グリー田中良和、失敗と成功をすべて語る

2018/11/3
インターネットで世の中を変える側に回りたい
私が社会人として仕事をする時代に何が変化し、どんなイノベーションが起きるか。新年度に配られる教科書を3日間で読み切り、考えていました。
20歳までに人生の目標を決めて、社会人になったら何か世の中を変えることに関わってみたいと考える子だったんです。
私にとってのその答えが、「インターネットの登場」でした。
学生時代に衝撃を受けた本と言葉
中学生のときに1冊の書物に出会います。世の中を変えていくタイミングが、まさに今始まろうとしている、これだ、と思いました。
Netscapeに出資したジョン・ドーア氏 という有名なベンチャーキャピタリスト(VC)のインタビューにも衝撃を受けました。
ゲーム、マンガ、映画にハマらせてくれた両親に感謝
私の両親は、ある意味でまったく教育熱心ではないんです。
両親が私の興味を尊重してくれたおかげで、興味のあるものにすごく執着したり、興味の湧いたものは片っ端から調べたりするような気質・体質に今、なっている。
だって、一日中ゲームをしていても、怒られませんでしたから。
ネットの世界で働くため、仲間づくりに励む
何とかしてインターネットの世界で働きたい。そう思い詰め、自分なりに必死に努力していた大学時代でした。
後に一緒にグリーを起業することになる山岸広太郎くんや、mixi(ミクシィ)を起業した笠原健治くん、インターネット広告などを手掛けるフリンジ81を起業した田中弦くん。
ネットエイジの取締役だった、現eastventurersの松山大河さん、メルカリを創業した山田進太郎さんとも、その時代からみんな知り合いでした。
三木谷さんの「答え」に感激して楽天に転職
三木谷さんに、「なんで自ら起業してこの会社をやっているんですか?」と聞きました。
一橋大学を卒業して、米ハーバード大学でMBA(経営学修士)を取得して、日本興業銀行という大銀行で働いていて、この先どうなるかわからないインターネットの会社を興す人なんてほぼいませんでしたから。
私の素朴な質問に三木谷さんは答えてくれました。
趣味のGREEと本業が両立できず、やむなく起業
個人で少しずつ始めていたGREEを、一般のユーザーに広く公開したのが2004年2月。すぐに、サービスを提供するためのサーバー代が月20万ぐらいかかるようになりました。
手取り25万円ぐらいで家賃7万円の部屋に住んでいましたから、生計が持たない。
3年後に社会はどうなる? 「2つの仮説」にたどり着く
ユーザーから見れば、mixiにも楽天にもあるのに、なぜGREEに「あしあと」機能が無いのですか?と聞かれていたのですが、結局それは資金力の差。
こんなちょっとしたシンプルな機能1つでも、資金力や組織力がなければ、いいサービスは作れないことを痛感しました。
「3つの仮説」からソーシャルゲームしかないと確信
モバイルの爆発的成長という仮説、モバイル特化SNSという仮説、この2つの仮説で、KDDIと組んでモバイルSNSの本格参入を決めました。
次は、なぜモバイルSNSのコンセプトを「ゲーム+SNS」にしたのかをお話したいと思います。
創業以来最大の失敗、海外事業をどう立て直すか
2011年から撤退までの約6年間で、買収や月次の営業損失を合計すると、為替にもよりますが、累計で約300~400億円の損失となり、グリーの歴史上、最大の損失、まさに大失敗でした。
グリーにとって海外は引き続き重要なマーケットです。私は、海外事業の戦略の立て直しに取り組むことにして、2つの仮説を考えました。
コンプガチャが社会問題化して考えたこと
国内では市場の拡大と共に順調に業績を伸ばしてきましたが、その急激な市場拡大が大きな社会とのギャップを生み出し、ソーシャルゲームに対しての強い批判とコンプガチャの社会問題化に直面しました。
苦渋の決断。業績低迷で希望退職を募る
国内事業も2013年ごろから不振に陥ってきました。
スマートフォンが普及していくなかで、ネイティブゲームでのヒットタイトルが生まれないことが原因でした。大規模に100億ほど投資していくつものネイティブゲームを開発していたのですが、どれも上手くいかず、2013年に約100億の減損を発表するに至りました。
国内事業の立て直すには、2つのことをやる必要がありました。
ゲーム好きだけが面白いゲームを作れる
グリーをどういう組織にしたいのか、どういう人に集まってほしいのか。
新入社員の採用面接で、美大に通う女性の学生に面接する機会がありました。「学校でどういう絵を描いているの?」と聞くと、「こういう絵を描いています」と。「週末は何しているの?」と聞くと、「好きな絵を描いています」と答える。
要するに彼女は、365日ほぼ絵を描いていることになる。どれだけ好きなんだと思いました。
が、振り返ってみれば、自分も同じです。
社長の仕事に正解なし。「ものづくりの社長」目指す
「ものづくりの社長」が、目指すべきスタイルだと強く思うようになりました。
『パズル&ドラゴンズ(パズドラ)』や『モンスターストライク』のような特大のヒット作が一つできるかできないかで、会社の経営は180度変わるし、ネットサービスでいえば、メルカリやLINEを作れれば、会社の将来から何からすべてが変わるわけです。
人が言う成功は「星の輝き」のようなもの
3つ目に注力しているライブエンターテインメント事業は、新たにVTuberと言われる、リアルタイムに動くCG版ユーチューバーに大きな可能性を感じている事業です。
誰もがなりたい自分で生きられる新時代のサービスです。
ゲームで世界をより良くできるのか
グリーでは、「インターネットを通じて、世界をより良くする。」というミッションを掲げています。
もう十分インターネットは普及していて、これ以上何か変わるんですか?と聞かれるのですが、私からすると、まだまだ新しい時代は始まったばかりだと思っています──。
(予告編構成:上田真緒、本編構成:織田 篤、撮影:竹井俊晴、デザイン:今村 徹)