[東京 4日 ロイター] - NTT<9432.T>の澤田純社長はロイターのインタビューに応じ、海外事業を強化する方針をあらためて示し、拡大に向けM&A(企業の合併・買収)も視野に入れていることを明らかにした。

NTT東西地域会社、NTTドコモ<9437.T>、NTTコミュニケーションズなどに分かれているグループ体制については、当面は現状の枠組みの中で運営していくが、「ひずみ」が大きくなれば国に議論を要請する。

減少が続くNTT東西の固定電話は現在、全国一律での提供義務(ユニバーサルサービス)を負っている。これについて澤田社長は「どのようなサービスがユニバーサルなのか、議論してもらわないといけない」と述べ、将来的に見直しが必要との認識を示した。

インタビューの詳細は以下の通り。

──海外事業を拡大している。今後の戦略は。

「強化、拡大していく。数字は秋に公表する中期計画で明らかにするが、海外にいる12万人が同じ方向を向いて、変革を支援できる会社になりたい。海外ではNTTをまだ知らない人も多いので、ブランド力も上げていく」

──鵜浦博夫前社長は海外売上高比率を25%に高めたいと言っていた。

「25%と言わず、もっと上げていかないといけない。ただ、急に25%に上げるというのは今年や来年では大変だ。現在は20%弱。5%というと6000億円程度あるので、急には難しいが上げていく」

──海外事業拡大に向けM&Aは。

「M&Aは方法論と考えており、実施していく。分野的には顧客対応強化、IT(情報技術)サービス、そしてデータセンターなど伝統的な部分。予算枠は作っていないが、ここ10年では米デルのITサービス部門とディメンション・データの買収が大きかった。双方とも30億ドル程度なので、最大そのあたりをイメージしている」

──固定電話網(PSTN)をインターネット技術を使ったIP網に移行させる計画が始まったが、加入者宅につながるアクセス部分の銅線の議論はまだ手付かずだ。

「地方部や山間部などは可能なら無線に変えたい。品質を担保できるのか、方式的にどうかなど、いろいろ検討項目はあるので、もう検討をスタートしたいと思っている」

──電線の地中化ではいずれ使われなくなる可能性のある銅線を埋めなければいけない。

「できれば電線の地中化は光ファイバーにしてしまいたい。ただ、顧客が光電話にしてくれないと、銅線はそのエリアで残るので、すぐにできるわけではない。この問題は需要も込みの議論になるので、時間をかけて議論をしていく。コンパクトシティーがひとつの鍵になるかもしれない。街づくりの中で考えていかないといけない」

──NTT東西の固定電話にはユニバーサルサービス義務が課せられている。

「固定電話は国民生活の向上に役立ってきたと思うが、時代は変わってきている。携帯電話しか持っていない人もいる。どのようなサービスがユニバーサルなのか、それはどう担保していくべきなのかというのは議論してもらわないといけない。私どもだけで決められる話でもちろんないが、どこかのタイミングで(国に)話をしていくべき課題だと思う」

──NTTドコモが光回線を販売するなど、グループ会社間の垣根が低くなっている。いまのグループ体制でいいのか。

「NTTの場合は法律で規定されている部分があるが、どうしても制度は後追いになるということを認識したほうがいい。まずは法律の範囲内でやれることをやり、その結果、ひずみが大きいと言われる状況が増えてくれば、制度そのものを変えてもらいたい。現状ひずみはそれほど大きくない」

──NTTデータ<9613.T>とNTTコミュニケーションズは重なっている領域もあるように見える。

「NTTデータとNTTコムは同じようで全然違うところもある。簡単に言うとマーケティングのスタイルが違っていて、NTTコムは広く浅い、NTTデータは狭く深い。一つにしてもいいが、一つにしなければいけないという必然性もない」

──株主還元をどのようにしていくか。

「基本的な考え方は継続的な増配。NTT株はあまりボラティリティーがないので、株の上げ下げでもうけようとする株主より、安定的にリターンがほしいという株主の方が多いと感じている。継続的に上げていきたい」

*インタビューは2日に行いました。

(志田義寧)