LGの8K有機EL、さらなる高精細化への課題は?
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注目のコメント
結構面白い。Kyuluxへの出資の背景なども言及している良記事。
(以下本文抜粋)
テレビ用有機ELが今後も8Kラインアップを拡大していくなかで、最も高いハードルになるのがパネル構造だ。スマートフォン用の小型有機ELは、有機ELを駆動する配線層が発光層の下にあるトップエミッション(TE)構造を採用しているが、テレビ用有機ELは発光層の上に配線層があるボトムエミッション(BE)構造を採っている。このBE構造は、配線層が光の透過の妨げになるため、高精細化で画素数が増えれば増えるほど開口率が落ち、パネルサイズが小さくなればなるほど画面が暗くなってしまうという課題がある。
有機ELパネルの構造 有機ELパネルの構造 LGDは今回、88インチで8K化を実現した。これが実現できただけでも大変な技術革新だが、BE構造のまま70インチ台あるいは70インチ以下で8Kを実現できるかは、まだ不透明だ。あるテレビ技術者は「BE構造のまま、これ以下のサイズで8Kを実現するのは相当難しい。WOLEDのままTE構造にする、あるいは蒸着をインクジェット(IJ)プロセスに変更してTE構造にする選択肢も考えられるが、いずれにしても開口率が上がらないため、偏光板を無くすことが前提条件になる」と語り、構造そのものを見直す必要に迫られる可能性を指摘する。
発光層の構造がプロセス変更の障壁
パネル構造や製造プロセスを根本から変更するのは難しい。その理由の1つが、冒頭に述べた青色発光層の2層化を採用している点にある。WOLED層は、この青色発光層を含め、赤色や黄色、緑色の発光層を合計で3層スタックし、その中間に電子の輸送層などを積み重ねた複雑な構造をしている。これらはすべてオープンマスクの蒸着プロセスで形成する必要があり、現在のIJ成膜プロセスではスタック構造を形成するのが極めて難しい。IJ成膜プロセスは、テレビ用有機ELの製造コストを引き下げる可能性がある唯一の成膜プロセスとして期待が高いが、現状では蒸着による発光層のスタック構造が量産適用を阻んでいるといえる。