【NPマガジン】人生の必読書500冊。ビル・ゲイツ、佐渡島庸平

2018/9/20
ニューエリートの必読書500 
NewsPicks Magazineの第2号が本日9月20日に発売。全国の書店、セブンイレブン、ローソン、アマゾンなどで販売を開始します。
今回の特集は「ニューエリートの必読書500」です。さまざまな分野の専門家やイノベーターが推薦する必読書500冊を一挙紹介します。
海外編では読書家として知られるビル・ゲイツが薦める120冊をはじめ、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスクといった世界のイノベーター10人が読む書籍をリストアップしました。
ハーバード、スタンフォード、イェールなど米国トップ10大学の学生が読む課題図書も掲載しています。3位はマキアヴェッリの『君主論』、2位はホッブズの『リヴァイアサン』、1位は?
佐渡島庸平「文学」
日本編では17人の専門家による分野別の必読書を紹介しています。
落合陽一さんはテクノロジー、高橋祥子さんは生命科学、安田洋祐さんは経済学、そして佐渡島庸平さんは文学です。
佐渡島さんは「NewsPicksの読者は、すぐわかるものを読みたがる」けれども、「読んでもすぐにはわからない」ことが重要だと語り、27冊の推薦書を挙げています。その本文をここに掲載します。
小説はわからないからいい
「小説なんて役に立たないものを読むのはムダだ。そんなヒマがあったらスキルアップのための本を読みたい」。そんなふうに思う人もいるかもしれません。
僕は小説を読むか読まないかは、その人がどういうふうに生きたいかによると思います。自分の人生がどんな人生だったのかを振り返るとき、一生でいくら稼いだのかというようなことで自分の人生を語れる人は、小説を読まなくてもいいと思う。
でも自分の人生とは何だったのか、数字だけでは語れないと考える人は、小説を読むといいのではないかと思います。
現代はIoTなどでさまざまなものが可視化されつつある時代です。心拍数や体温などをデータ分析することで、その人が感じている理解度や集中力、好感度までわかるといわれている。
しかし小説家という人種は、常に言葉によってすら言語化でき得ないものを「物語」という全体として伝えようという試みをしている。だからこそ、「読んでもすぐにはわからない」ということが重要だと思うんです。
NewsPicksの読者は、すぐわかるものを読みたがる。読むと仕事のやる気が出る本も好きですよね。でもそのやる気はたぶん1日で消えてしまう。要するにテンションを上げる本なんです。
テンションを上げるだけなら音楽を聴いた方がいい。小説家は役に立つとか立たないとか、そういう思いでは小説を書いていない人が大半です。
教養は役に立たない。役に立たないんだけれども、雑学と教養の差は何なのかというと、教養は最終的に構造化することができる。雑学も役に立たないという点では同じです。
でも雑学って、どんどん突き進んでいくと袋小路に入ってしまうような知識です。教養はどんどん突き進んでいくと、他の学問とつながっていく。山登りと同じで、どのルートを登っていっても最後は同じ頂上に着くように、天文学も物理学も登っていくと最後は同じところに行き着く。
ただ、そういう情報は、あまりネットメディアには落ちていませんよね。だからNewsPicksに載っている記事というのは、サプリであり、栄養ドリンクなんです。
人生を通して持ち続ける問い
現役の生きている作家の中で、その「言葉で語り得ぬもの」を固まりで伝えようとして、挑戦している人の最高峰が平野啓一郎だと思います。
彼の小説は、とにかく読んでもらわないと魅力が伝わらない。最新作の『ある男』(2018年9月末発売)は特にあらすじが書きづらい。
じゃあ読みづらいのかというと、そんなこともない。
読了後はじわじわと、わかったような、わからないような気持ちになって、その後の人生の中で何度か、「あれはどういう意味だったんだろう」というような問いかけが起きる。それはすごく素晴らしいことだと思うんですよ。
例えば『白鯨』で知られるメルヴィルの『書記バートルビー』は、本当によくわからない不思議な小説です。
書記のバートルビーが何を頼まれても、ただただ、〝I would prefer not to〞(そうしない方がいいと思います。)と仕事を拒否し続けるだけ。しまいには食事をすること自体も断って、緩やかに死んでいく。
その何かを緩やかに拒否して死んでいく姿が何となく心に残るんです。本当に短い掌編ですが、なかなかそれを忘れることができない。
僕は大学時代に初めて読み、2〜3年前にもまた読み、ようやく最近になって、「あっ、あの小説ってこういう意味だったんじゃないかな」という感想が持てるようになった。感想を持てるようになるまで、16年ぐらいかかっているんです。
そもそも僕たちはわからないものについてじっくり考えるという行為自体を、ほとんどしていないと思う。そのためにも、わからないものを読むことが大事です。
今の時代のメインではないにせよ、小説家たちが取り組んでいるのは、語り得ぬものを物語という形式で語ろうとすること。
世の中には技術がないためにわかりにくくなっている物語もあるけれど、そういうものは読まなくてもいい。そうではなくて、簡単に語り得ないけれど、それでも語ろうとしているものにはすごく価値があります。
役に立つことのみじめさ
そんなふうにわからないものを読むわけですから、まずは本の読み方について学んだ方がいいでしょう。そこで、『読んでいない本について堂々と語る方法』『読書について』『本の読み方』『「罪と罰」を読まない』など、いくつか挙げてみました。
本を読むとはどういうことかを本格的に考えるなら、『読んでいない本について堂々と語る方法』がいいでしょうね。その本を読んでいなくても、あたかも読んだかのように語れるようになります。
さて僕がこれから薦める本のうち、何冊を読んでいないか、当ててみてください(笑)。
それから澤野雅樹さんという方の『不毛論』という本があって、この本は帯に、「役に立つことはみじめだ」って書いてあるんですよ。
NewsPicksを読んでいる人たちに、「役に立つ情報を追いかけているのはみじめだ」という感覚を、1回持ってみてほしい。その後で、すぐにはわからないものを読んでいくといいと思います。
『反共感論』という本があります。僕はずっと「コミュニティをつくりたい」とか「共感が大事だ」と言っていますが、この本は「共感という感情はすごく安易な感情だ」と言ってますね。
それでいうとエンターテインメントは共感に訴えかけるけれど、文学は共感に訴えかけるものではない。
今の時代はコンテンツがあふれているから面白くないと読んでもらえませんが、面白くなくても考えるに値する本はたくさんある。
ここで挙げた本は、どれも自分の心の中に長時間とどめて、内省をすることによって本来的な思考力が鍛えられるものばかりです。
それが10年、20年かけて自分を変えていくと考えると、小説というものは本当に人間の血肉になるものだと思いますね。
(佐渡島庸平/コルク 代表)
NewsPicks Magazine 第2号を読書の秋にぜひご活用ください。
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