【真山 仁】『ハゲタカ』主人公・鷲津の人間性を描かなかった意図

2018/9/30
2004年にデビュー作『ハゲタカ』を出しましたが、私は続編を書くことを決めていました。紆余(うよ)曲折を経て、2006年に『バイアウト』(『ハゲタカ2』に改題)を出したあと、思いがけずNHKからドラマ化の話がきたのです。
2007年に『ハゲタカ』『ハゲタカ2』を原作とする土曜ドラマとして放送されると話題となり、翌年にはシリーズ3作目となる『レッドゾーン』を原作とした映画も公開されました。
そして今年(2018年)は7月にテレビ朝日で再びドラマ化、シリーズ第5作『シンドローム』も発売しました。
私が『ハゲタカ』で描きたかったのは、金融の話でも経済の話でもありません。お金に対する人間の欲望に勝てず、振り回されるという物語です。
主人公である鷲津政彦は企業買収者で、「アンチヒーロー」として設定しました。つまり、誰にも尊敬される人格で社会問題を解決するというヒーロー像からは逸脱した「反英雄」です。
その存在感を際立たすため、鷲津の人間性を意図的に描いていません。