【最終話・真山 仁】田中角栄とロッキード事件に挑む

2018/10/8
今年は小説家デビューして15年目ですが、1つ大きな挑戦をしています。
『週刊文春』で、田中角栄とロッキード事件を題材にしたノンフィクションの連載を始めました。このテーマは書き尽くされているので、あえて小説ではなく、ノンフィクションで書かなければいけないと思って覚悟を決めたのですが、やってみると小説の何倍も大変です。
フィクションと違い、裏をきちんと取らなければいけませんが、40年以上前の事件ですから、取材対象者の7割ほどが鬼籍に入っています。思うように取材が進みません。
膨大な資料を集めたり整理したりも必要で、たくさんの人に手伝ってもらっていますが、当たり前ですが、書くのは私1人です。たくさんの情報を頭の中で整理し、事実からそれることなく組み立てていくのは、小説とは異なるパワーが必要です。
しかも、読者は書かれていることが事実だから読んでくれるわけではなく、面白くなければ読んでくれません。

ロッキード事件を掘る理由

なぜいま1970年代のロッキード事件を取り上げたのか。それは、そもそも田中角栄という人間をきちんと理解したいということから始まりました。
角栄をテーマにするなら当然ロッキード事件だろうという発想です。また、今の世の中の状況が、田中角栄がロッキード事件で逮捕された1970年代によく似ていることもあります。