【徹底再現】6時間の特訓プログラム、次世代CFO進化の現場

2018/7/12
6月15日に開催された6時間以上に及ぶ集中特訓プログラム「CFOブートキャンプ」。CFOの課題を解決し、その職能の本質的な価値の向上を促したいというfreee社の協賛のもと、本イベントが開催された。
定員30名に対し、その4倍以上となるCxOから申し込みが殺到。当日は雨にもかかわらず、当選者の参加率は100%、満足度は10段階評価で平均9.3点という充実したイベントとなった。
この学びの多いプログラムの基軸となった、ラクスルCFOの永見世央氏、ユーグレナCFOの永田暁彦氏、じげんCFOの寺田修輔氏の、以下の3セッションを、NewsPicks誌上でできうる限り再現する。
「CFOブートキャンプ」プログラム

「次世代CFOとは」EYACC 髙見陽一郎
「拡大戦略としてのM&A」じげんCFO 寺田修輔
「次世代CFOが担う価値の本質とは?」ユーグレナCFO 永田暁彦
「CFOがドライブする攻めのコーポレートデザイン」ラクスルCFO 永見世央
〈パネルディスカッション〉
 パネリスト:じげん 寺田修輔✕ユーグレナ 永田暁彦✕ラクスル 永見世央
 モデレータ:EYACC 髙見陽一郎
「テクノロジーを武器にCFOは進化する」freee CFO 東後澄人✕EYACC 髙見陽一郎
〈ワークショップ〉
〈スピーチ〉EYACC 髙見陽一郎/freee 東後澄人
〈懇親会〉

また記事の最後には、圧倒的な熱量であった各3人の白熱講義を、ダイジェストした動画を案内する。
CFOがドライブする「攻めのコーポレートデザイン」
5月末にIPOしたばかりのラクスルCFOの永見世央氏。「CFOがドライブする攻めのコーポレートデザイン」と題し、21世紀の企業価値の考察をベースに、CFOの本分を「定量」というキーワードで熱く語る。
2004年に慶應義塾大学総合政策学部卒業後、みずほ証券株式会社にてM&Aアドバイザリー業務に従事。2006年から2013年まで米カーライル・グループに所属し、バイアウト投資と投資先の経営及び事業運営に関与。その後、株式会社ディー・エヌ・エーを経て2014年4月にラクスル株式会社にCFOとして参画。同年10月に取締役就任。ペンシルべニア大学ウォートンスクールにてMBA取得。
ラクスルは印刷や物流といった既存産業にインターネットを持ち込み、産業構造そのものをより良くしていこうと2009年に創業した会社です。僕は2014年からCFOとして参画し、この5月31日にマザーズ上場を果たしました。
今回のテーマは「攻めのコーポレートデザイン」です。まず、「そもそもCFOって何やる人?」というところから考えていきたいと思います。CFOの役割はかなり幅広く、会社のフェーズの中で変わっていくものです。
実際、今の僕がCFOとしてカバーしていることを「攻め」と「守り」に分類するとこうなります。
攻めの役割

