わずか18人で40億円を稼ぎ出す。創業からわずか7年のベンチャーが、その飛躍のエンジンとしている事業は、アフィリエイトだ。いかにして、それだけの急成長を遂げることができたのか。そして、今、彼らはどんな未来を描いているのか。2人の創業者から話を聞いた。

アフィリエイトは“理想の広告”手法だと感じた

――驚異的な勢いで成長を続けている御社ですが、創業時になぜ、アフィリエイトにフォーカスしたのでしょうか?
川合 アフィリエイトは、サイトやブログ、SNSなどのメディアに広告を掲載して、その成果に応じて報酬を獲得するというビジネスです。副業への関心が高まる中、個人メディアに広告を掲載する、いわゆる“アフィリエイター”という職業への関心も高まり、多くの方々がしっかり利益をあげることができる手法として注目を集めています。
リンクエッジを起業する以前に勤めていた広告代理店でも取り扱ってはいましたが、決して主流とは認識されていませんでした。しかし、私は当時から、アフィリエイトに可能性を感じていたというか、広告主にとっては、“理想の広告”なのでは?と考えていました。
――どうしてアフィリエイトを“理想の広告”だと思ったのでしょう?
川合 当時、主流だったのは“月額いくらで広告を運用する”といったスタイルでした。しかし、効果測定がしやすいWEB広告では、すぐに費用対効果がはっきりわかり、効果のない広告はクレーム対象になります。そもそも主権が掲載する側、広告主にあるのですから、それも当然のことです。
ところがアフィリエイトは、成果報酬型の広告手法ですから、広告を出す段階で広告主の経済的負担はありません。そのため、一度契約をいただいたら、よっぽどのことがない限り、ほとんど打ち切られることもないのです。
川合幸治 株式会社リンクエッジ 代表取締役
大学在学時からリサイクルビジネス、フリーペーパーなどの学生ビジネス展開。株式会社サイバード、ngi group株式会社(現ユナイテッド株式会社)勤務を経て、2011年、株式会社リンクエッジを設立する。
安田 しかも、広告主にとっての経済的なハードルが低いため、発注がしやすいという利点もあります。
実は、私と川合は大学時代の同級生で、一緒に学生ビジネスにチャレンジした経緯があります。卒業後、最初はそれぞれ違う会社に勤めたものの、川合が私の勤務していた会社に転職してきました。
なんとなく、お互いに“起業したい”という思いを抱きながら、議論を繰り返す中で、“アフィリエイトを提供するASPが良いのではないか?”という話になり、チャレンジすることになりました。

18人で売上40億を達成できた理由

――しかし、成果報酬型ビジネスをメインに据えてのスタートアップは、なかなか難しかったのではないですか?
安田 そうですね。私は、それなりに経験があって営業には自信がありましたし、広告主の負担が少ないから受注もしやすかったのですが、契約を取り付けて運用を開始しても、成果がでない限り、お金が入ってこないわけですから、2人でリンクエッジを立ち上げたときは、けっこう苦労しました。
安田 敦 株式会社リンクエッジ 専務取締役
学生時代から、代表の川合氏と友人関係にあり、ともに学生ビジネスを手掛けていた。ngi group株式会社(現ユナイテッド株式会社)にてネット広告営業に従事し、新卒2年目でチームマネージャーに就任。2011年、川合氏とともに株式会社リンクエッジを創業する。
川合 しかし、ちょうどガラケーからスマホへと移行する時期にあって、広告手法が混沌としていたため、明確な勝者が存在せず、WEB広告が一瞬、ブルーオーシャンと化しました。
私たちは、勢いのある業界や、今後、発展していくことが予測される業界にアタックし、いち早く入り込んでシェアを獲得。注目業界そのものを押さえてしまうという戦法を取り、それが功を奏しました。
いったんシェアさえ確保してしまえば、あとは自走していきます。純広告などと違ってリピート率が高いので、順調に成長することができました。
さらに、アフィリエイト広告の掲載先、いわゆるメディア側に対しても、いち早く、新しい手法やサービスをキャッチアップして、果敢にアタック。従来のブログやキュレーションサイトだけでなく、SNSやアドネットワーク活用という新たな道を開拓し、アフィリエイターに提供してきました。
安田 そういったSNSへの出稿は、先払いが基本となるため、多くのユーザーにアプローチができて、効果が高いことはわかっていても、元手のない個人のアフィリエイターにとっては、なかなかハードルが高いものとなります。私たちは、他の多くのASPのように月締めではなく、一週間で締めてすぐに報酬をお支払いしています。業界に先駆けて、アフィリエイターがチャレンジしやすい環境を作ってきました。
川合 やはりアフィリエイターは個人事業主ですし、安定収入が約束されているわけでもありませんから、どうしても不安を抱きがちです。彼らにとって有利なお支払い方法の採用もさることながら、交流会やセミナーなどを開催してコミュニティを形成し、しっかりサポートしていくことで、優秀なアフィリエイターの確保が可能となります。
時には、アフィリエイターに同行をお願いしてクライアントと打ち合わせをすることもあります。広告主の意図を正しく理解することで、配信先や広告のクオリティもアップしますし、何よりもアフィリエイターにビジネス意識を持っていただくことが重要かと思っています。
勢いに乗ってスピード成長を果たしてきたかのように映るかもしれませんが、実はこういった地道な積み重ねによって、18人の社員で売上40億円という数字を達成することができたと自負しています。

