不動産で勝ちたければ、「次の武蔵小杉」を探せ

2018/7/30
東京・臨海エリアが変わる
「今、一番“アツい”のは、武蔵小杉でも二子玉川でもありません。プロの視線は、別のエリアに注がれています」
ある不動産投資家は、得意げな顔つきでこう打ち明けた。
タワーマンションが続々と建設されている川崎市の武蔵小杉や、楽天が本社を移転したことでも話題になった東京都世田谷区の二子玉川。
これらの街は、都心へのアクセスが良く、ショッピングも便利で、「成功したサラリーマン家庭」の象徴として、住みたい街ランキングの上位にランクインしてきた。
しかし、武蔵小杉は急激な人口増加に対応できず、朝夕のラッシュ時に駅が人でごった返すなど、新たなマンション開発や人気に限界が見え始めている。
高層マンションが立ち並ぶ武蔵小杉(撮影:谷口 健)
こうした中で、この投資家は「不動産の流行は新エリアに移行する」と熱弁する。
その注目エリアとは、東京の臨海エリア(勝どき・晴海・豊洲・有明)だという。
臨海エリアはこれまで、ブランド店が集まる銀座や、ビジネスエリアである新橋や虎ノ門に行くためには、築地市場が邪魔になり、周り道をして車を走らせる必要があった。
ところが、2018年10月に築地市場が豊洲に移転することが決まり、築地と勝どきを結ぶ「築地大橋」、さらに豊洲と晴海を結ぶ「豊洲大橋」が開通する見込みが立った。
これによって、臨海エリアから都心までのアクセスはぐっと向上することになる。
さらに、2019年には、臨海部と都心をつなぐ高速バス(BRT)も運行開始予定で、自動車でなくとも都心まで気軽に足を運べるようになる。
「これから人気エリアは、武蔵小杉や二子玉川などの都心の“西”から、臨海エリアの“東”へ、移り変わるでしょう」
この「予言」が現実のものとなり、臨海エリアの不動産価格が上がれば、すでにこの場所に投資をしている人たちは笑うことになるかもしれない。
築地市場(手前)から「築地大橋」(中央)を抜ければ臨海エリアが一気に近くなる(牧岡 幸太郎/アフロ)
「弱肉強食」の世界
「不動産に興味を持てず勉強しない人は、この世界に入らない方がいいと思います」
『不動産投資 1年目の教科書』などの著作で知られる不動産投資家の玉川陽介氏は、こう断言する。
「不動産市場は好調が続いてきましたが、これからの価格は横ばいで推移するか、下落の可能性すらあります。今から不動産投資を始める人には厳しい市況です」(玉川氏)
自分で労力をかけず、他人の情報だけで投資判断をする人は、誰かにだまされ、大損失を被ってしまうこともある。
実際に今年春、多くのサラリーマン投資家が大金を失う「事件」が発生した。
2018年4月、女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営していた不動産会社のスマートデイズが経営破綻した。
投資家の多くは十分な資産を持っておらず、常識的に考えれば、1億円もの融資を受けられるような立場ではなかったとも言われている。
しかし、スマートデイズの「収入30年保証」や「儲かりますよ」という甘い営業トークに乗せられ、無理筋な投資に手を出してしまった。
かつてスマートデイズの本社があった銀座の雑居ビルは、もぬけの殻となっていた(撮影:谷口 健)
有益な情報を握ったものが笑い、その真偽を見抜けないものはカモにされる──。
「次の武蔵小杉探し」と「かぼちゃの馬車問題」に通底するのは、不動産投資は「情報戦」だということだ。
特に、不動産業界は、企業と顧客の間の情報格差が大きく、「情報の非対称性」が最も高い業界だと言われている。
しかし、インターネットが普及し、かつてよりも情報にアクセスしやすくなった今、「情報の非対称性」は、徐々に解消されつつある。
あなたが、情報の真偽を正確に見分けられる「眼」さえ持っていれば、きっと不動産の「勝ち組」になれるはずだ。
「かぼちゃの馬車」事件の真相
特集「新・不動産の勝ち方」では、情報過多になったインターネット時代の不動産投資のノウハウを提供していく。
まずは、最低限知っておきたい基本的な知識を解説した上で、最新の「情報」について、さまざまな角度からお届けする。
特集の第1回では、「かぼちゃの馬車問題」の真相をお届けする。
シェアハウスに投資をした3人のサラリーマン投資家は、いかにして投資を決断し、1億円の損失を被ってしまったのか──。
失意の中の3人に集まってもらい、スマートデイズとの出会いから、スルガ銀行の不可解な融資条件や資産の改ざん、そして現在の心境まで、余すところなく語ってもらった。
「そんな失敗は自分には関係ない」と思っている人でも、彼らの座談会を一読すると、きっと不動産投資の恐ろしさを実感できるに違いない。
【匿名座談会】借金は1億円。「かぼちゃの馬車」で人生が狂った男たち
不動産業界で、最も“煙たがられる”男──。第2回は、事故物件情報サイトを運営する、大島てる氏のインタビューを掲載する。
アパートやマンションの一室で殺人や自殺があっても、それを隠蔽するために、一時的に社員を住まわせ、不動産情報から「事故物件」という事実を削除する業者もいると言われる。
大島氏は、そうした業界の状況に危惧を抱き、2005年から13年間、事故物件の記録を蓄積してきた。
大島氏は、いかにして情報を収集しているのか。そしてなぜ事故物件を調べ続けるのかについて、じっくりと語ってもらった。
【大島てる】不動産業界の“闇”を暴く「裏ウィキペディア」を作った男
そして第3回では、不動産投資で最も重要な基礎情報を、分かりやすく図解する。
不動産業界にはさまざまなプレイヤーがいる。誰がどんな意図を持って、ビジネスを行っているのかを知ることは、持ち家の購入や投資を考える時に役立つはずだ。
また同時に、業界を取り巻くマクロデータなどの情報もお届けしたい。空き家率や人口予測、マンション価格を含め、不動産業界が置かれている現状を、包み隠さずデータとイラストで「見える化」する。
【超図解】知識ゼロから学ぶ、不動産業界の「基本・仕組み・これから」
「賃貸か持ち家か」
特集の後半では、誰もが考える「おなじみのテーマ」についても、切り込んでいきたい。
住宅について議論をすると決まって話題になるのが「賃貸か持ち家か」というテーマだ。
答えは千差万別だが、本特集では1つの答えを導き出したい。
語り部は、星野リゾートの星野佳路代表だ。星野リゾートは、基本的に自社でホテルや旅館を所有せず、あくまでも運営に特化するビジネスモデルで、日本の観光業界を刷新し続けている。
ビジネスでは「持たない」星野代表は、「賃貸vs持ち家」の“神学論争”に対して、どんな持論を持っているのか。
星野リゾートのビジネスと合わせて語ってもらった。
【星野佳路】「賃貸vs持ち家」論争。私の答えを明かそう
不動産業界はどこかきな臭い──。そう感じている人もいるだろうし、不動産業界で働く人自身がそれを自覚している。ただ、その一方で、不動産は「衣食住」という人生で最も重要な根幹の1つでもある。
本特集が、不動産投資や住居をしっかり理解し、考える助けとなれば幸いだ。
(執筆:谷口 健、編集:泉秀一、デザイン:星野美緒)