GDPR時代。あなたのスマート靴データはこう「資産運用」する

2018/8/29
きっかけは今年3月、米フェイスブックの個人情報流出スキャンダルだった。
「困ったことになった」──。
日本発のハードウェアスタートアップ、no new folk studio (ノーニューフォークスタジオ。以下、nnf)の菊川裕也は頭を抱えていた。
nnfは、歩く、走る、蹴る、跳ねる、踊るといった、あらゆる足の動きから精緻なデータを解析することを可能にする、「スマートシューズ」の開発を手掛ける企業だ。
データをトラッキングするスマートシューズといえば、米ナイキや米アンダーアーマーのようなスポーツ用品大手ですら、「歩数」や「歩行距離」といった単純なデータを測定できる靴を市販している程度だ。
そんな中、足の角度から衝撃まで、個人の「歩き方」の特徴をすべて計算可能とした、世界トップレベルのセンシング技術を持ち、かつ個人が買えるほど低価格に抑えたのが、このnnfなのだ。
今年1月には、米ラスベガスで開催された世界最大の家電見本市「CES」において、ランニングフォームのコーチングや健康状態のアドバイスを行うという、世界初の「スマートシューズ・プラットフォーム」構想を発表したばかり。
さらに今年7月には、アシックスとスマートシューズ共同研究の契約を締結。nnfの靴でだけではなく「すべての靴」をIoTシューズにすることを目指している。
ところが、である。そんな野心的な彼らの取り組みに突如、暗雲が立ち込めたのだ。
というのも、こうした高精度の「歩き方」のデータは、人によって癖があり、個人の特定が可能な「プライバシー情報」でもあるからだ。
スマートシューズに限らず、スマートフォンの普及やIoT機器の進化に伴い、膨大なデータが収集可能になった一方で、個人情報データの取り扱いは、フェイスブックスキャンダル以降、世界中の企業が極めて神経質になっている。
とくに欧州では、いわゆる一般データ保護規則(GDPR)が5月に施行されたことを受けて、データの取り扱いは個人の意志に基づき、個人が決めることができるものとされた。
そうした中、この個人情報データの取り扱いをめぐって、nnfが光明を見出したのは、いかにも“意外”な相手とタッグを組むことだった。
その相手こそ、三菱UFJ信託銀行である。