【直撃】京都のレタス自動化工場が、世界を席巻する日

2018/9/14

高騰する野菜

「今年の夏は暑かった」という感想を抱く人は多いだろう。同時に、「今年の野菜は高かった」と感じた人もいるのではないか。
8月3日、農林水産省が公表した主要な野菜14品目の8月1日時点の卸売価格と8月の価格見通しは、酷暑や西日本豪雨、天候不順の影響によって野菜の高騰を予測。
1日の時点で白菜が平年比2.1倍、キャベツが2倍超を記録し、全14品目のうち10品目の卸売価格が平年より20%以上高くなった。この結果、各地のスーパーでも平年の6割高、7割高という価格がつく野菜も出た。
ちなみに昨年の夏は記録的な冷夏で、日照不足と長雨によってやはり野菜が高騰した。
価格が上がるということは、収穫量が少ないということ。その結果、加工用、外食用野菜の輸入量が激増している。昨年は高値が秋冬まで長引いた結果、今年1月、東京税関の調査によるとキャベツ、白菜、レタスの輸入量が過去最大を記録した。
近年の夏の不安定な気候は、生産者だけでなく、食品加工、外食産業の企業にとってもリスクになっているのだ。
このリスクをチャンスに変えようと、今、様々な企業が「植物工場」に参入している。

黒字化しているのは17%

電子部品商社のバイテックホールディングスは現在4工場を稼働させており、さらに1カ所の稼働を控える。
トヨタ自動車系のプレス部品メーカー、豊田鉄工は、愛知県豊田市で植物工場「アグリカルチャーR&Dセンター」を稼働させた。
三菱ガス化学は、20億円以上を投資して福島県の県営工業団地「工業の森・新白河B工区」に国内最大規模の植物工場を建設中で、2019年に稼働を予定する。
また、関西電力、建材・マテリアルメーカー大手の三協立山など植物工場のプラントシステムの開発、販売を始める企業も相次ぐ。
しかし、このブームがどういう結果を導くのかは、まだ先は見えない。植物工場は「黒字化が難しい」事業として知られるのだ。
「植物工場」という言葉でイメージするLEDなどを使った未来的な「人工光型植物工場」は、2009年に農林水産省と経済産業省が150億円の補助金をつけたのをきっかけに増え始めた。2011年の64カ所から7年で183カ所にまで伸びている。
この間も異業種からの参入が相次いだが、日本施設園芸協会の調査によると、このうち黒字化しているのはわずか17%。
人件費や光熱水費がネックになっているとみられ、東芝など撤退する企業も少なくない。
この厳しい業態のなかで、2013年から黒字化に成功したのが2006年に京都で設立されたベンチャー、スプレッドだ。京都の亀岡市に建てた世界最大規模のプラントで、日産2万1000株のレタスを生産している。