高橋祥子が選ぶ、生命科学を読み解くための10冊

2018/9/29
9月20日に発売されたNewsPicks Magazine vol.2「ニューエリートの必読書500」。17人の専門家が分野別の必読書を選定しましたが、本記事では、ジーンクエスト代表・高橋祥子氏が語った「生命科学を読む解くための書籍10選」を抜粋して掲載します。

生命科学の知識は汎用性が高い

「生命科学」は生命の謎を明らかにして、 それを活用していく学問です。私はこの生命の仕組みを学ぶことで、個人や組織の課題を解決する力が高まるという持論を唱えています。
生命の仕組みに則った大局的な視点で物事を捉えると、それまで近視眼的に見ていた世界が変わり、生きやすくなるのです。
私は医師だった父の影響もあり、幼い頃から生命に関心を持っていました。ただ、病気の治療だけでなく、予防なども含めた幅広い観点から生命に携わりたいと考えて、生命科学の研究の道に進みました。
高橋祥子(たかはし・しょうこ)/1988年大阪府生まれ。 2010年京都大学農学部卒業後、東京大学 大学院に移り、農学生命科学研究科博士 課程在籍中の13年にジーンクエストを設立。 個人向けに病気のリスクや体質など遺伝子 情報を伝えるゲノム解析サービスや創薬支 援事業を行う。18年からユーグレナの執行 役員。著書に『ゲノム解析は「私」の世界を どう変えるのか?』がある。
そして、大学院の博士課程在籍中に、ゲノム解析のベンチャーを起業。研究成果を生かした事業を行うことで、結果的に研究が加速し、進化するというシナジー効果をもたらす仕組みをつくりたいという思いがありました。
しかし、私の挑戦に対して「なぜ新しいことをわざわざやるのですか」と変化を望まない人たちからいろいろな反発を受け、時には苛立ち、不安を抱えることもありました。
そんな葛藤の中で生命の仕組みに思いを馳せると、すべての人が急進的な考えを持つことは人類にとって危険であり、多様な考えがあるのは当然のことだと思えました。
こうした生命視点や人類視点は、 研究や事業に限らず、仕事や生き方にも生かせます。
生命科学の世界は、急速に発展し続けています。今日わからないことが、明日にはわかっているかもしれない。そこには、私たちの想像を超えるような可能性が秘められています。
一方、社会に出た一般のビジネスパーソンが生命科学を学べる機会はほとんどなく、とても残念に思っています。この機会に生命科学の世界に触れ、理解を深めていただきたいですね。

初心者が手に取るべき入門の書

まず、生命科学の入門書として挙げたいのが 、生物学者・福岡伸一先生の『生物と無生物のあいだ』と『動的平衡』のシリーズです。
私がプライベートで主宰している読書会でも、お薦めの書として紹介しました。生命科学に縁のなかった人でも、面白く読めると思います。