・戦略とリソース配分
・財務(資金調達、上場準備)
・投資/M&A
・組織人事

守りの役割

・コーポレートガバナンス(取締役会運営)
・事業管理
・リスク管理

21世紀版「会社の価値」を構成するもの
本題のCFOの話をする前に「会社の価値=企業価値」を定義してみます。僕は、会社経営は基本的に「顧客価値」「事業価値」「株式価値」の3つを行き来するものだと考えています。
顧客価値とは、顧客への付加価値と満足度の総和。事業価値は、事業が生む売上と利益の総和、株式価値は会社の将来のキャッシュフローの総和です。この3つがそれぞれ関係しながら、会社の価値を形成していきます。
顧客価値を最大化することが、中長期的な事業価値を最大化し、ひいては株式価値の最大化につながっていきます。
一方で、企業にとっての最終目標の株式価値の最大化のために事業を構成するという一面もあります。未上場のスタートアップの場合、将来的な株式価値を見込んで事業への投資・資金調達規模を逆算的に考えることも多くあります。
ただし、これだけだと20世紀版の考え方かなと思っています。21世紀版では、顧客価値、事業価値、株式価値をブリッジする要素として「組織・カルチャー」「データ/顧客基盤/ブランド」がプラスされます。
このどちらも現在の会計基準では基本的にBSに計上されません。その点からも、今の会計基準は本質的な機能を果たしていない、と思っています。
例えば「このチームや組織なら、長期で何か大きなことを実現しそうだ」というような期待値。それが組織・カルチャーの価値です。投資家の評価ポイントとしても重要な要素で、CFOとしては株式価値を上げるために必ず考慮すべき点です。強い組織は事業で成功する、顧客にも向き合う原動力でもあります。
もう一つの要素が、データ、顧客基盤、ブランド。データドリブンなプラットフォームビジネスにおいてデータの重要性はいうまでもありません。また、顧客基盤やブランドといった無形資産もM&Aにおいては「のれん」として表現される部分があるとは思いますが、基本的にはまだ評価されていない。
21世紀の会社の価値とは、この2つの要素が顧客価値、事業価値、株式価値それぞれに作用し、相互に影響し合うことで決まっていくと思っています。
ここまでの話を踏まえて、改めて「CFOの仕事は何か」を考えてみます。僕の答えは、「CFOは顧客価値、事業価値を株式価値にトランスレートする人」です。
具体的には、攻めと守り、短期と長期、定性と定量等のトレードオフを上手にマネージしながら、長期の株式価値を最大化し、そのためのリソースを調達する人。さらには、あくまでも冷静で客観的な正論を言い続けることで、株式価値につなげていく人です。
これらを実行するには、さまざまな矛盾や対立を解決・昇華していかなくてはなりません。それによって、経営を次のステップに上げていく、それこそが優れた経営力であり、CFOに必要な資質だと思います。
コーポレート機能を強化するデータドリブン
経営が直面するさまざまな側面の中で、今回は「定量」にフォーカスしてみます。特に、コーポレート機能が経営事業をドライブするために、「企業経営の“HOW”としてのデータ蓄積と分析」について話を進めてみたいと思います。
会社が小さいうちは詳細にわかることも、会社や組織が大きくなり、今の僕らのような上場前後になったりすると、もはや「感覚」では全然わからなくなります(笑)。そうすると、わかっているつもりで実はわかっていないCFO、つまり自分自身がボトルネックになる危険性も出てくる。
そうならないためにも、企業経営のベースとして、データの蓄積と分析が重要になってきます。
データドリブンでコーポレート機能を整備・強化する。それによってモニター分析し、意思決定をドライブしていくことが可能になります。そのためには、何をすればいいのか。
まずは必要となるデータセットの定義と一元管理、データベース化が必須です。コーポレートテクノロジー機能への意識改革も必要ですね。webサービスの開発には熱心でも、コーポレートにテクノロジーを入れることが置き去りになっている会社は多いと思います。社内エンジニアをアサインするだけでなく、外部サービスを積極的に利用するのも方法です。
その点、ラクスルは積極的に外部サービスを利用していて、便利そうなSaaSはまずは試してみます。それで使えなかったら、断捨離すればいい。自分たちですべてを開発する必要はないと思います。
これらの環境を整えたら、あとはタイムリーなモニタリングと報告体制、分析体制を整備していきます。その結果、最終目標でもある、より良い経営の意思決定とリスク管理というものが実現していくことになる。
これからのCFOに必要なテクノロジーの素養
データへの取り組みはCFOがひとりで考えるべき課題ではないはずです。テクノロジーがこれだけ絡んできている時代なのですから、CFO、CTO(チーフテクノロジーオフィサー)、さらにはCIO(チーフインフォメーションオフィサー)が密接に連携していけばいい。CxOの役割自体がかなりクロスオーバーしています。明確な役割分担にこだわり過ぎず、お互い協力し合うことが大事だと思っています。
当然、CFO自身にも、テクノロジーの素養が強く求められている。これからのCFOはキャピタルとテクノロジーの両方を活用・レバレッジして、企業価値を上げていかなくてはなりません。それが理想のCFO像だと思います。
次世代CFOが担う価値の本質とは
ミドリムシを中心とした微細藻類の健康食品や化粧品の開発・販売のほか、バイオ燃料などを展開しているユーグレナ。2010年にCFOとして参画して以来、八面六臂の活躍を続ける永田暁彦氏が、「次世代CFOが担う価値の本質とは?」と題し、いち経営陣としてのCFOの役割について語る。
慶應義塾大学商学部卒業。独立系プライベートエクイティファンドに入社し、プライベート・エクイティ部門とコンサルティング部門に所属。2008年に株式会社ユーグレナ社の取締役就任。ユーグレナ社の未上場期より事業戦略、M&A、資金調達、資本提携、広報・IR、管理部門を管轄。技術を支える戦略、ファイナンス分野に精通。現在はユーグレナ社の財務、戦略およびバイオ燃料などの事業開発責任者を務めるとともに、日本最大級の技術系VC「リアルテックファンド」の代表を務める。
2005年に創業したユーグレナは、2012年に上場。5期で売上高8.7倍、経常利益3.7倍へと成長しました。
しかし、直近の今期9月決算で営業利益−18億円、経常利益−15億円という初の赤字決算予想をだしています。しかも、来期はさらにひどい−58億円近い赤字予想です。
ここに僕たちの成長戦略があります。そもそも、なぜ58億円もの赤字が生まれたかというと、長年投資してきたバイオジェット燃料のテスト生産設備が来シーズンに完成。それと同時に、研究開発費一括費用計上として会計処理するからです。期間償却ではなく一括費用計上するのが、会計的な戦略となっています。
もうひとつ、IR戦略にかなり力を入れていることもあります。株価に左右されず、企業理念の実現に共感する個人投資家群を構成することで、現状87000人もの投資家が投資してくれています。この数は国内TOP100社に入る投資家の数です。当然、将来事業を成功させてお返しすることが前提になります。
調達・理解・投資の3つに集約されるCFOの役割
本題である、CFOの役割とは何か。それぞれのCFOに自分なりの解があるはずですが、僕が考えるファンクションは「調達」「理解」「投資」の3つです。
CFO業務の本質

