【堀江貴文×ゆうこす】日本人はなぜ予防医療にお金をかけないの?

2018/10/7
思春期特有の症状のことも
堀江 新しいワクチンが出たときには、どの国でも必ず副反応が問題になるんですよ。
でも、ワクチンが開発されたのは、その病気で亡くなる人を社会全体で減らすことが目的なわけだから、そのためには多少のリスクを取ることになる。
それが公衆衛生の考え方なので、副反応の問題が起こった場合は、医師や政治家が科学的根拠を示して、毅然とした対応を取らなければいけない。なのに、日本政府はそれをしないんですよね。
稲葉 HPVワクチンに関して言えば、副反応だと訴えている人たちの症状は、ワクチンを接種した人と接種していない人の間で、発症率に有意な差がないことが証明されています。
つまり、HPVワクチンを接種していなくても、副反応だとされるような症状が起こることがあるということです。
HPVワクチンの定期接種の対象となっているのは、多感な思春期の女子なので、例えば、学校や部活動の人間関係に悩んだときなどにも、HPVワクチンの副反応だとされるような症状が出ることがあるんです。
小児科の医師たちは実際に、そういう子をたくさん診ているといいます。データとしてもそれが示されているんですけど、厚労省の対応は、依然として変わらないままなんですよね。
堀江さんが先ほど、公衆衛生のお話をされましたが、ワクチンの接種率が上がってくると、ウイルスの感染率が減ってくるので、ワクチンを接種していない人の感染率も下がってきます。こういう現象を集団免疫効果といいますが、公衆衛生ではとても大切なことです。
堀江 オーストラリアでは、HPVワクチンの接種率が上がったことで、HPVの感染率が大幅に低下しただけでなく、HPVワクチンを接種していない人でも、HPVの感染率が35%減少したというデータもあるんですよね。
稲葉 そうですね。ですのでやはり、HPVワクチンは、国全体で接種を推奨すべきワクチンなんですよね。
ちなみに、HPVワクチンの接種率が約70%だった1994年から99年生まれの人たちと、接種率が1%未満に下がった2000年から03年生まれの人たちでは、2000年から03年生まれの人たちのほうが、子宮頸がんの罹患リスクが上がってきているというデータも示されています。
堀江 ゆうこすは何年生まれ?
ゆうこす 私は1994年生まれです。
稲葉 じゃあ、ぜひ残りの2回も打ちましょう。
堀江 今から2回打っても大丈夫なの?
稲葉 もし1回目の接種からかなり時間が空いているのであれば、3回セットで打つといいと思います。注射嫌いには大変ですけど。
でも、HPVワクチンの接種と定期的な検診で、子宮頸がんの発症は防げますからね。このことを知らない人が多いのは、とても残念なことです。
ゆうこす そうですね。私もですけど、若い女の子たちは特に、知らないですよね。
稲葉 若い女性では、子宮頸がんになって初めて、子宮頸がんという病気のことを知ったという人も多いんです。「せっかく予防できたのに」という思いをしなくて済むように、ぜひ多くの人に、子宮頸がんやHPVワクチンのことを知ってもらいたいですね。
手術には術後のリスクや副作用が
堀江 じゃあ、子宮頸がんについてもう少し、説明してもらいましょうか。子宮頸がんでは、「円錐切除術」という手術をするんですよね?
稲葉 そうですね。子宮の入り口ってちょっと想像しづらいかもしれませんが、ちくわの端のほうを思い浮かべていただいて、その入り口の部分をレーザーやメスで円錐状に切り取るイメージです。
切除するのはほんの1cmくらいで、そのあとに妊娠することも可能です。ただ、子宮の入り口が少し短くなることで、切迫早産になるリスクがあります。
堀江 円錐切除術で切除できない場合は、子宮を全摘出することになる。
稲葉 そうなんです。そうなれば、妊娠・出産もできなくなりますし、がんが進行していてリンパ節まで切除した場合には、リンパ液が足に溜まってむくみが生じるリンパ浮腫になることもあります。
寺田 稲葉先生に以前、リンパ浮腫の方の写真を見せていただいたことがありますけど、かなりパンパンに膨らんでしまうんですよね。
稲葉 そう、皆さんがむくみと聞いて想像するよりもはるかに大変な状態で、例えば、片足だけゾウの足のようになってしまうこともありますね。
寺田 スマホやパソコンで「リンパ浮腫」で検索をすると、画像が出てくるかもしれません。それを見ると、かなり衝撃を受けると思います。
ゆうこす ほんとうですね、この画像とかかなりすごい。
堀江 そうそう、それ、すごいよね。
ゆうこす 私も夕方になるとよく足がむくむんですけど、そういう次元のむくみ方じゃないですね。
稲葉 そうなんですよ。子宮頸がんは早期で見つかれば治る確率の高い病気ではあるんですけど、やっぱり手術は受けないほうがいいですよね。
ゆうこす はい、受けないほうがいいです。私やっぱり、横になった状態で、ワクチンを打ってもらいます。
稲葉 はい、ぜひ。
男性もHPVワクチン接種を
堀江 それからあともう1つ、HPVの種類についても知っておいてほしいですね。
実はHPV、ヒトパピローマウイルスには100以上の種類があるんですよ。日本ではそのうちの4種類、HPV 6、11、16、18型の感染を防ぐ2種類のワクチンがあるんですよね。
稲葉 そうですね。1つが「サーバリックス」というワクチンで、こちらは主に子宮頸がんを引き起こす16、18型の感染を予防します(HPV2価)。もう1つが「ガーダシル」で、サーバリックスの16、18型に加えて、尖圭コンジローマを引き起こす6、11型も予防します(HPV4価)。
堀江 ほかの種類のHPVにもがん化のリスクはあるものの、この4つの型をカバーしておけば、子宮頸がんを起こすウイルスの感染は、70%程度予防できるんですよ。
ゆうこす 国は率先して接種を勧めるのをやめてしまったということですけど、また積極的に勧めるように戻らないんでしょうか?
