「ニュースの民主化」でつくる新時代

2018/8/31
ベンチャーからグローバル企業まで幅広いニュースが集まる、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」。2007年にローンチした同サービスは、国内上場企業の約32%が利用するシェアNo.1のサービスへと成長を遂げ、その利用者の増加スピードは現在も加速している。

ITの進化、生活者のニュースの楽しみ方の変化など、時代の流れとともにプレスリリースの可能性をアップデートしてきた同社は、いま、さらなる事業拡大の時を迎えている。

プレスリリースを起点とした情報伝達ツールから、企業・メディア・生活者をつなぐプラットフォームへ。進化のスピードを上げるPR TIMESの今後と、描く世界観について代表の山口拓己氏に伺った。
ニュースの民主化を実現したい
──PR TIMESは地方銀行や地方自治体との連携、スタートアップの情報を発信するメディア「THE BRIDGE」の買収など、プレスリリースを配信するプラットフォームから次のフェーズに進化しようとしています。その背景について教えてください。
山口 もともとプレスリリースは一部の大企業が自社のニュースをマスメディアに取り上げてもらうためにクローズドに発信していたもので、読み物として面白いものではありませんでした。
 それが、ブログやSNSの浸透によって情報がオープンになり「メディアの民主化」が起こり始め、プレスリリースにもコンテンツ性が重視されるようになったんです。
 もう少し具体的にお話ししましょう。これまで、メディアは中央集権的に運営されており、世の中の人が得る情報は、一部の人が決定したものでした。
 それが、ブログが台頭したころから誰でも情報を発信できる「コンテンツの民主化」が起こった。そして単に発信するだけでなく、きちんと届けるためにコンテンツに工夫を凝らすようになりました。
 2010年ごろからはスマホの普及によって、いつでも自分の知りたい情報を検索するのが当たり前になります。そして、フェイスブックやツイッターが浸透し、自分とつながっている人や関心あるトピックを自ら選択できる「情報選択の民主化」が生まれました。
 かつては、伝えたいニュースがあっても、メディアに選ばれないと誰にも伝えられなかったのが、今では誰でも情報を発信でき、受け取る側も検索すれば簡単に情報が手に入るように。
 こうした外部環境の変化によって、PR TIMESも従来の配信代行サービスからパブリックリレーションズのプラットフォームへとシフトしてきた背景があります。
 ただ、最終的に「メディアの民主化」を達成するには、「コンテンツの民主化」と「情報選択の民主化」「ニュースの民主化」の3つの要素が必要ですが、「ニュースの民主化」はまだ実現されていないんですね。
 メディアが玉石混交の情報を取捨選択し、優先順位を決めて、専門的な意見を付加して生活者に届ける客観的な事実には価値があります。一方で、当事者が情熱や想い、物語を自分の言葉で伝える情報もまた、価値がある。
 現在世の中に出回っているニュースは、ごく一部の人に起きたことであり、多くの人にとって向こう側で起きた出来事。自分がニュースの主役になるとは想像もしていません。
 だから、PR TIMESはプレスリリースの裾野を広げ、「自分が主役のニュース」を、自分の言葉で伝える「ニュースの民主化」を実現したいと考えたのです。
 そこで、地域を超えてニュースを発信する新しい行動者を見いだすために、地方銀行や地方自治体、地域のメディアとの提携を進めています。
 PR TIMESを通じて情報発信ができたら、商圏を超えて自分たちの商品に興味を持ってもらえたり、自社の成果を知ってもらえたりする。それは新しい可能性につながると考えています。
地方の次はスポーツへ。行動者の裾野を広げる
──商圏を超えてニュースを発信する新しい行動者は増えていますか?
 最近になって少しずつ増えてきましたが、1年くらいは変化のきっかけをつかめずにいました。というのも、自分の商圏外にニュースを出すのは非効率だから。
 地域にあるお店のニュースを他の地域の人に知ってもらったところで、何が起きるのかを合理的に説明するのが難しかったんです。
 それでも、徐々にPR TIMESで地域を超えてニュースを出す行動者が現れ、それを見て影響を受けた方もニュースを発信するようになった。今はお祭りなどの情報発信も増えて、行動者が生まれたことでニュースの輪が広がりつつあります。
 行動者を増やす取り組みは、スポーツの領域でも始めました。日本では野球やサッカー、バスケットボールなど、一部のスポーツニュースしか出回っていません。主役になれるのは、限られたスポーツの限られたスター選手だけ。
 もしかしたら多くの人が興味を持つかもしれないスポーツのニュースが届いていない、発信されていないのは課題だと考えました。
 だから、さまざまなスポーツで活躍するアスリートやチーム、団体が、PR TIMESを通じて情報発信する文化をつくりたい。自らが主役になり、自分のスポーツを伝えることで、新しいファンや新しいリレーションが生まれる社会にしたいと思っています。
THE BRIDGEを事業譲受した背景
──THE BRIDGEの事業譲受の背景にも、ニュースの民主化があったのでしょうか。
 そうですね。以前から大企業のお客様だけでなく、プレスリリースサービスは中小企業やスタートアップまで裾野を広げたいと思っていました。
 そこで2015年から、国内のスタートアップを中心としたニュースを配信するメディアTHE BRIDGEが開催するイベントに協賛するなど関係を深め、2016年には出資。そして、2018年4月に買収しています。
 スタートアップや起業家がもっと主役になり、日本経済に大きなうねりを起こせるよう、私たちが大きく投資したいと考えています。
つくりたいのは、行動者発の情報が人の心を揺さぶる「時代」
──ニュースの民主化により実現させたいのは、どのような社会でしょうか?
 私たちが掲げるミッションは、「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」です。未来から見ても過去から見ても、PR TIMESの事業を通じて、「その時代をつくった」と言える状態を目指したいと考えています。
 たとえば地方行政には、卓越した成果を上げた人を表彰する取り組みがあるのですが、まったくニュースとして発信されていません。この表彰でスポットが当たるのは、普段なかなか表に出てこないような、水道工事など公共事業に従事する人たち。
 どんな考えで、どのように仕事に取り組み、成果を上げたのかを発信すれば、必ず心を揺さぶられる人はいるはずです。そして、心を揺さぶられた人は、明日からの生活や仕事への取り組み方が変わるかもしれない。
 だから、すべての人の仕事の成果、行動がわかる状態をつくりたいですね。
 仮に、これが日本というローカルな国だけで実現したとしても、時代をつくったとは言えません。従来のプレスリリースのサービスはグローバルで存在するため、世界中で展開できる可能性があります。
 もちろん、日本だけの特異な習慣になるかもしれませんが、実現可能性を確信できたとき、世界で挑戦したいと考えています。
──新しい時代をつくっていくPR TIMES。どんな人と一緒に実現させたいとお考えでしょうか。
 求めているのは、既成概念に縛られず新しい部門や新しい役割を自ら作り出せる人です。PR TIMESは約50人の組織なので、ポジションは自ら作れるフェーズですし、組織も経営体制も柔軟に変えられます。
 だからぜひ、何かしらの高い専門性を持ち、大きな視座でクライアントやユーザーの長期的な利益を追求して、自分の仕事を通じて社会課題を解決しようと志向できる人に、自らの役割を野心的に定義して活躍してもらいたいですね。
 PR TIMESは、ニュースの民主化による新しい時代をつくるためのスタートラインに立ったばかりの会社です。新時代をつくるというゴールを目指して、共に情熱を持って行動できる人をお待ちしています。
(取材・執筆:田村朋美、写真:的野弘路、イラスト:國弘朋佳)