日本はアフィリエイト先進国

――今後、御社ではどのような展開を考えていますか?
川合 まずは引き続き、アフィリエイターの地位向上に努めたいと思っています。この仕組み自体、なんら問題のない、健全なネットビジネスであるにも関わらず、残念ながら現在、アフィリエイトに対して一部、ネガティブなイメージが世間的にあることは確かです。
――そのネガティブなイメージはどうやって払拭するのでしょう?
川合 先に述べたように、アフィリエイト自体、副業やフリーランサーの増加など、働き方の多様化が進む時代の中で注目を集め、拡大の一途をたどっています。伸びているときほど、問題は生じがちです。
例えば、誇大広告であったり、扱っている商品に問題があったり、あるいはよこしまな気持ちを抱いている人や企業も参入してきます。しかし、私は徐々に、そういった悪質な部分は淘汰され、浄化されていくと思っています。
安田 実際に、今、多くのアフィリエイターがしっかり収入を確保していて、中には年収数千万円の実績をあげている方もいます。ところが日本では、周囲から“そんなことをしていないで、ちゃんと就職しなさい”みたいな目で見られることも事実としてあります。
私たちは、健全なメディアと価値ある商品を増やしていって、決して他人に迷惑をかけない、役立つコンテンツを持っているサイトを優遇し、扱っている商品をきちんと評価できる仕組みを整備しながら、アフィリエイターに対する教育を実施。業界全体の活性化、イメージアップに努めていきたいと思っています。そのためにも、この業界にどんどん優秀な人材や企業が参入してきてほしいのです。
川合 国内では、そういったアフィリエイト事業の地盤を固めながら、海外への事業展開も本格化していきたいと思っています。実はアフィリエイトについては、日本が先進国だったりします。おそらく、ブログやキュレーションサイト、個人発信の情報サイトなどが多く運用されているためでしょう。
アジア諸国では、ITの普及が出遅れたことで、すでにFaceBookやTwitterなど、SNSが存在する時代から急激に利用が広がりました。ですから、個人サイトを作る必要がなかったのでしょう。
アジアを中心とした海外に、日本の手法やアフィリエイターを丸ごと、システムとして輸出して、日本の優れた商品を世界に向けて販売していきたいと考えているクライアントに提案していきたいと思っています。実際に、今年3月、台湾に現地法人を設立し、手ごたえを感じているところです。

“大変な思いができること”も価値

――リンクエッジがさらなる成長を遂げていくためには、どのような人材が必要となるのでしょうか。
安田 当社では現在、実に多様な人材を求めています。定義としては“ネット広告の会社”とくくられるので、いかにも、この業界で経験を重ねてきたIT人材を欲しているように思われがちですが、けっしてそうではありません。
商品をお預かりして、これをどうやって売っていくかを考える。しかも、売り先はワールドワイドですから、どこの国にどうやって売っていくか。商社と同じようなビジネススキームを構築していく必要があります。
うまくいかなかったら、どのように改善していくか?広告主にコンサルテーションできるくらいの姿勢やスキルが求められます。戦略を考え、実行して、フィードバックしてという一連のサイクルを回せる人にジョインしてもらいたいですね。
川合 あるいは、新しい現地法人を立ち上げるとか、これまで蓄積してきたノウハウやリソースを活用して、まったく新しい事業を立ち上げてもらっても良いです。活躍するフィールドや成長を限定するつもりはありません。
自分が手掛けている事業の拡大が、会社の成長に直結しているという実感が持てるのは間違いありません。脅すつもりはありませんが、売上の割に人数が少ないので、一人ひとりの責任は大きい。“大変な思いができる”ことも価値と考えられる人に来てもらいたいですね。
(インタビュー・文:伊藤秋廣[エーアイプロダクション]、写真:岡部敏明)