 調達――選択肢作り
 理解――管理会計
 投資――人、お金のアロケーション、そしてメモリのアロケーション

「調達」とは、必要なときに必要な手段で、必要な金額をいつでも調達できる状況を作り続けること。これを社内向けには、「金がない、リソースがない」と言い訳をさせないのがファイナンス部門である、と定義しています。
株価とはファイナンスの側面で考えれば調達手段を多様化する一つの指標です。株価戦略は資金調達も含めたファイナンスとして、非常に重要となります。全体のキャッシュフローベースでみると、IRへの積極的な投資は確実なリターンがあります。そういうIR戦略のように、ゴールに向けてどれだけ多くの調達手段を持つかがポイントです。
2つ目の「理解」は、管理会計や自分自身の時間の使い方のこと。
3つ目は、僕がCFOの本質的業務だと思っている「投資」です。投資は、人やお金のアロケーション(割り当て)とメモリのアロケーションがあります。メモリのアロケーションを言い換えると、集中のこと。PLで測れる人やお金と違って、経営者やメンバーが何を考えているのか、何に集中しているのか、つまりメモリの部分はわかりません。そこを可視化して、必要な業務にいかに集中させるか。こここそ、今の僕が一番注力している部分です。
CFOという肩書にとらわれず、経営を担う役割
では、ユーグレナのCFOとして具体的に何をしているのか。そもそも僕は、CFOの業務に明確な定義があるとは考えておらず、経営というものは、経営陣が4人いれば、4つに分割して担当するものだと捉えています。
ユーグレナでのCFO業務

経営企画/広報IR/
新規、海外事業/バイオ燃料事業/
人事/経理/内部統制/
グループ会社マネージメント/
投資ファンド(リアルテックファンド)
 +
研究企画/商品開発(ブランド管理)

