【前田育男×永井一史】デザイナーは本質の追求者だ

2018/7/15
第1回では経営者と経営学者の視点から、「なぜデザインがイノベーションを起こすのか?」が語られた。では、デザイナー自身はその仕事と価値をどのように捉えているのか? マツダの前田育男氏と博報堂デザインの永井一史氏というトップデザイナーの対談から、「デザインの可能性と経営における重要性」を読み解く。
デザインが欠けると“軽く”なる
永井 私自身、「色や形を作るのがデザイナーの仕事でしょ」と言われるたびに、「いや、私たちの仕事・領域はもっと幅広いものだ」という気持ちを持ち続けてきました。では、デザイナーの本分とは何なのか? 少し難しい話になりますが、ひとつ言えるのは「物事の本質を追求し、抽出したエッセンスを具象化する」ことだと思います。それによって、本物の価値や個性が生まれる。
永井 一史 (ながいかずふみ)アートディレクター/クリエイティブディレクター。株式会社HAKUHODO DESIGN代表取締役社長。多摩美術大学教授。1985年多摩美術大学美術学部卒業後、博報堂に入社。2003年、HAKUHODO DESIGNを設立。2015年から東京都「東京ブランド」クリエイティブディレクター、2015〜2017年までグッドデザイン賞審査委員長を務める。クリエイター・オブ・ザ・イヤー、ADC賞グランプリ、毎日デザイン賞など国内外受賞歴多数。著書・共著書に『幸せに向かうデザイン』、『エネルギー問題に効くデザイン』など。
前田 その通りだと思います。そして、本質を追求した結果、サービス自体がジャンプアップしてイノベーションとなることもあれば、そのエッセンスがプロダクトに反映されて「個性=ブランド」を生み出すことにもなる。
この両輪こそがデザイナーの責任領域であり、どちらも欠かすことができません。「デザイン思考」という言葉に象徴される前者だけでは不十分。なぜなら、どんなにイノベーティブなビジネスを生み出したとしても、最終的なデザインがチープであれば、結局は“重みのあるビジネス”とはなり得ないからです。
日本の家電業界の苦境などは、まさにこの点に問題があり、最先端の技術、面白いアイデアはあるのにデザイン面で世界から後れを取ってしまった。逆に、中国や韓国はアイデアにオリジナリティーは少なくても、デザインの質にとにかくフォーカスしようという戦略で市場を拡大しています。
ここで、もし日本が両輪を駆動させることができれば、相当強くなれるはず。もともと職人の技術は超一流ですから。