筋ジストロフィーの犬が「ゲノム編集治療」で劇的に回復、人間も…
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今回は難病にも指定されている筋ジストロフィー(デュシェンヌ型:DMD)の犬のモデルをCRISPR/Cas9で “ゲノム編集治療” した報告です。
DMDは記事にもある通り、ジストロフィンという筋細胞膜上にある重要な遺伝子が異常になっていることがわかっている病気で、その遺伝子配列の異常タイプも分類されています。遺伝子が欠けていて短いタイプや、逆に重複して長くなっているタイプ、そして遺伝子が1文字だけ間違ってしまっているタイプなどです。
どのタイプでも正常なジストロフィンが作れないので、今まで正しい遺伝子をごっそり入れてあげようという試みがありました。今回は1文字だけ間違っているタイプなら CRISPR/Cas9 で編集して正常な文字に置き換えて治そうという試みです。
ここで難しいのは、CRISPR/Cas9 の遺伝子編集を生物体内で行おうということです。外に取り出してきたり、培養している細胞に行うなら裸同然ですし、やりようによってはきちんと入った後、色々確かめて戻すことも可能です。
一方、例えば筋肉内に直接治療薬を打つことを考えてみると
1. 目的の細胞のところまで行くのにモノが壊れない
2. 自分の目的の細胞のところにだけいく
3. 自分の目的の細胞のところに行った後にちゃんと細胞内に入れる
4. 目的の細胞の目的の遺伝子のところだけ正確に編集する
という課題を解決しないといけないのです。細胞の近くに入れる(投与経路)のはもちろん
CRISPR/Cas9のハサミなどを細胞内に入れるのにいろんな方法が考えられていて、この1~4を改善するアプローチの研究領域だけでもかなりの競争です。
おわかりのように人間に使用するには課題があります。少しでも目的の場所以外が編集されると危険だからです。(目的外のところを編集してしまうことをオフターゲットと呼びます)大切な遺伝子が逆に書き換えられて他の病気を引き起こしてしまっては元も子もありません。今後この犬のオフターゲットの解析も行われるでしょう。
今回、犬での成績としてかなりの回復具合を見せています 1~4 の課題を犬の中でも実証できたのですからそれ自体はインパクトがあり希望のあるものです。