[松本市(長野県) 5日 ロイター] - 日銀の政井貴子審議委員は5日、長野県松本市で講演し、人々に根付いたデフレマインドは「想定以上にしつこい」とし、デフレからの確実な脱却に向けて「持続可能な形」で強力な金融緩和を息長く続けることが適当との見解を示した。

政井氏は「経済の着実な改善度合いに比べて、現実の物価上昇がなお力強さに欠けている」とし、4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」公表後の物価動向は「想定対比若干弱め」との認識を示した。

背景として「デフレマインドが想定以上にしつこい」とし、「2%の物価安定の目標の実現には相応の時間がかかることも念頭に置く必要がある」と指摘。

金融緩和のさらなる長期化が避けられない中、「金融政策の運営にあたり、金融仲介機能や広い意味での金融機能への影響は考慮すべきポイント」としたが、金融機関経営の課題には、フィンテックなどの技術革新や地域の人口・企業数の減少など「構造的な問題」もあり、金融緩和に伴う影響とは「区別して分析・議論すべき」と語った。

そのうえで「デフレからの脱却を完全にしておくべき」と強調し、金融緩和の副作用についても従来以上に点検を行いながら、「持続可能な形で強力な金融緩和を息長く続けることが適当」と述べた。

日銀が物価目標を「2%」としている理由については「デフレを回避するためのバッファーというのが、中央銀行の共通の答え」などと指摘し、デフレの長期化は「経済の停滞を通じて最終的には家計に負担を強いることになる」とデフレ脱却の必要性を訴えた。

日本の経済・物価の先行きについて、2019年10月に予定されている消費増税の影響に「特に注目している」と指摘。

日銀では、消費増税による家計のネットの負担額は2.2兆円程度と推計しており、14年の消費増税時の約8兆円に比べれば負担は軽くなる見通しだ。それでも政井氏は「経済状況によって消費者マインドに与える影響が大きく異なり得るなど、相当な不確実性がある」と警戒感を示した。

米国の通商政策をめぐる貿易摩擦懸念に関しては「グローバルに活動する企業の経営判断を大きく左右するものとなりかねず、貿易や投資の資本フローに対する影響は無視できない」と懸念を表明した。