[東京 13日 ロイター] - 住友金属鉱山 <5713.T>の野崎明社長は13日、ロイターとのインタビューで、電気自動車(EV)向けの電池材料事業はパナソニック <6752.T>とトヨタ自動車 <7203.T>向けに事業を行っており「それ以外のことは考える段階にない」と述べた。パナソニックが電池を供給している米EV大手テスラ<TSLA.O>の生産も軌道に乗ってきており、住友鉱の正極材料工場も「フルキャパシティー」で対応している状況だ。

同社は、パナソニックに対し、テスラ向けのリチウムイオン二次電池に使われる正極材料ニッケル酸リチウム(NCA)を供給している。過去数年間に積極的な投資を行い、

14年には850トンだった月間生産能力(訂正)は、年末までには、約5倍の4550トンに拡大する予定。

テスラの「モデル3」は、当初掲げていた週5000台の生産目標を半年遅れとなる6月最終週にほぼ達成。野崎社長は「さらに上積みして生産しているとも聞いている。生産・販売は軌道に乗ってきているとみている」と述べた。テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が非上場化を検討しているとツイートしたことなどによる一連の混乱については、住友鉱のNCA事業に「何か影響があるかというと、全くない」と述べた。

次の投資については「パナソニックと相談しながらになる」とした。

このほか、トヨタに向けてもハイブリッド車に搭載される二次電池の正極材料を供給している。野崎社長は「電池材料はコモディティーではなく、カスタムメイド。変化する電池材料に対応していくには、客とタイアップしてやるしかない。先を見据えたり、外を見据えての投資は今のところ考えていない」と述べ、当面は、2社の要請に応じる形での事業展開を続ける。

<貿易摩擦、需給悪化につながること懸念>

激化している米中貿易摩擦の影響について、野崎社長は「今のところ聞いていない」とした。ただ、「経済の減退懸念が実体経済に影響すること。実体経済に影響すると需給が悪化する」と述べ、銅やニッケルなどの非鉄需要が堅調な中国や新興国で景気が腰折れることを懸念として挙げた。

同社は同社は電池材料を中心とする下流の材料事業のほか、上流の資源事業と中流の製錬事業が3本柱。資源分野では、同社が31.5%を出資しているチリ共和国での銅鉱山「シエラゴルダ」の生産が今年度は昨年度比5%増の10万2000トンになるとの見通しで「稼働率や実収率は計画値に近付いている」という。

一方、金については、2017年に権益を取得したカナダのコテ金鉱山開発プロジェクトの事業化調査を年内にも終える考え。

ニッケル製錬事業については、インドネシアのポマラに新しい製錬所を建設するプロジェクトでPTヴァーレインドネシアと事業化調査を実施中だが、事業化を決めた場合でも、インフラ整備が必要になるため、実現までには3―4年以上かかるとの見通しを示した。野崎社長は「HPAL(高圧硫酸浸出)という技術は当社が強い技術。技術を出す以上は、マジョリティーでやる」と述べ、事業化を決めた場合、製錬所の(出資比率)の過半数を取りたいとの意向を示した。

*2段落目の年間生産能力を月間生産能力に訂正します。

(大林優香 清水律子)