【おざーん独白】一休社員よ、どんどん失敗を重ねなさい

2018/8/10
2016年、1000億円という金額でヤフーは一休を買収した。ヤフーが宿泊施設の直接の窓口を一休に一本化した当時、独自色の強い一休のサービスがヤフーの色に染まってしまうのではないかと懸念されていたが、今の一休は目指すゴールに向かっているのか。

その買収劇に携わったヤフーの常務執行役員、一休社外取締役の小澤隆生氏に今だから話せる買収劇の時の想い、これからの一休への期待など本音を聞いた。(全3回)
一休社員が泣いた、M&Aのあの日
今だから話せますが、当時のヤフーの宮坂(学)社長と一休で「今度、ヤフーという会社が親会社になります」という説明をした時、一休社員の数名の方が泣いていました。
それまでヤフーはトラベル事業を強化すべく頑張っていたのですが、「一休のような独自のポジションを得ている企業とお付き合いしたい」という想いがずっとありました。
買収の数年前から一休の前社長の森(正文)さんにはM&Aの話をずっと打診していたものの、「あり得ない」と一刀両断。それでもご縁があったらいいなと思い続けていたある日、可能性を示唆された時は本当にうれしかった。
買収されると聞いて、運営方針が大きく変わるのでは?と思った一休社員もいたかもしれません。創業者の森・前社長の方針に信頼を厚く持っている方も多かったですし。
100%ポジティブな反応というわけではなかったと思います。
私自身、買われるほうの立場を2回経験してますから、一休社員たちの「今後、どうなってしまうんだろう」という不安は痛いほど伝わってきました。体制が「変わること」へのアレルギーみたいなものもあったと思います。
ただ、ヤフーとしても、無理やり大きな方針を押し付けることはしたくなかった。
ネガティブなインパクトをどれだけ小さくできるかを考えた続けた結果、「今まで通りの方針で、今まで通りの経営陣で運営してください。代表を退いた創業者の森社長の想いはぜひ受け継いでください」と伝えました。
「300人の組織の壁」をどう打開するか
あれからすでに2年半経ちましたが、今、一休には社員たちから絶大な信頼がある榊(淳)社長がいますので問題ないと思っています。
M&Aした場合、通常、親会社から代表を立てることが多いのですが、今回は一休の社員たち、前社長の森さんなどからヒアリングした結果、一番信頼があり、頭脳明晰でデータに強い榊さんを代表にすることにしました。
榊社長はもともと一休のコンサルをしていた方で、「ユーザーファースト」という想いが非常に強い。それにヤフーグループの中を探してもいないぐらい、榊社長は稀有な人材だと感じました。
榊社長に「ぜひ一休の社長を」と話したところ、「自分がやるべきだと思います」とおっしゃってくれて。いろいろ難しい局面もあるかと思いますが、必ず乗り越えてくれると期待しています。
一休には現在、ヤフーから80名程度出向しています。350名を超えた組織作りで奮闘している最中で、俗に言う「300人の壁」にぶちあたっています。
ただ一休のいいところは、組織が非常にフラットなところ。若手やベテラン問わずディスカッションするカルチャーがあり、「自分たちが一休を作り上げているんだ」という意識が強い。
失敗を恐れない猛者、求む!
一休では、こうした「300人の壁」を乗り越えていく仲間として、これからお話しするような人の参加を望んでいます。
例えば、受験を例に説明すると、受験では「問題を解く人」「問題の解き方を教える人」「問題を考える人」がいますよね。ピラミッドで考えると「問題を解く人」が一番多くて、その次に「問題の解き方を教える人」「問題を考える人」になります。
仕事として一番難しいのは「問題を考える人」です。こうやったら解けるかな、こうやったら教えやすいかなということを想定して作らなければいけない。この人が一番難しくて、知的好奇心が満たされる。
経営陣というのは本来「問題を作れる人」なのですが、若手社員でも問題を考えられる人にぜひなってもらいたい。
この事業においてAのソリューションを提供すれば、Bのビジネスは成立するということが分からないと問題は作れませんから、本当に難しいチャレンジなんです。
また、参加してほしいのは失敗を恐れずに「トライできる人」です。
ベースは失敗。その中から成功を見つける
20代前半、私は会社員をやりながらインターネットサービスで起業しました。実家は60億の借金がありましたが、もう額が大き過ぎて実感がなくて(笑)。
20代、30代はトライ&エラーの連続でした。自分が良かれと思ってやってたことも、結局ただの独りよがりだったり。ユーザー目線でやったつもりでも、実はビジネスサイドからの想いが強すぎてお客様に伝わらなかったり。
起業はお金を稼ぎたいという目的もありましたが、自分が作ったサービスで、見ず知らずの何百人、何千人という人に感謝された時は本当にうれしかった。だから今でもインターネットの世界で働いているのかもしれません。
