お金もらうと怠ける? ケニアの2万人「大実験」
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データを見ていないので、ただの感想ですが、まず、金額が絶妙だと思いました。生活がドラスティックに変わるほどの金額ではなく、でも学費や日々の生活費を補填して余裕が少しでる金額。また、お金をまず子どもの教育費に使うのは他の場面でも見られることなので、行動パターンとして違和感はなく、まあそうなるだろうなというところ。あと、こういった金額はこれまでは借金という名の贈与で賄っていたかと思うので、差し出していた側の資金の余裕も生むかもしれません。
ベーシックインカムの是非全般に敷衍できるかというと、数値をみて分析してみないとわかりません。なにを無駄遣いとするかも不明ですし、一般的にベーシックインカム反対派の人は、たとえばこのケニアのケースなら「これまで現金収入を得るために農業に精を出していた人たちが、農作業をさぼるようになる」というような懸念をもっているように思いますが、その点はわかりらないですね。調査地の地域的な特徴、農村の現金の用途が限られているエリアだったり、またはケニアだから、もっというとキスムだからという要因が調査結果に影響しているかもしれません。ターゲティングvsユニバーサルというのは、開発途上国の貧困削減・社会保障の議論で2000年代初頭から議論され、実験されてきたものです。本件はとても少数のグループへの介入実験のようですが、ケニアでは10年前から英国国際開発省(DFID)や世界銀行が同様の実験を大規模に実施してきました。検索すればたくさん出てくると思いますが、条件付現金給付(Conditional Cash Transfers)とかSocial Cash TransfersとかCash Transfers for Orphans and Vulnerable Childrenというのがそれに当たります。一般的にターゲティングよりユニバーサルの方が行政コストが安くなるとされます。開発途上国の文脈では、たとえば貧困率が80%の国であればわざわざターゲティングする合理性はないのでユニバーサルが良いのではないか、という議論は長らくあります。ユニバーサルの欠点はカバレッジを広げる代わりに、給付額を抑えなければならないことです。したがって他の社会保障支出を限りなくカットして給付水準を上げることが求められるわけですが、そこには経済的合理性だけで動かない政治的な要素が加わるため、利害関係者の調整が極めて難しいことが昨今のユニバーサルベーシックインカムの議論をみればわかるところです。また、合理性に関しても一定の疑問があります。ユニバーサルベーシックインカムの本質が他の社会保障支出の削減にある一方、社会保障制度がユニバーサルベーシックインカムのみになった場合に果たして人々は自分のリスクを自己責任で全てヘッジできるのかという課題が残ります。平等に給付されているのだから「あとは自己責任で」というのがユニバーサルベーシックインカムですが、年金・失業・疾病等の社会保険が国レベルでリスクヘッジしている部分を、どれほどの人々が個人で積み立てリスクヘッジしていけるのか。議論の本質はそこにあると思います。
僕はベーシックインカム賛成派です。非常に興味深い社会実験です。結論から言うと、無駄使いをする人はいないとのこと。また、それまでギャンブルや過度の飲酒をしなかった人が、お金をもらうことで浪費するようになった事例はないということです。
もちろんこの結果がすべての国においても同じになるとは思いませんが、ベーシックインカムの社会的意義を確認できている意味で大きいと思います。