まだ世にないBtoBソリューションで、「現場」に革命を起こす

2018/9/6
2018年に創業100年を迎えたパナソニックは、次の100年に向けて、大きな変革のまっただ中にある。その役割を担うのが、2017年に誕生したBtoBソリューション事業を展開するコネクティッドソリューションズ社(以下、CNS社)だ。

代表は、ボストンコンサルティング、Apple、マイクロソフトなど、さまざまな企業の代表や会長を経て、古巣であるパナソニックに戻った樋口泰行氏。就任から1年半でさまざまな改革を行ってきた。そのひとつに外部人材の活用がある。

なぜ今、CNS社には外部の力が必要なのか。複数の外資系企業で活躍し、現在はCNS社の役員として樋口改革を支える山中雅恵氏と、19年間、現場でパナソニックを支えている生え抜きの一力知一氏に話を聞いた。

「昭和のおじさんの会社」ではなかった

──日本IBM、マイクロソフト、LIXILと複数の企業を知る山中さんから見て、パナソニックはどのような企業に映りましたか。
山中 入社前に持っていたイメージは、「理系の昭和のおじさんが多い会社」でした(笑)。マイクロソフト時代に上司だった樋口に託されたのは、企業の経営課題を解決するソリューションをつくること。正直、本当にできるのか疑問もありました。
 もちろん、パナソニックは質の高いプロダクトをたくさん持っていることは分かっていましたが、企業の経営課題を解決するには、プロダクトありきではダメです。ビジネスシナリオのなかに、いかにプロダクトを入れ込むか。
 家電メーカーのイメージの強いパナソニックには、それを設計できるチームが欠落しているのではないかと思っていました。
──実際に入社して、その印象は変わりましたか?
山中 100年の歴史で積み上がった技術力やノウハウ、人材の質は想像以上。「さすがパナソニック。侮れない」と思いましたね。
 入社して社内を歩いているうちに、パナソニックが持つロボティクスやソフトウェアなどのさまざまな技術、現場オペレーションや教育などの独自のノウハウ、100年の間脈々と受け継がれてきたデザインシンキングによるプロダクト開発など、キラキラした素材が山ほどあることに気がついたんです。
 それらをつなげたら、世界中で困っている現場に使えるのではないかと。1+1=2じゃなくて100にできると確信しました。

現場を最適化するサブスクリプションモデル

──具体的にはどのようなソリューションを生み出すのでしょう。
一力 たとえば、10年前と今ではドラッグストアやコンビニ、スーパーマーケットなどは、見た目は変わらないのですが、バックヤードは変わっています。昔は商品の物流は箱単位で納品すれば良かったのが、今は「○○を5個、××を3個」と個単位になっています。
 私たちが普段何げなく選んでいるような飲料や日用品なども、昔に比べるとそのラインアップはかなり豊富です。すべての商品の箱を店舗のバックヤードに置いていたら、スペースがいくらあっても足りません。だから、個単位で細かく配送する必要がでてきました。
山中 ネットスーパーの出現もそうですね。在庫管理の仕組みを変えざるを得ないのに、既存の業務システムでは素早く対応できない。そうなると、“人力”で対応するしかなくなるというわけです。
一力 こうした変化に対応するためには、バックヤードのオペレーション力こそがサービス維持、向上のためには不可欠になります。お客様に見えている部分を「表の競争力」とすると、オペレーションは「裏の競争力」。
 パナソニックの工場では、商品の魅力や競争力(表の競争力)を向上させるための裏の競争力を鍛えることを日常的に行い、カイゼンと呼ばれる現場の最適化を図ってきました。
 しかも、人口減少などでこの先の社会はもっと変化します。その変化に合わせて、企業のオペレーション力の維持と向上に貢献するソリューションやテクノロジーを提供するのは非常に重要であり、CNS社が創る次の100年は、持続可能な社会に貢献することでもあると考えています。
山中 この、現場の最適化を支援する仕組みは、買い取り型ではなく利用料をいただくサブスクリプションモデルで展開します。
 というのも、10年や20年に一度、数億円、数十億円をかけて導入する基幹システムや、導入して終わりとなるような一般的なソリューションでは、変化し続ける現場環境を最適化できないことが多いから。
 パナソニックは国内外に数百の自社工場を持ち、家電や住宅設備を作り続けてきた会社です。製造業として現場を知り尽くしているからこそ、現場を最適化する強みをソリューションに変えたいと考えています。