そのうえで僕が主体的に重要視しているのが、経営企画、広報、人事、内部統制など。特に人事は、経営の最重要ポイントですね。お金とヒューマンリソースを同時に捉えることが重要なので、自分が直接管轄しています。
研究企画や商品開発は、発言権を持って会議に参加する立場です。目的としては、研究や商品開発をブラックボックス化させずに、自分が状況を日々把握できるようにすることにあります。
この領域をすべて僕が担当していると、それはCFOの仕事なのか? COOのやることじゃない? それとも副社長? そんな肩書が浮かぶと思います。他のCxOとのすみ分けってどうなっていますか、とも聞かれます。でも結局はどこまで行っても会社成長に必要なファンクションをみんなで分けて、担当を決める以外にないと考えていますので、結局CFOという言葉や定義にはあまり意味がない。
CFOの役割とは何かと定義するのではなくて、経営において必要な機能を全役員が理解し、それをMECEに役割分担をする。分担された役割と一番近い名前を付けるだけではないかと。やっぱり経営の本質的価値は何かということを追求するのが大切ではないかなというふうに思っています。
とにかく会社の成功を導くために、それをリードする人間のベストパフォーマンスを引き出し、パッションを分け与える。それが僕の役割だと思っています。
創造、判断、決定が、次世代CFOの役割
では、管理担当役員とCFOは何が違うのか。管理担当役員は財務会計、税務会計というのが最低限のベースです。そこからグラデーションで管理会計、調達、経営戦略、HR、IRがのってきて、経営を実現するフェーズがCFOとなる。
一般的に、これまでのCFOは現場の理解や現状把握に、またはその資料を作ることに頭も時間も費やし過ぎてきた。財務会計などはその極みです。これからは、そこに時間を1秒も使うべきではないと考えています。
次世代のCFOに求められているのは、機能ではなくて経営です。経営とは、「創造」と「判断」と「決定」。これらを役割分担していくのがCxOです。
そういう中で、あらゆる情報を吸収して、どこに投資するのか。人とお金、メモリのアロケーションをどうしていくのか。リソースが足りないと言わせない状況をどう作っていくのか。それらを決定することに、次世代CFOの価値があるのではないでしょうか。また、投資領域という資本を持ちながらチームメイキングをしていくことも、CFOの大きな役割となってきます。
ほかの経営者と同じ視点で最終ゴールを見つめ、自身の役割を果たすこと。それが、CFOのドライバーとしての存在価値を高めていくのだと思います。
3人のCFOとブートキャンプのコーチ役である髙見氏によるパネルディスカッション。参加者からも多くの質問が寄せられた
長時間に及ぶプログラムの合間には、「GRIT NATION」によるブートキャンプにちなんだエクササイズを設けて、頭と体の緊張をほぐす
拡大戦略としてのM&A
人材、不動産、自動車、旅行などについて、複数のメディア情報を統合するアグリゲーションサービスや特化型メディアを展開する「じげん」。2013年の上場以来、増収増益を続け、4年半で10件のM&Aを成功させるじげんのCFO寺田修輔氏が、「拡大戦略としてのM&A」と題して、M&Aの基本理念とその具体的なプロセスについて、解説する。
東京大学卒業後、2009年、シティグループ証券入社。株式調査業務、財務アドバイザリー業務に従事し、2014年より不動産チームヘッド。2016年、経営戦略部部長としてじげん入社。現在は取締役執行役員CFOとして経営戦略部、経営管理部を率い、投資、経営戦略、財務、IR、会計、経理、法務の責任者を務める。2016 Thomson Reuters Analyst Awards Japan 1位(家庭用耐久財収益部門)。Chartered Financial Analyst(CFA協会認定証券アナリスト)。日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。
じげんは上場してから4年半で、10件のM&Aを行ってきました。このうち9件が100%株式取得です。うち1件は株式取得したばかりなので、それを除いた8件の投資額で説明します。
グロスの投資額が70億円で、ネットキャッシュを考慮した実質投資額、つまりEnterprise Value(EV)が60億円。この実質的な投資額に対して具体的な利益貢献は非開示ですが、18/3期の当社連結EBITDA約35億円のうち、M&Aを通じて取得し、その後PMIで業績拡大させた8事業が過半を占めており、十分なリターンを上げています。
当社が考えるM&Aの大前提が3つあります。

・M&Aは最も不確実性の高い経営オプションのひとつ
・資本や人員といった経営資源を大胆に投入するため、求められるリターンや潜在的なリスクは大きい
・だからこそ、定量的な規律と説明責任が不可欠