稲葉 戻したいですよね。
堀江 戻したい。戻したくて、僕たちはこういう活動をしているんですよ。
例えば、今回のイベントに参加してくれるような人たちは、もともと健康に対する意識が高いので、ワクチンを受けたほうがいいよっていう話を知っていたり、実際に受けようと思ってくれたりする人もする。だけど結局、ほとんどの人たちは、国が積極的に勧めない限り、動かないですからね。
稲葉 国が積極的に勧めていないワクチンを接種するのは、勇気がいりますよね。
堀江 そう。それで、子どもがワクチンを打ちたいと言っても、親がとめるケースもあるし。でも、子宮頸がんになる人は、毎年3万人いるんですよ。毎年3万人だから、実際の患者さんはもっといるわけで。
ゆうこす うちの親も反対派ですね。私がHPVワクチンを打ったときに倒れてしまったので、妹は1度も打っていないんですよ。
稲葉 じゃあ、姉妹で打ちましょう。
ゆうこす 姉妹で打ちます。
堀江 3回の注射の恐怖と、そのあとにがんになる恐怖と、どっちを取るかっていう話ですよね。がんにならないことのほうが多いから、みんな自分は大丈夫だって思っているけど、なんの根拠もないですからね。
稲葉 はい、なんの根拠もないですね。
堀江 そう、なんの根拠もないんです。だって稲葉先生は実際、そうやって自分は大丈夫だって思っていた人たちが、がんになってしまったケースをたくさん見てきていますからね。だから僕も、ガーダシルを接種したんですよ。
寺田 HPVワクチンは、男性も打てるそうですね。
堀江 前編で稲葉先生が、HPVは男女問わず発症する中咽頭がんの原因になると話してくれていましたけど、それはオーラルセックスでうつるんですよ。
舌がんもそうですよね。つまり、性行為でうつるから、男性にもリスクはあるわけです。それに、パートナーに感染させるリスクもある。なので、僕は男性も打ったほうがいいと思っていて。
稲葉 アメリカやカナダなどでは、男性にもHPVワクチンの接種を勧めています。男性に接種を推奨している国は、20カ国くらいありますね。
堀江 さっき話した理屈を考えれば、男性も打ったほうがいいことはわかりますよね。
稲葉 打ったほうがいいですね。先ほどお話しした公衆衛生的な観点からしても、男女ともに感染するリスクがあるので、男女問わず打っておいたほうがいいです。
ゆうこす 私、妹と、弟もいるんです。
稲葉 3人きょうだいなんですね。じゃあ、きょうだい揃って接種しにいきましょう。
堀江 HPVワクチンの接種率が1%未満って、これは本当にひどい数字なんですよ。僕らがこうやって声を上げたところで、それが何パーセントも増えるとは思えない。
でも、少しずつでも「打ったほうがいいよ」っていう雰囲気づくりをして、政治も動かしていかないと、いつまでたっても同じような問題を繰り返すことになると思うんですよね。
胃がんの原因になるピロリ菌の場合も、検査をしたほうがいいよって言っても、なかなみんな受けないけれど、衛生状態が改善されたことで、感染者は自然に減っていくはずです。でも、HPVはむしろ、増えていきますからね。
稲葉 増えていきますね。実際に増えていますし。
堀江 ネットとスマホが普及して、出会いの機会が多くなっているから、より多くの人とセックスする機会が増えていきますよね。だからきっと、HPVの感染率はもっと上がるといわれています。
稲葉 HPVワクチンを接種していない日本では、ですね。本当に恥ずかしい、悲しいことです。
国民皆保険の功罪
堀江 ついでにもう1つ話しておくと、大腸がんも予防できるんですよ。