求めるのは、1→100をスピーディに実現する人材

──パナソニックでは、CNS社の樋口社長をはじめ、元メリルリンチ日本証券の片山栄一氏、元SAPジャパンの馬場渉氏など、外部人材の幹部への登用を行っています。CNS社でも事業を加速するために、即戦力のキャリア採用を拡大すると伺いました。外部人材を登用する理由は何でしょうか。
一力 何より重要なのは多様性。外からの知見はとても大切です。物流現場ひとつをとっても、国や産業による違いは大きい。それらの違いを知る新しい考え方がパナソニックに加わり、パナソニックの強みとの新しいシナジーが生まれたら、いろいろな解決策を提案できるようになるはずです。
 既存社員にとっても、外部からの新しいメンバーとのシナジーにより、お互いに新しい世界に触れてワクワクできると思います。
 だから、求めているのは0→1の人材ではなく、すでにパナソニックにたくさんある1を迅速に100にできる人材です。外から来た人はパナソニックのことをいい意味で知らないので、空気を読まずに、客観的な視点で改革に取り組んでほしいと思っています。
──具体的にはどういった人材が足りていないのでしょうか。
山中 始まったばかりの組織なので、どの部門にも圧倒的に人が足りていません。
 ソリューションセールス・コンサルティングセールスができる人材や、PM(プロジェクトマネジャー)、業務を考えるアプリケーションエンジニア、お客様とプロトタイピングを練りながらのアジャイル開発ができる人材も足りていません。
一力 CNS社は、モノづくりと技術の融合による新しいソリューションビジネス構築に取り組んでいます。ですから、私はモノづくりノウハウで見つけた現場の課題解決を実現するテクノロジーに知見がある人材を熱望しています。
 たとえば、ソフトウェアやクラウドサービスは、全てをパナソニックで開発することはできません。良いものがあれば、それを取り入れたい。そうした技術の目利きができる方には来てもらいたいですね。

大企業ながらベンチャーのように事業をつくる

──最後に、パナソニックで働く意義やダイナミズムについて聞かせてください。
山中 現場プロセスを最適化するソリューションは、手法が確立しきれていません。私たちも手探りの部分があり、ある意味でブルーオーシャン。コモディティ化していないソリューションをこれからつくっていくわけですから、すごく楽しいと思いませんか。
 今は、パナソニックという歴史ある大企業のブランド力や技術力を活用しながら、ベンチャー企業のように新しい事業を作っている面白い局面です。
 この宝物のような経験ができるのは、今だけ。2020年までにビジネスモデルを確立して事業化したいと考えているので、3年後の入社では遅いかもしれません。
 私は長い間、外資系企業で働いてきました。その経験から、いつかは日本のためになることをしたいと思っている人が多いと感じていたんですね。とはいえ、日本企業はプラットフォーマーになるのが得意ではないのも事実。
 では、どこで勝つのか。それは、やはり現場ではないでしょうか。
 パナソニックは現場のお困りごとを解決するソリューションでお客様の現場を支えていきます。そして、いずれはグローバルに展開したい。それが、日本のためにもなるから。そういった思いを持った人と一緒に働けるとうれしいですね。
(取材・文:笹林司、編集:田村朋美、撮影:岡村大輔、デザイン:九喜洋介)
イベントの応募は締め切りました。多数のご応募いただき、ありがとうございました。