インターネットのサービスに関して言うと、今日、この瞬間がいちばん最悪なんです。なぜなら、新しい機能、新しい考えで運用すれば、次の日は今日よりも良くなるから。
インターネットやサービス業って、改善を積み重ねていかないと進化していかないんです。
ただ、改善しようとして失敗するケースもあります。ただ、変化をさせて失敗というのは「ナイストライ」なんです。一番いけないのはトライしないこと。それは最悪を続けることと同じことです。私が申し上げたいのは、とにかく「トライしよう」と。
ここからは私の持論ですが、大体10個トライして8個か9個は失敗する。世の中そんな甘いものではないのです。
1個か2個、成功したプロダクトやサービスに関して、どこの会社よりも深く早く追い求めることを繰り返すと、よりベストなものが見込めます。
たとえばレストランの料理だって、お客様の前に出すまでには試作品を何個も作るわけですから。
試作の段階での失敗はいっこうに構わない。むしろ、試作しないほうがヤバい。お客様に出す前に失敗作だと思えば、引っ込めればいい。
失敗は、成功のためにどうしても必要なプロセスなんです。「成功するまでやり続けることが成功の秘訣」というマネジメントもいますけど、私は「失敗の中から成功を見つけなさい」と言いたい。
ベースにあるのは「失敗」だと思ってます。
人生最大のトライ&エラー経験と決断の大切さ
これまでの人生でトライ&エラーを一番やったのは、2005年の楽天イーグルスの球団設立の時ですね。
まだ30代前半で、2年ぐらいどこかに閉じ込められていたような感じで記憶がありません。陸上選手が5000mの高地で1カ月走り込んだりするじゃないですか。それを強烈にしたイメージです(笑)。
その仕事がキツ過ぎて、それ以降は大体のことが「まぁ、大丈夫だろう」って思えるようになりました。
プロ野球のチーム作りって、分からないことが多過ぎるんです。それに絶対に開幕までには間に合わせなきゃいけないですし。「できないので延期します」はあり得ないですから。
もう、ほとんどのことが失敗するんですよ。で、いちいち想像を絶するトラブルが1日何回も起きるんです。それをその瞬間、瞬間で対処しないといけない。
やらなければいけないタスクが多すぎて、ここで止まるとほかに影響が出てしまう。「一晩考えます」なんてあり得ませんでした。
この時、思ったのは「決断」することの重要さ。決断しないで「考えます」「検討します」は判断しないことと一緒なんです。よく会議で「ちょっと考えます」と言われると「今、決断しよう」って言いますね。
実は今、あの時よりもっとハードな高地トレーニングしている感じなんです(笑)。この4月から役職が変わって、本当にきついですね。
「謎の義務感」と「やり遂げたい」という想い
いろんな方に「なんで非常に苦しい球団作りを乗り越えられたのか」と聞かれるんですが、1つは「謎の義務感」です。もう1つは純粋に「やり遂げたい」という想い。
人は立派な「志」がないと夢中になれないって思い込みがありますが、それは違うと思います。だってパズルやロールプレイングゲームだって夢中になれるじゃないですか。
もちろん球団作りをゲーム感覚でやったつもりはないですが、人間には「やり遂げたいという謎の情熱」があると思いますよ。
あともう1つ、「自分の仮説が合ってるかを証明したい」という欲が人間にはあると思います。
これはどういうことかと言うと、1000ピースのパズルでは、「ここにハマるかな」と仮説を立てて、そこにハマるとうれしい。その仮説が実際に1000回訪れるんです。2000ピースだと2000回。
つまり何が言いたいかというと、仕事でも短期間で、自分の仮説が証明でき続ける環境を作り出していくと、仕事に夢中になれるということ。
自分がこうなるなということに対して、それがヒットすると脳内からすごく気持ちいい物質が出るような気がします。まぁ、私の中の小澤科学の話ですが(笑)。
一休という会社は、トライ&エラーをいとわない人にとっては「謎の情熱」を注げる会社だと思います。
なぜなら、創業時からのベンチャーマインドは健在だし、たくさんの人に「感謝」されるサービスを追求し続けている会社だからこその好循環が、社員を突き動かす原動力になっている。
ユーザーの方々の「一休のおかげでおいしいものが食べられる」とか「一休のおかげで良い所に泊まれた」といった言葉を社員たちは燃料にしていますよ。
そういう最高のサービスに携わるということで、生きがいを感じられる会社だと思います。
一休が提供している予約事業は、まだまだ成長が残されています。特に飲食の領域はまだまだ大きな成長が見込めます。
ぜひたくさんトライして、たくさん失敗して、その中から1つでも2つでも新しい成功を何か見つけてください。そのためには一休社員のみんなには大いに失敗していただきたいと思います(笑)。
(編集・構成:奈良岡崇子 取材:浦澤修 撮影:大畑陽子 デザイン:九喜洋介)