M&Aは、数あるコーポレートアクションの中でも、おそらく最も不確実性の高い経営オプションと認識をしています。特に買い手にとっては、です。
当然お金がかかります。また、お金以上に特にベンチャー企業、インターネット企業にとっては最も大切な人的資源もかかります。しかも、いわゆるオペレーティブな人材ではなくて、しっかりと戦略を立てて、当事者意識を持って、全精力をそこに注ぎ込めるような優秀な事業責任者が必要となります。
ですので、そういったリスクに対して、社外だけでなく、社内にもきちんと説明していくことが大切です。よく「M&Aやった方がいいですかね」という相談を他社の経営陣から頂くのですが、定量的な説明が果たせるか否か、というところが判断材料のひとつになってくるかなと思います。
経営戦略を実現する手段としてのM&A
具体的なM&Aのプロセスで、じげんがどのような判断基準、信念を持って進めているかをお話しします。
M&Aは戦略立案、案件を調査するソーシング、精査するデューデリジェンス(DD)、交渉、契約までが全体の2割。残りの8割は取得した会社を経営統合するPMIのフェーズです。一連のプロセスで最も重要なのは、最初のM&A戦略立案と最後のPMIかなと個人的には考えています。
戦略立案で忘れてはならないのが、M&Aは経営の手段に過ぎないということ。「経営戦略のない投資戦略」はありえません。企業の現状と理想があって、そのギャップを埋めるためにさまざまな戦術がある。M&Aは、あくまでもそのひとつの選択肢です。
「M&Aをやりたいが、どうやっていいのかわからない」という質問をよく受けるのですが、そもそも戦略がないのにM&Aをやりたいという順序が間違っています。
企業が成長すると組織が縦割り化し、投資自体が目的になるケースも多いですが、それは失敗への道です。とにかく経営戦略のコンセンサスを会社としてしっかり持ち、そこから逆算してM&A戦略を立てる。ここが何より重要なポイントです。
4年半でソーシング600件、M&A成立10件
次に、M&Aの具体的なプロセスについて説明します。
じげんでは、この4年半で600件ほどソーシングしてきました。そのうち、5件に1件はコンタクトを取り、簡易的なDDも行っています。結果、M&Aが成立したのは10件です。
ソーシングでは、個人を含めたあらゆる仲介業者や経営陣の人脈もすべて使って調査します。次の段階のDD(案件調査)には、ビジネスDDとプロフェッショナルDDの2つがあります。特に大事なのは事業について精査するビジネスDD。
弊社ではM&A担当の経営戦略部とPMIを担当する事業部がチームでビジネスDDを実行します。PMIの責任者がビジネスDDからチームの一員として対象会社との関係をつくり、効果的、効率的な戦略を計画実行できるのがメリットです。M&A担当部署だけでDDを行い、その後PMI担当者を決めてそこから戦略を考えるというのでは、成功確率は下がってしまうかと思います。
もうひとつのポイントとして、ビジネスDDにおけるリスク抽出は当然ですが、それよりも「どれだけアップサイド(業績の伸びしろ)があるか」を重視してチェックすることだと思っています。
アップサイドの共創を目指す交渉術
価格算定・交渉の段階では、担当部署が成立を目的化して走りすぎないように気をつけています。そこを冷静に判断するため、弊社では3つのハードルを設けています。
まず1つ目が社長およびM&A担当の経営戦略部での簡易判定。ここで600件中480件を弾いてきました。次が社内の経営陣の投資統括会議による、多角的・網羅的な審査。それをクリアすると専門家によるプロフェッショナルDDを挟んで、3つ目の取締役会で決定します。
最後の取締役会も決して形だけのものではなく、この段階でNGとなる案件もあります。弊社では3つのハードルがしっかりと機能している、と言えるかもしれません。
交渉に入ると、金額だけでなく、我々と一緒になることでいかにアップサイドの共創をできるか、ということを相手先企業に徹底的にプレゼンします。彼らが持つ課題をどう解決し、さらに伸ばしていけるのか、ということを営業するわけですね。
実際、我々より高い価格を提示していた競合を蹴って、じげんとの将来性に魅力を感じて選んでくださった例もあります。
エース人材を投入するPMI
PMIにおいても具体的な基本戦略があります。まずは、M&A実施後のPMI計画の再点検。すべての情報を把握できるこのタイミングで改めて計画を見直し、できること、できないことを整理します。
ハンズオンで経営統合していくには、エース級の人材を積極的に投入する姿勢も重要です。例えば、2018年に取得したアップルワールドには、じげん単体の事業をすべて見ている執行役員が、じげんから出向者を10人ほど引き連れて社長に就任しました。
対象会社では、従業員の多くが不安を抱えているものです。そういう中で組織をまとめるには、結果を出していくしかありません。エース人材が赴き、業績アップや新事業などが目に見えることで、組織の求心力も高まっていきます。
一方で、じげん本体としても、徹底的にモニタリングをします。計画にズレがないかチェックし、ある場合はどうリカバリーするか。毎週、それを厳しく確認しながら、PDCAサイクルを回すようにしています。
確かな信念でM&Aを成功に導く
最初にお話ししたように、M&Aは数あるコーポレートアクションの中で、「最も不確実性の高い経営オプション」です。莫大なコストとリソースがかかるだけに、社内外にしっかりと説明責任ができるものであること。
加えて、単なるキャッシュと株式の等価交換と捉えずに、対象企業と一緒にアップサイドをつくっていくという姿勢も大事です。こういった信念が、じげんグループのM&A戦略の基本であり、結果につながっているのだと思います。

