拍子抜けしちゃって。何を話したかほとんど覚えてないですけど。
堀江 俺も覚えてない。ただ、「ようやくウチもいい人材が入ってくる会社になったな」とは思った。
田端 ありがとうございます(笑)。
堀江 採用は苦労してたんだよ。1996年4月にオン・ザ・エッジ(ライブドアの前身)を立ち上げて、最初の3、4年でどうにか優秀なエンジニアは採れるようになってきたんだけど、営業系の層がずっと薄くて。創業8年目ぐらいでやっといい人材がそろい始めたから、感慨深い。
田端 あの時期に入ってきた人って、リクルートのOBみたいに結構いろんな業界で活躍してますね。
会社にネガティブなニュースもトップに
──田端さんがライブドアに入社されて約9カ月後にライブドア事件が発生。その前後で社内はどうなっていたんですか?
堀江 田端くんは、ライブドアニュースに俺を取材させたりしてたよね。
田端 その頃から、堀江さんはライブドアの社長なんだけど、国政選挙の候補者でもあるし、別に社長だからって「ホリエモン万歳!」みたいな記事ばかり掲載しても仕方ないと思いまして。
僕はライブドアニュースの責任者として、会社にとってネガティブなニュースでも中立にトップに取り上げるという選択をしました。
ただ、ライブドアの株価が急落して、怒った株主からは「なんでおまえのとこのポータルサイトはまた株価が下がるようなネガティブなニュースばかりあげてるんだ!」と言われました。
堀江 まあそうなるよね。
流入数10倍でもサーバーを守り切る
──堀江さんは、社員のみなさんにはどんなことをおっしゃったんですか?
堀江 いや、それどころじゃなかったですね。
田端 ほぼすべてのテレビ局がヘリコプターから堀江さんの乗った車を中継してたんですよ。あのときライブドアニュースへの流入が増えて、普段の10倍ぐらいになったと思います。
堀江さんはそれどころじゃなかったかもしれないですけど、こういうときにサーバーを落とすと「やっぱりライブドアは大したことない」って言われちゃう。僕らはサーバーを落とさないようにと必死でした。
テレビ中継を横目に「なんとかして乗り切るぞ!」みたいな感じでした。普段通りにトピックの更新をするのが、ライブドアニュースの責任者としてのプライドでしたね。
全力で走るからスルーパスが受けられる
堀江 ライブドアのポータルサイトは、いろんな企画を考えてたよね。とにかくやれることは全部試してみるっていうスタンスだったし。だからこそ、当たった瞬間にドカンと行けるんだよね。
こないだ、ある人からいい言葉を聞いてさ。サッカーは、「ゴールに向かって全速力で走っていれば、どこからスルーパスが飛んできても合わせられる」と。逆にいえば一生懸命に走ってないとスルーパスを受けることができないということ。
そういう意味ではライブドアは前を向いて走ってたし、当時やってたいろんな試みが、田端くんはLINEで花開いたね。
堀江 ライブドア事件のあと、本当に悲惨だったんだよ。あのチームを失ったのが結構大変で。やっぱりチームビルディングが一番大変だし、望んでいた人材も集まってきたタイミングだったじゃない。それまで積み重ねてきたことがようやく日の目を見つつあった頃だったから。
サラリーマンにも自由はある
──お二人の立場を比較すると、堀江さんが起業家である一方、田端さんは一貫してサラリーマンであり続けていますよね。そのスタンスの違いを、お互いにどう見られていますか?
田端 僕の場合は、自分の名前で仕事ができる「ブランド人になれ」って言ってます。「ブランド人であれば、サラリーマンであっても会社に縛られずに自由に生きている感覚がありますね。会社の歯車になってきたなと思ったら、転職してますし。
サラリーマンかどうかはどうでもよくて、そこでワクワクすることができるかどうかで判断して、チャレンジし続けている感じです。
堀江 俺は、逆にサラリーマンのほうに歩み寄ってる気がする。俺も会社を辞めて身軽になったじゃない?
田端 はい。
堀江 確かに心地いいんだけど、できなくなったこともいくつかあって。例えば大量の人と金を動かすことはなかなか難しいんだよね。
でも、それもいろんな会社の名刺を持って活動すれば可能なんだと気づき始めた。
要は、俺は「社会がこういうふうになるといいよね」といつも考えてるけど、それを自分の資金と自分が雇ってる人材を使って実現させる必要はない。人の会社の名刺を持たせてもらうほうが、楽だなと。
田端 社会がそうなればいいのであって、そこに自分のオーナーシップはなくてもいい?
堀江 うん、結論としては。
田端 まあそういうことも、ライブドア事件から10年以上経った今だからこそ言えるんでしょうね。
堀江 いろいろありましたね。
田端 いろいろありましたよ。
(取材、文:須藤輝 撮影:稲垣純也 デザイン:九喜洋介 編集:久川桃子)
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