ビットコインは、最高の「お金の仕組み」の教科書だ

2018/7/9

お金という「発明品」

お金のカタチはいつも変わり、いまも進化している。仮想通貨はそんなお金の本質を、私たちに教えてくれる「最高の教材」だ。
お金は物々交換から始まったと言われている。例えば米を作っている人たちと、魚を獲っている人たちが、それぞれの収穫物を交換したいとしよう。そこで通貨のような媒介物があればスマートだ。
「お米と交換に、野菜がほしい」「肉と交換に、毛皮がほしい」「魚と交換に、石器がほしい」。通貨を介すれば、そうした複雑なマッチングも成立させられる。
その頃のお金は貝殻であったり、珍しい石であったり、はたまた銀や金などの貴金属であったりした。
(写真:Garry Adams via Getty Images)
こうした稀少なモノを担保にしたお金は、「ハードマネー」と呼ばれる。古代のエジプト時代からローマ時代まで、経済の潤滑油として、さまざまなハードマネーが生まれては消えていった。
そして10世紀ころの中国・宋の時代に、紙をベースとした紙幣が発明された。そこには人間にとって大きな誘惑が潜んでいた。
それが金など貴金属の裏付けがない「ソフトマネー(不換紙幣)」のアイディアだ。低コストの紙に、サササッと数字や文字を記すだけで、新しい価値を生みだせる。権力者にとっては、たまらない「錬金術」だった。
本物の金を掘り起こさなくても、紙だけで信用創造ができるイノベーションとも言える。

禁断の「通貨発行権」

ソフトマネーの元祖として、大量に紙幣を発行して、膨大な軍資金や物資をまかなおうとしたのがフビライ・ハン(モンゴル帝国五代目皇帝)だ。
最後はお札を濫発して、国が滅びるのを早めたと言われる。
その後、時代によってスペイン、英国、米国といった国々が、通貨を牛耳ることで都合のよい経済ルールを広げようと、ソフトマネーを必死で活用した。私たちが日常的に使っている「日本円」も、その一種にあたる。
しかしお金を巡るイノベーションは、いつだって繰り返される。
2009年に登場したビットコインは、これまで国家にしか許されなかった「通貨」をつくるという特権行為を、テクノロジーによってあっさり開放してしまったのだ。
(写真:Bloomberg via Getty Images)
ビットコインを支えるブロックチェーン技術は、国家のような強力な中央集権的なパワーがなくても、世界中に分散されたコンピュータによって、新しい通貨の信頼性を担うことができる。
だから誰もが、オリジナルな通貨と経済圏を作ることができる時代に入ったのだ。近い将来、日本円だけではない、新しい通貨による無数の経済圏が生まれてくるという指摘も多い。
そうなったら「円建ての人生」だけを考える時代では、もうなくなっていくのだろう。

ホリエモン流「お金の研究」

NewsPicks編集部は、お金の本質や仕組みを理解するため、仮想通貨は「最高の教材」であると確信している。
これはビットコインなど、いわゆる仮想通貨の売り買いでひと山当てて儲けようという内容では一切ない。特集で紹介するストーリーは、いわばお金についての知見を深められるケーススタディだ。
第1話では、お金のあり方について日本中を議論に巻き込んできた張本人とも言える、ホリエモンこと堀江貴文氏にインタビュー。お金の進化をどう見てきたのかという「研究史」を語ってもらった。
「2004年に分割したライブドアの株式は、一種の通貨(トークン)のようなものだった。ライブドア株で、肉や野菜などを買えるような経済圏を作りたかった」
興味深いのは、仮想通貨が世の中にでる前から、堀江氏がお金に対するさまざまな挑戦を仕掛けようとしてきた経緯だ。
第2話では、19歳で始めた露天商を皮切りに無数のビジネスを経験し、現在は仮想通貨の取引所も展開しているDMMの亀山敬司会長に独自の「お金論」を語ってもらった。
「仮想通貨やテクノロジーを学ぶことは良いことだけど、仮想通貨を持つこと自体は投機に過ぎない。私は仮想通貨は一切買っていない」
長期的な仮想通貨のポテンシャルを認めながらも、投資対象としてはシビアな見方を続けるのは何故なのか。その本音も聞いた。

京都発「仮想通貨」の衝撃

第3話は、2017年の仮想通貨高騰によって大きな資産を築いた、いわゆる億り人(おくりびと)らによる匿名座談会だ。仮想通貨の市場価格が低迷する中、今こそ明かせる「不都合な真実」を語ってもらった。
「貧者は勝てても、愚者は勝てない。私は世界的に有名なベンチャーキャピタルの動向などをチェックして、彼らが投資したところに、まるでコバンザメのようにお金を入れています」
ポケットの中のスマートフォンの画面では、1日あたり数千万円単位で資産が乱高下することもあるという、仮想通貨投資にとりつかれた面々。そこまで魅了されるのは何故か、彼らのアタマの中を覗いた。
第4話は、NewsPicksによるスクープ記事だ。このコインを持っていると、旅行先でさまざまな地元体験ができる新しい仮想通貨「HIDS」の取り組みと、その仕掛け人の素顔に迫った。
この新しい仮想通貨に挑んでいる経営者は、奇遇にも、敗戦後に日本銀行総裁をつとめていた曽祖父をもつ異端児だ。
日本円を司ってきた中央銀行トップの子孫が、新しい仮想通貨による経済圏を作ろうという巡り合わせは、お金の「転換点」が到来していることを強く感じさせる。
その他にも、お金がどのように生まれて、いかに多くの権力者を魅了して、そのパワーゆえに滅んでいったかを学べる「歴史図解」も用意。お金の本質を描いた名著のエッセンスも、ふんだんに取り入れている。
私たちはいつも当たり前のように、お金に笑い、お金に泣き、時にはお金を人生の目的だと勘違いしてしまうことすらある。
しかし仮想通貨の誕生によって、国家が仕切っている「日本円」の経済圏は、これまでほど絶対的な存在ではなくなるかもしれない。日本円の横には、様々な通貨がパラレルに併存しているような世界観だ。
もはや日本円だけを尺度にして、生きるような時代ではなくなりつつある。この特集は、そうした時代の道案内にもなるはずだ。
(取材:NewsPicks編集部、デザイン:星野美緒)