テクノロジーを武器にCFOは進化する
3人のスーパーCFOの後は、今回のイベントのコーチ役であるEYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社パートナーの髙見陽一郎氏とfreee株式会社のCFO東後澄人氏が対談。
Big4系ファームに入所し、法定監査・株式公開支援に従事した後、日系投資業の在外子会社のコントローラー、CFOとして米国(カリフォルニア州)駐在約9年。その後、外資系コンサルティング会社にて、会計・経理領域のコンサルティングに従事し、2010年にEYに参画。現在はEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングにおいて、Financeサービスのリーダーとして、様々な業界におけるクライアント企業のCFOを支援。公認会計士。
東京大学工学部卒。同大学院ではJAXAにおいて次世代ロケット推進薬の研究を行う。2005年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、IT・製造業界を中心に国内外の顧客の幅広い経営課題に取り組む。2010年からGoogleにて日本の中小企業向けマーケティング、及びGoogleマップの事業開発に従事。2013年にfreee株式会社にCOOとして参画し、急速な事業拡大を牽引。2018年7月よりCFOに就任。
「テクノロジーを武器にCFOは進化する」というテーマで、従来であると財務会計の管理などを中心に「スコアキーパー」になりがちなCFOが、進化の方向性として、バックオフィスを経営に近い視座で全体設計する「バックオフィスデザイナー」と、数字を足場により経営に踏み込んでいく「経営ナビゲーター」という道筋が提示された。
なお本イベント当日に、東後氏が、freeeのCOOからCFOに就任するという人事が発表された。
これまでfreeeのCOOとして、事業推進の中で経営数値やマーケティングデータを整備・分析してきた東後氏が、その事業理解を備えた上でCFOに就くことで、より攻めの投資を行い、さらなる事業成長につなげようという意思決定であったと言う。奇しくもCFOブートキャンプの趣旨に寄り添うような采配の実例と言えよう。
セッション後のワークショップではテーブルごとに分かれ、各自の課題と学びを持ち寄り、ナレッジのシェアが行われた
最後に、「CFOブートキャンプ」のコーチ役である髙見氏から長時間にわたった密度の濃いイベントへの感想と、出席者へのエールの言葉が送られた。
「6時間以上に及ぶ特訓イベントは、非常に学びの多い内容だったと思います。私自身も含めて、さまざまな視点からCFOの役割、求められる姿について、改めて多くのことに気づかされたと思います。今日、ご参加いただいたCFOのみなさんには、ぜひ本日の学びをこれからの会社経営に活かしてもらえたらと思います」
主催したNewsPicks Brand Designは、「いまCFOが進化を要請されている」というインサイトのもと、CFOの課題解決とさらなるステージへの覚醒を促したいというfreee社の協賛を得て、本プログラムを企画した。
永田氏より事前ヒアリングの際に、「いま優秀なCFOが求められているし、経営をリードするCFOとなるべき資質のある人間はたくさんいるはず」という期待の言があり、それは本企画の柱となった。
CFO限定30名というニッチなイベントであったが、定員に対して4倍以上の応募、100%の参加率、高い満足度から、CFOが抱える課題の切実さが伺えた。
CFOのみならず次期CFO候補の方がたからも、参加を望んだ声にお応えし、以下より10日間の期間限定で動画を公開する。
登壇を乞うた “スーパーCFO”たちのセッションは、情報量もさることながら、“経営者”としての熱量も凄まじく、その立ち姿よりあふれる気勢を確認されたい。
(編集:中島洋一 執筆:工藤千秋 撮影:喜多村みか デザイン:國弘朋佳 イベント協力:花咲爺さんズ)